古本屋で買った本。久々のアタリ買い📔👍🏼👍🏼👍🏼。 倉嶋 厚・原田 稔 編著(2014)『雨のことば辞典』講談社学術文庫 世界でも多雨地帯であるモンスーンアジアの東端に位置する日本。その年間降水量は平均1,718 mmで、これは世界平均の880 mmのほぼ二倍にあたる。そして年間1.3億本の傘が消費されている。そんな雨大国、日本ならではの一冊。 収録されている1900語を超える「雨」に関する言葉の数々は、その数の多さと多様性に驚かされると同時に、我が国の自然の豊かさと恵
(笹 公人さんの講演を聴きて) わすれてた念力持ち出し街にゐでまづは信号を青にしてみる
おれはむかし長生きできぬと言はれたと凄む父いま米寿となりぬ
夏めきて エコルセの秘密をもっと知りたくて赤い銀紙もひらいてみる 壁一面のあいだみつをにまもられてシャンプーされるヘアサロンのわれ 夏めきて抹茶ソフトに頬寄せる美女を過ぎゆく自転車のわれ 佐佐木幸綱の猫幸せの歌読めば トイレのドアの下から猫の手 モニターの暗きに反射る我が影のか細き首にみる父の陰 酒宴明け深酒ぬけるまでの吾に世界は否を顕わにせめくる 焼かれたる蛤のごと眼鏡入れのはみ出で垂れる赤きクロース 兼題に悩みて帰路の地下鉄にうたた寝美女の動くくちびる 唐傘の柄を上に
(明和・安永のころ、尾州名古屋の俳人、加藤曉臺の若き弟子に椎下園事紅という人あり。この事紅、実は、尾州家九代、権大納言宗睦の次男、左近衛権中将治興であったともいふ。 先日、徳川美術館にて治興の差料、黒蠟色塗鞘大小拵の展示を観て、曉臺の句、「わきさしの柄うたれ行粟穂哉」を思い浮かぶ。) 曉臺の姿うつししや治興の黒蠟色の脇さしの鞘
(イタリア・シチリア島の陶器の町、カルタジローネ(Caltagirone)で作られた太陽をモチーフにしたマヨリカプレート(Maiolica)。カルタジローネ・マヨリカの色は鮮やかな黄色、青、緑です。) 我が居間に昇りて笑まふシチリアの太陽放つ彼の地の五感
春 娘の大学入学 ひと日ごと野花増えゆく春の日の今日言祝ぎぬ吾娘の入学 ハイヒール初めて履きし吾娘のゆく歩調にあはせて向かふ会場 世界との協調大事と日本の新学期九月変更論 しかすがに春の日たるべし入学は門出を祝ふその花盛り 三千と七百七十三人の楽観はみな無垢にして眩し 火曜午後のGAP店員声掛けの鼻腔共鳴響く館内 肚決めて暖かくなれよ三月尽 桜の花の散り果てぬ前に 入学おめでたう、おめでたひけど気にかかる秋の学費に高鳴る心拍 枯れすすきの根から青葉は伸び始め
(妻、交通違反切符をきらる) 青切符の職業欄に「オペラ歌手」 権力味方に鼻高高に 台車曳く音か機械の作動かと 地を唸らせて春の雷
(二〇二四年三月一日 鳥山 明さん急死) 世界中Akira Toriyamaの死を悼みわれ書き添えぬ名古屋の人だと 白木蓮見上げる先に花あまた咲けどその香のわれに届かず
蹌踉の寒さ逃れて入りしカフェの窓に聳えしテレビ塔凍つ 梅めづる狸もありて帰宅道その徳利も風に揺れしや
先日、夏井いつきさんの「NHK『いつきのよみ旅!』in愛知」を視ていた。いつものように視聴者が一句を携え出演するのだが、その一人に「狂俳」をさられてみえる方がみえた。紅紫あやめさんとおっしゃるかただった。「狂俳」という言葉は確かに耳慣れない言葉だが、以前、目にしたことがあった。 2022年の5月、愛知県小牧市の河内屋新田を訪ねたときのことだ。この河内屋新田は、実は我が船橋家の発祥の地なのである。立派な、「船橋家祖先之碑」の石碑(上と下の写真)も建っている。そしてその脇に、ま
(雨水の日に詠む) 春霖よ降らむ 世界のこぼれゆく季節を固め潤い起こせ ブラインドを開けるか閉めるか争いて社内政治の外の春雨
暗い燃料タンクのなかに虹を生み虹をころしてゆれるガソリン/穂村弘《シンジケート》、目をみちゃだめ より この短歌は穂村弘さんの作品のなかでわたしが最も好きなもののひとつである。唐代の詩人、王維の漢詩、「辛夷塢」を思いおこさせからでもある。 辛夷塢/王維 木末芙蓉花 木末芙蓉の花 山中發紅萼 山中紅萼を發す 澗戸寂無人 澗戸寂として人無く 紛紛開且落 紛紛として開き且つ落つ 人里から遠く離れた山の奥深く 辛夷の木が生うている、 梢には辛夷の花が おおきな紅色の花
いつもの駅で降りずにこのまま行かうかと想ふに留めぬ今日西行忌
きみの死を聞かされし朝の会議室集まりし我しばし黙せり 自らの命を絶ちぬ仕事場で君その日の勤務の終わりに 四日もの間家には帰らざりし君彷徨ひし夜の暗闇 社報見て初めて知りし君の名は「倫」 歳三十 退職の日 人の縁薄き人なむと聞きて知る 最期を過ごせし仕事の倫 君の未来たりへた時間を生くるわれ君のゐない机を見てをり せめてもの願ひは君の体失の往生あらむ 無量の光 終の場所を職場に選びし君のため短歌を詠はむ君を偲びて きつとかう動いて行くのだらう僕のゐなくな