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鹿もしれない詩かも

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詩のようなものかも、令和2年7月23日。
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2020年8月の記事一覧

敗北

敗北

庭の草木に西陽が
晩夏!
眼鏡なしでは色彩が
にじみ
向日葵と百日紅が
鮮やかさを競って
緑に映える

夕暮れ
青空は力を削がれ
終わりを待つ、風は
涼しさをはこび、黄昏が
じんわりと飲み込んでゆく
夕焼けは、うっすらと
無垢なのだ、無垢なのだと
だが、熱狂が

翳りゆく、美しい夏に
耐えきれず
この熱量に負けてしまった
朦朧として
朦朧として

再生不能

再生不能

弓を折ってしまった
バイオリンの弓
弓先の近くで
棹は折れ、断端は
ざくざくとして割り箸を
折ったように、弓毛は
だらんとして折れたヘッドを
付けたまま

弓のいちばん壊しやすいところです
先生がレッスン初日に
教えてくれた

どうして折れたのだろう
振り回したの? 物を叩いたの?
折れた弓の毛箱を
自分の手が握っている
だから、折れたのは今だ
いや、自分が折ったのだ
この手が握っている
だから今

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アサギマダラ

アサギマダラ

死者たちが帰って来たのがわかった
外へでると風はわずかに冷気をふくみ
向かいの山で鴉が鳴き交わす声
迎え火も焚かなかったのに
空は青みを帯びた灰色の雲
雨が降り出だすかもしれない

死者たちの好みはしらない
吐息のようなかすかな音に
勝手にレトルトのカレーを温めてだす
静かに皿の食べ物が減っていき
腹が満ちたところで
山へアサギマダラを見に行くことにした
麓はそれなりに天気だったが
ロープウェイ入

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期待

期待

ある日夕暮れはコバルト色だった
ピンクの雲が紗のように映え
夜になったら良いことが起こりそうな気がした
だが美しい絹雲は
日没を待たずに闇に沈み
新しい予兆は隠された
朗報を待ちきれずに
始まった祝宴に
ぶどう酒は底をつき
札を握らせて追加の酒を買いに行かせた
男が帰って来たのは
日付が変わろうとする頃
宴会はとうに終わり
灯りも消されて
集まっていた顔は消えていた
男はひとり
テーブルの上や床を

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秋津

秋津

風呂桶の水栓がずれていて
15分たっても水がたまらない
世界で 手に取った
ペットボトルはいつも麦茶で
本当はほうじ茶を飲みたかったし
おにぎりだって鮭が良かった
欲望は少しずつ裏切られ
手に入るのは
6割がせいぜいのBio-availability

梅雨明けの後のながあめの日々
原っぱで親子が三人捕虫網を振り回して
捕まえられた蜻蛉の記憶は
蓄えられていつか
ヒトを攻撃するだろう
そのとき類と

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死んだ目生きた目

死んだ目生きた目

ベートーヴェンの最後のピアノソナタを聴くために山を越える
山に登るほどにガスの中へ入っていきつつあったところから

「暗証番号を入れてください」
 0120505717
ディスクが回り出す音がして
しばらくすると
重たい画面が現れる
時間差で音が流れて
よく知ったコンビニエンスストアの喧騒を
俯瞰している複数の目

駐車場にやってきては店に入り
店に入っては商品を手にとって
かごへ入れる人も入れな

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夢幻

夢幻

理髪店で目を瞑ると
すぐに夢がはじまる
脳波はきっとさざ波だろう
テレビのチャンネルに
夢と現実があって
ふたつを交互に切り替えるように
瞼の裏がスクリーン

猿が降る
枝という枝には猿が座り
猿が降る
嵐のように横殴りに
小さな猿がふきつける