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鹿もしれない詩かも

24
詩のようなものかも、令和2年7月23日。
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2020年7月の記事一覧

発汗

発汗

頼まれる仕事をこなすごとに
首の回りに
汗が吹き出て
そのうちにそれが冷たい 肩
になり下着が纏わって
エクリン腺は交感神経
支配されてて何故いま
緊張しているの?
戦っている
訳ではない のに
戦っている と わが
脳の設定は
猛烈なねむけに
じつは
疲れている
だけなのだろう
木枯し紋次郎
だってお風呂に入る
ように

山越え

山越え

7月26日日曜日
ベートーヴェンの
最後のピアノソナタを聴きに行く
山を越えようとして
ガスに巻かれた
向かいから
突然車が現れて
クラクションを思わず
ハンドル
スピードを落とせ
後ろから追突
されたくない
左の路肩を見ながらスピードを
ようやく
前を走る車が
ほんのり赤い
テールライトだ

月光の
ベートーヴェンの
さざ波のトレモロ
スタッカートが繰り返し
呼吸の
リズムを支配して
リフレイン

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地底へ

地底へ

氷山の一角だった
地上には楊子のような枝が二本伸びた
名も知らぬ木を
ドクダミとともに抜いてしまえ
でも、地下には
バオバブの
ようにあるいは
大根の
ように図太い根
僕たちは
シャベルをスコップに
ピストルを大砲に
絹糸を麻縄に
持ち替えた
けれど
まさか地中でノコギリを引くとは
思わなかった
根は深く蛸足のように伸びて
僕たちは
暗闇をどこまで辿れば終わるのか
蟻のように小さくなって潜っていっ

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倍音

倍音

金属たちにバイオリンを聴かせる
出来るだけきれいな音で
できたことしか覚えないから
できるまで丁寧に聴かせてあげる
すると
あるとき金属はじぶんの端っこをすこし
震わせ 同じ音色で共鳴する
倍音
豊かになって
帰ってくる
音が
部屋に響いて
金属たちも美しくかがやく
倍音をさがす

カフェイン中毒

カフェイン中毒

かりかりかりと
珈琲を挽けばただよう香り
誘われて現れる
人々はみな蒼ざめて
死んでいる けれど
どの人とも一度は関係したのだから
 どうぞ いっしょにもう一度
娑婆の話をきかせてよ
血圧がさがっていく 最期 見えた景色
色彩のブルースが流れ
モノクロームの記憶は
そう そうだったね
つくられる過去
しあわせな
珈琲の香りがなぐさめて
またね まっているから

壊れたものは

壊れたものは

来週はお別れとなる準備をして
一緒に過ごした時間のすべてを
長大な文章にした
数えれば十四時間半となる春のあいだに
救われただろうか
里山の川のそばから
生まれた海へかえろう
僕の手の軍手は血に染まっているけれど
その手は白く まだ重いものさえ
持ったことがない
大空と月と星と太陽と
大いなる祝福をうけるのだから
一緒に祝う人はいない けれど 潮風
どこからか香る町へもどってもういちど
祝福をうけ

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七月の青空

七月の青空

去年のこぼれ種から
花壇に生えたヒマワリが二本
今年の夏を占っていた
うどん粉病に侵されたサルスベリはもう
リタイヤする他はなかった 枝は
伐られて捨てられた
二番咲のバラは豊富な寒肥のおかげで
つやつやとした二度目のシュートを伸ばし
隣のザクロを羨ましがらせた
シロツメクサはエノコロクサの下で
太い茎を地面に這わせ
今年の長い梅雨が
明けるのを待っていた
高く、白い積乱雲が青空の
蝉の声に震えた

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