#4 ツールで子育て対話~親のためのシステム思考~
新たに生じる「〇〇すべき」が生む息苦しさ
子育てや夫婦間のちょっとした悩みやモヤモヤ。誰かに話したくても、自分の時間的余裕がなかったり、素の自分をさらけ出す精神的余裕がなかったり。あるいは、みんなが忙しそうなので気がひけてしまったり。
子育て指南の情報は巷にあふれています。でも、不特定多数のために作られた情報に囲まれることによって、本来自分には不要なはずの「〇〇すべき」が、自分の中に新たに生まれてしまうことも。子育てや家族の悩みには、本来正解がないもの。でも新たに生じた「〇〇すべき」がさらなる息苦しさを生んでしまうこともあります。
「コーチ」だけどアドバイスするのではない
さて、「ツールで子育て対話~親のためのシステム思考」(システム思考実践家の江口潤さんと立ち上げたオンライン対話の場)の4回目を先日、開催しました(ご参加くださった皆様ありがとうございました!)。
今回は、「ケースクリニック」を実践。ケースクリニックは、参加者の一人が今直面している課題や悩みをその場で共有し、ほかの参加者がコーチ役となって対話するワークです。今回は、Center for Systems Awarenessのワークショップ「Foundations II for Systems Change」内で実施された短縮版(計50分間)を参考に実践しました。参照:https://www.u-school.org/case-clinic
ワークをざっくりと説明すると、まずは参加者全員が、各自今抱えている具体的な悩みや課題(ケースと呼ぶ)を短くシェアします。誰のケースを取り上げるかをみんなで相談し、一人が「ケース提供者」に。それ以外の人は「コーチ役」となり、うち1人がタイムキーパーという役割を担います(タイムキーパーは、定められた進行表に沿って時間を測ります)。
ケース提供者の悩みを詳しく聞いた後、コーチを担うみんなは「沈黙」する時間を取ります。そして、コーチ全員が、悩みを聞いている間や、沈黙していた間に浮かんだイメージ、メタファー、考え、感情、ジェスチャーなどをみんなに共有します(ミラーリング)。それを受けて、ケース提供者は、改めて感じたことを話します。その後、みんなで自由に対話します。
ポイントは、「コーチ役」と言っても何かアドバイスや解決策を提供することを推奨されてはいない点。文章では伝わりにくいのですが、聞き手の中で起きたことを共有することで、まるで何かに反射して映し出されるようにケース提供者が自分の課題を違う角度から見ることができる効果があります。
人の悩みについて話しているつもりが自分の気づきに
さらにケースクリニックが興味深いのは、自分の悩みを取り上げられなかったコーチ役の人も、自分の悩みに関して気づきが起きる点です。私自身も、ほかの方の悩みについて話しながら、自分の課題につながる気づきがいくつもありました。つまり、このプロセスを経るうちに、ケースを提供していない人も、自分自身が見える瞬間が生まれるのかもしれません。 この会のグラウンドルールの一つ「聴き手にこそ学びあり」をまさに体感できる時間となりました。
いろいろな人と話すことで、いろいろな鏡に自分の姿が映る。外からの「〇〇すべき」とは異なる道筋が見えてくる。特定の誰かのアドバイスに頼るのではなく、自分で気づき、自分の望みを読み取っていくこと。それが叶う場でした。
「ツールで子育て対話~親のためのシステム思考」イベントの次回案内ページはこちらです。
システム思考実践研究家の江口潤さんのnote