夏めきて
エコルセの秘密をもっと知りたくて赤い銀紙もひらいてみる
壁一面のあいだみつをにまもられてシャンプーされるヘアサロンのわれ
夏めきて抹茶ソフトに頬寄せる美女を過ぎゆく自転車のわれ
佐佐木幸綱の猫幸せの歌読めば トイレのドアの下から猫の手
モニターの暗きに反射る我が影のか細き首にみる父の陰
酒宴明け深酒ぬけるまでの吾に世界は否を顕わにせめくる
焼かれたる蛤のごと眼鏡入れのはみ出で垂れる赤きクロース
兼題に悩みて帰路の地下鉄にうたた寝美女の動くくちびる
唐傘の柄を上にし立てかける時代劇に見し蝕みの兆し
川沿いをゆけば水張田鳧は鳴き草花かすみて川原華やぐ
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