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【短編小説】バスに乗ったら30年後の未来に行ったお話~第1話~
【第1話~彼氏と花火を見に行ってきます~】
こんにちは~♪
ヒロのしんです。
それでは、【バスに乗ったら30年後の未来に行ったお話】
本編第1話スタートです。
【プロローグ~30年前の貴女へ~】はこちら👇️
『うん、わかった。それじゃ、15時にいつもの駅で。』
『ばいばい。』
彼氏である新との電話を切り、わたしはリビングへ戻った。
「響~!彼氏できたんなら、一度家につれておいでよ。」
母の声に飛び上がる。
『なっ、なんで?』
「そんだけ毎日電話してたら、お母さんでもわかるわよ。」
「しかも、いつもと違って声がうわずっているし。」
と、ニヤニヤしながら話しかけてきた。
『そっ、そっ、そんなことないもん。』
わたしの動揺などお構いなしに、母は話し続ける。
「お父さん、この前出張から帰ってきたとき言ってたわよ。」
「どんな彼氏か見てみたいって。」
「あんた達二人とも、女の子だからね。」
「お父さん、息子がほしかったって言ってたし。」
そうなんだ、我が家は、父に母、わたしに3つ下の妹の4人家族である。
父以外、女所帯というわけだ。
(そんなこと言われても・・・)
(家族に紹介ってまだ早くない?)
リビングテーブルの椅子に腰掛け、お茶をすする。
「で、今日は彼氏くんとお出かけ?」
『うん。』
『淀川の河川敷で【水都祭】って花火大会があるんだって。』
『彼の地元やし、一緒に行こうって誘われちゃった。』
そう、珍しく彼から誘ってくれたんだ。
10日くらい前のことだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その日、わたしは前期試験の最終日だった。
確か彼も試験だったはずだが、何限目まであるのか
聞いていなかった。
試験も終わり、帰り支度をしていた時、
ポケベルが震えた。
【シケンオワッタラ】
【アエナイカナ】
【エキノロータリーニイル】
わたしは表情が緩んでくるのを抑えながら、
駅までのバスに乗り込んだ。
彼は、駅舎へ上がる階段の日陰になったところにいた。
『ごめん。遅くなって。』
『ところで、君は今日何限目までだったの試験?』
「3限目で終わり。けど、明日も試験あるんよね。」
『そう、わたしは今日で終わり。』
「なら良かった。ごめんね、急に呼び出しちゃって」
「響さんの今日の試験、何限目までかわからんかったから」
「俺、大学のバス停でずっと待ってたんやけど・・・」
『えっ?3限目終わってからずっと待ってたの?』
「うーん、4限目始まってからも、少し待ってたんやけどね。」
「で、4限目までかって。ほんなら、いい加減帰ろうかなって思ったけど」
「けど、会って話したいことあったから、この辺でぶらぶら。」
(はあ)
内心でため息をついた。
同時に嬉しくもあった。
この前の付き合うきっかけとなった神崎川での不思議な出来事の時、
『君はもっと強引な方が良いよ』と言ったけど、
付き合ってからも強引さはほとんど感じられず、
待ってばかりの新にいらつく事もあったからだ。
けど、会って話したいって言われたのは、やっぱり嬉しくもあった。
『暑いし、そこの喫茶店でも入ろうよ。』
喫茶店の中は、外とは比べるまでもなく冷房が効いてて天国だった。
いつものアイスコーヒーを二人分頼み、新に話を促した。
「8月最初の土曜日、うちの地元の淀川河川敷で花火大会があって」
「水都祭って言うんやけど、響さんと一緒に行きたいなって」
「あの、俺と一緒に花火を見に行ってくれませんか!!」
(ぷっ。)
心の中で吹き出してしまった。
(そっか、そっか。)
(わたしを花火大会に誘うために、こんだけ気合い入ってたんやね)
『いいよ。』
『前に聞いたことあったから、一回行ってみたいって思ってたんだ。』
「ありがとう、良かったー。」
「で、花火は夜やし、そのまま次の日も一緒にいたいなって。」
(えっ?)
(今、なんて言った??)
わたしの頭の中では彼の言葉が延々とリピートしていた。
(そのまま、次の日も一緒に・・・)
(そのまま、次の日も一緒に・・・)
(そのまま、次の日も一緒に・・・)
(そのまま、次の日も一緒に・・・)
「響さん?」
彼がわたしを呼ぶ声を聞いて、ふと我に返る。
それでも、さっきの彼の言葉はわたしの脳内で
再生され続けていた。
「響さん?大丈夫?」
『あー。あー。大丈夫。大丈夫。』
『うん、うん。良いよ。土曜日も日曜日も大丈夫。』
「良かったー。ありがとうね。」
「響さんと二人で花火大会、めっちゃ楽しみやわあ。」
彼は素直に喜んでいた。
逆にわたしは顔が真っ赤になるほど、焦りまくっていた。
嬉しさよりも恥ずかしさが勝り、
冷房が効いている店内にも関わらず体が火照っていくのを感じていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
と、あの日の彼とのやり取りを思い出すうちに、
またもや顔が赤くなっていくのがわかる。
「花火大会か。なら、浴衣着ていったら良いよ。」
唐突に母が言う。
『いいよ、浴衣なんて。歩きにくいし。』
「けど、お祭りって言ったら浴衣でしょ。」
「屋台とかも出るんでしょ」
と、母は譲らない。
その時だった。
今まで、TVゲームに夢中だった3つ下の妹の光(ひかり)が、会話に割って入ってきた。
「お姉ちゃん。」
「男を落としたいんやったら、浴衣が一番やって。」
「こうやって、浴衣の胸元のとこをちょこっとはだけて見せたら」
「男っていちころやで。」
『なっ、なっ、何言ってるん!あんたは!』
「ははは、めっちゃ顔赤くなってるやん、お姉ちゃん」
『この、エロガキ!!』
「二人とも、はいそこまで!!」
「光、あんたは受験生やねんから、その辺は自覚してよね」
母がわたし達二人を軽くなだめた。
そうだ、現在高3である妹は大学受験真っ只中。
それなのに、週末には必ずと言って良いほど、遊びに出かける始末。
「へいへい。しっかり勉強はやってますよ。」
ふて腐れながら、またもやTVゲームのコントラーラーに手を伸ばす。
「なら、響は今日の夜ご飯はいらないわね。」
「今日、明日とお父さんは出張でいないし。」
「今晩は彼氏とお泊まりでもしてきたら」
『もう!お母さんも!!』
顔を真っ赤にしながら、叫ぶことしかできなかった。
母は若くして結婚し、わたしら姉妹を産んだからか、
考え方が古くさくない。どっちか言うと、斬新な方だ。
しかも、性についても開けっぴろげな性格である。
友達感覚でわたし達と接してくれているのは良いが、
時々、デリカシーの欠片もないことを平気で言うのが
【玉に瑕】とわたしは思っている。
そんな二人に真っ赤になった顔をこれ以上見られたくなくて、
『行く準備してくる。』
と言って、わたしは自分の部屋に早々に戻っていったのだった。