意思決定 「決める」までに何を思う?
「武士に二言はない」
かつて、一度決めたら最後までやり遂げることを「良し」とした倫理が根っこにあって、それが、後に間違っていようがなかろうが、「決めた限り最後まで」、そんな価値観が日本人の深いところにあるような気がします。
決めるまでになぜ時間がかかる?
ビジネスは日々、仕事プロセスは、意思決定の連続であると行っても良いでしょう。日本のビジネス文化として、一つのことを決定するまでの時間がかかりすぎるとよく言われます。
その原因は、いくつかありそれぞれが相互作用してるのですが、その一つとして、上記のような、「一回決めたら、最後までやんなきゃじゃない?」と基本的にみんなが思っている価値観であることだと思います。
そうすると、決めるまで「ちゃんと考えたの?」「どれぐらいの時間をかけて考えたの?」と、決定まで十分時間をかけたか? がその意思決定に対する「重み」の指標になったりしています。
また、その「重み」ある決定の裏には「その決定、間違っちゃダメ」という暗黙のプレッシャーを感じてしまうものです。無意識のうちに。
時間をかければ、「正しい決定」か?
それでは、時間をかけてよく考えた決定は、常に「正しい決定」かというと、必ずしもそうではないと思います。
特に、現代のように大量の情報が流通し、超高速にビジネスが進み競争が加速している環境では、意思決定までの時間をかける間にも様々な「変化」が起こっていると思います。
つまり、目指すべきところが明確にあれば、じっくり考えた方がより精度の高い決定ができますが、現在は、時間をかければかけるほど、状況は変化し、情報は更新され、また、考え直しを余儀なくされていくのです。
結果、いつまで経っても決定できない。もしくは、「今更そんなこと?」というアプトプットが出てしまう始末です。
変更の受容力
それでは、とりあえずパッと決めれば良いのか? ということになりますが、究極は、パッ、パッと決めていき、それが全て「正しい」方向に向かって行っていれば良いですが、大抵は途中で「変更」していかなければならないことがほとんどです。あらゆるもの・ことが常に「変化」しているからです。
日本では、この「変更」の受け入れが、どうも苦手のような気がします。
まあ、みなさん経験あると思います。
・部下「上司の言っていることがコロッコロかわるんですよねーーー!!!!!💢」
とか
・上司「これって、前に言ってたことと違うよね!!!💢」
と、上司も部下も日常仕事をしながら、どれぐらいの「言ってること」が変わることにイライラくるか? また、信頼感を損なう感じがするか? の感じ方が、日本文化では圧倒的に高いと思います。
だから、
できるだけ決めたことは「変えないようにしよう」
↓
間違えられないから、なかなか決められない(時間がかかる)
↓
時間をかければ「正しい決定」ができるビジネス環境ではない。
↓
結局、決めたけど「変更」は避けられない
↓
決めるまで時間がかかったにもかかわらず、決まったことにも変更が必要!
これって、今回のコロナでの10万円給付金までの一件のプロセスが良い例じゃないでしょうか?
海外のビジネスシーンは、「変更」が日常的
日本と比較して、国ごとにその強弱はありますが、海外のビジネスシーンでは、マネージャーは、権限の範囲内で割とサクサク決めていきます。しかし、それと同時に、どんどん「変更」もします。
また、部下も「こうした方がもっとよくなるから」と自分の権限の範囲内であれば、どんどん「変更」します。
決定と変更は、同居していると言えるでしょう。
だから、マネージャーも部下に対して、結果が伴っているのであれば、途中で決めたことが勝手に変わっていても「Well done! (うまくやったね!)」となるわけで、部下も上司に対して、「Because boss said that! (ボスが言うからそうなのよ)」とまるっと受け入れます。この受容量が、日本より大きいように思います。国により大小はありますよ。例えばドイツ人とアメリカ人でもかなりの違和感があるようですので。
日本の「決定」大:「変更」小 の美学?
日本のビジネス文化は、「変更」に対する受容耐性が極端に低いといえるでしょう。だから、良いとか悪いとかではないのですが、現代のグローバル時代の超競争社会では、「やりにくいんじゃないか?」と個人的には思っています。良いところもたくさんあるんですけどね。
「武士に二言はない」に美学はあるのだろうけど、そう言う時代じゃないんじゃないかい? 少なくても今のグローバルビジネス文化では。
なので、少し残念なのですが、日本でこれから働く外国人に対しては、
・何かやってることを変える場合は、上司に一言いうべし
・一つ一つ決まっていくペースが遅いよ
・一度言ったことをコロコロ変えると、部下はすぐイライラするよ。
とやりにくい方に対応する様にアドバイスしています。
「は? なんで?」と不思議がられますが。。
今、もしあなたが報道等で阿部政権のコロナ関係の政策決定のスピードにイライラを感じているのであれば、それは、他国と比較できている証拠であり、柔軟な意思決定への受容力がついてきている証拠ではないでしょうか。
となれば、今の日本のビジネスシーンにおける意思決定プロセスは、何かしら改善する余地があるのかもしれませんね。