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#小説
「結」ー PROROGUE ー Uzumakism
神戸の靴の街「長田」にあるDINING BAR「MUSUBINA KITCHEN」へ2021年のクリスマスに提供した作品「結」の制作過程を少しずつ投稿しようと思う。
“むしょく”として初めての“納品”となった作品だ。
トップ画は“無色”だが納品時は着色済みだ。色が付いて行く過程を是非見て欲しい。ただし、「未完成」でのお渡しとなっている。詳細は後々述べる事としよう。
まずは、作品制作に至った経緯
「結」 ー Phase 1 ー Uzumakism
吾輩は描である。名前はまだない。
どこで生まれたか頓と見当がつかぬ。
人生、じゃない。猫生に少し嫌気が差している猫である。飼い猫なら幸せだったかも知れない。
何もない山から街へ降りて来たけど、誰も拾ってくれそうもない。
何ヶ月も続く土砂降りの雨の中、野良猫をするのも辛いなと思いながら路地裏の一角に雨宿りの為の軒を見つけて眠りに落ちた。
夢の中に現れた女神さまが吾輩に優しく声を掛ける。
「猫をしてい
「結」 ー Phase 7 ー Uzumakism
キッシュが美味い酒場で隣に座る紳士に話しかけた。この近くに猫が屯している場所があると言う。少々猫には飽きていたのだが気休めに覗きに行ってみた。人間になってしまったら猫を見る目が変わったみたいだ。少しこの子たちでは物足りない。船に乗る前に遊んでいた猫たちは虎だったのかも知れないな。
それから数日は猫に興味を示す事もなく、港街で出会う人間たちに声を掛けては談笑し楽しい時間を過ごした。
暫く、色んな所へ
「結」 ー Phase 9 ー Uzumakism
キッシュの美味い酒場の馬屋に繋がれた暴れ馬と仲良くなりたくて、酒場の女将に馬について色々聞いてみた。どうやらこの馬は猫が好きらしい。だけど普通の猫ではなくて“魔力”を持った猫が好きなのだとか。魔力? 何のことやら。
魔法の猫が酒場に来た時は馬が大人しくなるそうな。
「で、その魔法の猫ってどんな猫かニャ? あ、いや猫かな?」と私は尋ねた。
女将曰く誰も見た事がないから、どんな猫かは知らないらしい。
「結」 ー Phase 10 ー Uzumakism
どうも最近、私は様子が変だ。
時々記憶が飛んでいる。この間なんて酒場の馬屋で知らない内に眠りこけていた、酒を飲んだ訳でもないのに。
目が覚めたら藁の中で猫みたいに丸くなっていたのだ。
手をぺろぺろと舐めて、顔を擦りありもしないヒゲを整える。無意識に猫の様な仕草をしているではないか。私は一体何をしているのだろう…。
そうして、起き上がり藁の山の向こうにいる馬に目をやった。
暴れ馬は今日も大人しい。例
「結」 ー EPILOGUE ー Uzumakism
“魔法の猫”を追って随分と走り続けた。
自分でも驚くくらい早く走れる。まるで足が四本になったみたいだ。
いつの間にか私は街と外界を隔てるブロック塀の所まで辿り着いていた。
辺りを見渡したが、白い猫の姿が見当たらない。
どうやら塀を越えてしまったようだ。
この塀の外に私は出た事がない。何でも、外へ出た者は戻って来れないらしい。
誰も戻って来ないから、誰も外の話を知らない。この外は人智の及ぶ世界では