シェア
hirom_文麿
2020年8月20日 19:25
庭の草木に西陽が晩夏!眼鏡なしでは色彩がにじみ向日葵と百日紅が鮮やかさを競って緑に映える夕暮れ青空は力を削がれ終わりを待つ、風は涼しさをはこび、黄昏がじんわりと飲み込んでゆく夕焼けは、うっすらと無垢なのだ、無垢なのだとだが、熱狂が翳りゆく、美しい夏に耐えきれずこの熱量に負けてしまった朦朧として朦朧として
2020年8月20日 05:08
弓を折ってしまったバイオリンの弓弓先の近くで棹は折れ、断端はざくざくとして割り箸を折ったように、弓毛はだらんとして折れたヘッドを付けたまま弓のいちばん壊しやすいところです先生がレッスン初日に教えてくれたどうして折れたのだろう振り回したの? 物を叩いたの?折れた弓の毛箱を自分の手が握っているだから、折れたのは今だいや、自分が折ったのだこの手が握っているだから今
2020年8月17日 03:22
死者たちが帰って来たのがわかった外へでると風はわずかに冷気をふくみ向かいの山で鴉が鳴き交わす声迎え火も焚かなかったのに空は青みを帯びた灰色の雲雨が降り出だすかもしれない死者たちの好みはしらない吐息のようなかすかな音に勝手にレトルトのカレーを温めてだす静かに皿の食べ物が減っていき腹が満ちたところで山へアサギマダラを見に行くことにした麓はそれなりに天気だったがロープウェイ入
2020年8月11日 21:35
ある日夕暮れはコバルト色だったピンクの雲が紗のように映え夜になったら良いことが起こりそうな気がしただが美しい絹雲は日没を待たずに闇に沈み新しい予兆は隠された朗報を待ちきれずに始まった祝宴にぶどう酒は底をつき札を握らせて追加の酒を買いに行かせた男が帰って来たのは日付が変わろうとする頃宴会はとうに終わり灯りも消されて集まっていた顔は消えていた男はひとりテーブルの上や床を
2020年8月9日 19:08
風呂桶の水栓がずれていて15分たっても水がたまらない世界で 手に取ったペットボトルはいつも麦茶で本当はほうじ茶を飲みたかったしおにぎりだって鮭が良かった欲望は少しずつ裏切られ手に入るのは6割がせいぜいのBio-availability梅雨明けの後のながあめの日々原っぱで親子が三人捕虫網を振り回して捕まえられた蜻蛉の記憶は蓄えられていつかヒトを攻撃するだろうそのとき類と
2020年8月6日 15:47
ベートーヴェンの最後のピアノソナタを聴くために山を越える山に登るほどにガスの中へ入っていきつつあったところから「暗証番号を入れてください」 0120505717ディスクが回り出す音がしてしばらくすると重たい画面が現れる時間差で音が流れてよく知ったコンビニエンスストアの喧騒を俯瞰している複数の目駐車場にやってきては店に入り店に入っては商品を手にとってかごへ入れる人も入れな
2020年8月3日 06:28
理髪店で目を瞑るとすぐに夢がはじまる脳波はきっとさざ波だろうテレビのチャンネルに夢と現実があってふたつを交互に切り替えるように瞼の裏がスクリーン猿が降る枝という枝には猿が座り猿が降る嵐のように横殴りに小さな猿がふきつける