紀伊路最大の難所に残る伝説①
和歌山県広川町に残る不思議な「骸骨伝説」について。
広川町にも熊野古道が通っています。
その紀伊路最大の難所といわれる鹿ヶ瀬峠にまつわる伝説です。
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今からおよそ850年前、壱叡(いえい)というお坊さんが熊野へお参りに行った時、鹿ヶ瀬峠の山小屋に泊まりました。
よなよな、お経を読む声を聞いた壱叡は不思議に思って翌朝声の主を探しましたが見つかりませんでした。
壱叡は確かに声のしたと思われる方角の藪の中をのぞいてみました。
すると、五体のつながった骸骨が見つかり、その舌は真っ赤なままでした。
壱叡は事情を知りたいと思い、もう一晩同じ場所で過ごし、お経の声の主が骸骨であることを確認しました。
夜明け前、壱叡は骸骨に手をつきひれ伏し事情を伺いました。
その骸骨は、円善という比叡山の僧でした。
円善は「100年前にこの場所で命を落としてしまった。六万部といわれるお経を全部最後まで読むと誓っていたのに、半分もいかないうちに死んでしまい、残念でたまらず、死んでからもここにとどまってお経を読み続けている。それももう終わりに近い。」と壱叡に伝えました。
次の年壱叡が同じ場所に行くと、骸骨はどこにもなかったそうです。
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円善上人をおまつりした小さな社は「法華塚」と呼ばれています。
ここにくると家出人や行方不明者が見つかるという言い伝えがあります。
参考文献:『有田地方と広川町のむかし』外江素雄
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