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初級編って言ってもね。

「どーみそしーどれど…」ピアノを習ったことのある方ならお馴染みの可愛らしいモーツァルトのソナタ第16番(KV545)。ピアノを弾いたことのない方でもどこかで聴いたことのあるこのメロディ。

ソナチネから初めてソナタにチャレンジするのに丁度良いボリュームのソナタです。

子どもの頃この曲を弾いていた時は、16分音符の多さに目をグルグルさせながら必死で音を取り、粒の揃った綺麗な音で弾くためのリズム練習などなど、初級と言えどもなかなかハードなモーツァルトの洗礼を受けたものです。

大人になって、ゆっくりこの曲を読み直して見た時、やっぱりモーツァルトって天才なんだなぁと改めて思う要素がありました。その要素の一つは「転調」です。

実はこの曲、たった4ページの1楽章の中でハ長調(主調)→ト長調→ト短調→ニ短調→イ短調→ヘ長調→ハ長調といった感じで、主調のハ長調から元のハ長調に戻るまでに5つの調に転調してしまうのです。

とりわけ29小節目のト短調からヘ長調に至るまでのたった12小節の間の怒涛の転調は、短調が苦手だった幼い頃の私をたいそう苦しめてくれました(笑)。

旋律的短音階なんかも取り入れながら、美しくさりげなく気が付かないうちに転調を繰り出す様子がまさに天才。♯や♭が増えては減って…翻弄されている間にホッとするようなテーマが戻ってきます。…あれっ⁉︎でも
「ふぁーらどみーふぁそふぁ…」ヘ長調やん‼︎

冗談が大好きなモーツァルトの性格が垣間見えますね。
もうハ長調には戻れないんじゃないかと心配になった頃にちゃんと戻って来て安心させてくれます。

初級編と言っても侮るなかれ。
モーツァルトからおチビさんへの名刺代わりの1曲です。


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