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日米の育児環境

今日のおすすめの一冊は、『天才たちの未来予測図』(マガジンハウス新書)です。その中から内田舞氏の「ラジカル・アクセプタンス」という題でブログを書きました。

本書の中に「日米の育児環境」についての興味深い文章がありました。

意外かもしれませんが、「育児環境」は、制度としては実はアメリカより日本のほうが進んでいるところもあります。

たとえば、アメリカには育休制度がありません。産休も育休も国が定めていないので、各職場によって、どれだけ休めるのかが決まります。なので、なかにはまったく育休が取れない職場もあります。 

私が勤めているマサチューセッツ総合病院では、育休として3カ月休みを取ることができます。ただ、日本でいう産休も含めて3カ月なので、なるべく産後に休みが欲 しいという人は、出産直前ぎりぎりまで働きます。

私も3人目の出産のときは、入院する2時間前まで働いていました。 日本では子どもが1歳になるまで育休を取れるので、3カ月以下で大丈夫なのかと思うかもしれませんが、実際にはかなりきついです。

特に私は初産のときに難産だったこともあり、身体もまだ回復し切っておらず、夜中も3時間おきにミルクをあげなくてはいけないという状態で仕事に行くのは、身体的にかなりしんどく、アメリカでも日本のようにもっと長期で育休が必要だと実感しました。 

ただ、早くに職場復帰したことで、精神的にはかなり救われました。生まれたばかりの子どもの世話は、ミルクをあげ、おむつを替え、寝かしつけ、寝たと思ったら45分後にまた起きて、ミルクをあげて・・・というように単純作業を次から次へとやらなくてはいけません。 

もちろん子供はかわいいのですが、その間、自分の時間は一切なくなり、急激に疲弊していってしまいます。 そういった状況で、私の場合は3ヶ月の時点で子どもを保育園に預けて仕事に行くことで、「トイレに好きなときに行ける」ことに感動しました。

また、職場の人と会話をしたり、また患者さんの診療や研究をしたりする中で、育休期間にはできなかった大人との交流や育児以外に社会への貢献ができて、救われるような気持ちがしたのです。 

先ほど述べたように、3カ月で職場に戻るのは体力的にはものすごく辛いのですが、少なくとも私にとって、精神的にはプラスだったので、単に休みの期間が長ければ長いほどいいということではないと思います。 

このように、制度としては日本のほうが整っていますが、アメリカでは「子育ては夫婦2人でするもの」という感覚が根づいている分、男女ともに共働きでも子育てしやすい環境になっていると感じます。 

たとえば、アメリカでは、出産前教室には基本的にカップルで行きます。一緒に教室で学んで、出産フロアも見学します。

また、アメリカには「付き添い」や「立ち会い」という言葉がなく、当たり前のように、パートナーも分娩室に入って、陣痛に耐える女性のサポートをしたり、出産中の妊婦さんが必要なことを医療スタッフに伝える役目を果たしたりと手助けをします。 出産の瞬間を見守り、出産直後はパートナーも病院に宿泊して、一緒に過ごします。

またこんな「キャリア」の話があった。

また、キャリアの面においても、アメリカと日本で考え方が違うように思います。マサチューセッツ総合病院が小児うつ病センターを設立する際に、私はセンター長になってほしいと打診を受けました。

そのとき、私は妊娠5ヶ月目くらいで、「すごくありがたいお話だけれども、実は今妊娠をしていて、あと4ヶ月くらいで、育休に入ります」と上司に伝えました。

そのときに話をした上司2人は、二人とも70代の男性でしたが、「もうすぐ育休に入るのなら、早く進めましょう。センター長になってから育休に入ってもらって、戻ってきたら、そこからまた始めればいい」と言ってくれたのです。

もしこれが日本だったら、昇進の打診を受けたときに、すぐ育休に入ることを伝えたら、「育休明けに改めて進めましょう」という話になったかもしれません。昇進の話自体がなくなった可能性もあると思います。

今まで女性でも男性でも育児をしながらキャリアを形成してきた人がリーダーシップを発揮するポジションについているからこそ、私の昇進のような例が自然と出てくるのだと思います。

世界経済フォーラムの男女格差指数で、日本は153ヵ国中121位。先進国では最下位だ。大企業の役員も、国会議員の大臣もほとんどが男性ばかり。

小児科医であり、3児の母である内田舞氏は、「日本も今後、女性がキャリア設計をしやすいのはどういう社会なのかを考えていかなくてはいけないでしょう。ただ、その鍵を握るのは逆に男性が育児をしやすいのはどういう社会なのかを考えていくことなのかもしれません」という。

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