新年度の目標設定に欠かせない3つの視点 - 財務/ビジネス/組織
第一線で活躍するリーダーがまずやる2つの事
マネジメントやリーダシップ研究の領域に、ジョン・P・コッターという世界的な権威(ハーバードビジネススクールの名誉教授)がいます。
コッター氏は、世界の第一線で活躍するGM(事業責任者)が成功する秘訣を研究した結果を "The General Managers (1982)" という書籍に纏めていますが、その中で以下のような一節があります。
"During the initial period in the job they focused simultaneously on developing agendas for their businesses and on developing the networks of resources needed to accomplish those agendas. When the agendas and networks were largely in place, they then devoted much of their attention to making sure that the networks actually did implement their agendas."
Kotter, John P.. General Managers (p.60). Free Press. Kindle 版.
ざっくり言うと、何か新たな仕事や役割を始める際、第一線で活躍するGMの多くは、①在任期間のアジェンダ設定と②それを達成するために必要な人的ネットワークの構築に力を注ぐそうです。
アジェンダ設定は目標設計に置き換えて頂いて問題ないと思います。
新年を迎え、今年一年間を通じて達成すべき目標を立て始める方も多いと思いますので、今回はコッター氏の研究を引用しながら、新年のアジェンダ設定の方法に関して少し書きたいと思います。
目標設定の基本は「3×3」
目標設定には色々な切り口、表現方法があります。
最も一般的なのは、予算に代表される①財務数値でしょう。
会社によって粒度は異なりますが、売上・費用・利益等の指標を業績目標として設定される会社は多いと思います。
しかし、財務数値さえ達成されればあとはどうなってもいいのかというと、決してそういう訳ではありません。
その他に、②ビジネスと③組織という重要な視点があります。
②ビジネスというのは、売上や利益を生み出すビジネスモデルやバリューチェーンを指します。
責任範囲によって具体的な内容は異なりますが、自社の製品・サービスをどのように進化させるのか?という問いかもしれませんし、それを顧客に届けるまでの在庫管理やロジスティクスをどのように改善するか?という問いかもしれません。
つまり、自身の役割から見て事業をどのように進化させるのか?という視点で目標を立てていきます。
そして③組織というのは、目標とする売上や利益、そして理想的なビジネスモデルを実現するために組織をどのように進化させるのか?という問いになります。
狭義の意味では社内の組織図の見直しや階層別・スキル別の人材ポートフォリオの設計となりますが、広義の意味ではミッション、ビジョン、バリューのような根本的な価値観や行動指針の見直しも含みます。
纏めると、どのような①財務目標を掲げ、それを実現するためにどのような②ビジネスや③組織を創り上げたいのかを具体化し、更にそれらに「A. 短期(1年:今年)・B. 中期(2~3年:在任中間地点)・C. 長期(4~5年:在任終了時点 or その先)」の時間軸を入れることで、いつまでにどの程度の状態を実現したいのかを明確にしていきます。
この「3×3=財務/ビジネス/組織 × 短期/中期/長期」が、世界で活躍する事業責任者レベル(GM以上)から学ぶ目標設定時の要諦になります。(以下イメージ)
フレームワークの力
「もう似たようなことやってるよ」という方も多いと思います。
その上でもし何かおススメ出来る事があるとすると、それはこの3×3の枠組みを使って目標を表現することです。
目標は対話を通じて組織に浸透しなければ効力を発揮しません。
そういった意味で、よく聞くと3つの項目が含まれているという状態の目標と、予め3×3の枠組みで整理されている目標では、聴き手の理解度が違ってきます。
私自身、既にこの枠組みを使って年始の会議で今年の目標をメンバーに伝えていますが、かなり有効だったと感じています。
もちろん3×3の枠組みは一例でしかありませんので、これに固執する必要は全くなく、皆さんの会社でも一定のフォーマットが既にあるというケースも多いと思います。
そんな中で、もし白紙の状態から新年の目標を設定する機会がありましたら、是非3×3を試しに使ってみて下さい。