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ニンジャの話 その22 介護

Airbnbと言えば今でこそ多くの方がご存知だと思います。しかし当時の私はそのようなサービスがあるとは知りませんでした。私のバックグラウンドはヘルスケアであったので宿泊サイトは精々エクスペディアを知っていたくらいでAirbnbも、のちに務めることになるBooking.comの存在すら知りませんでした。

外国人に古民家を紹介するサービスができればいいなと思ってはいましたが具体的にどうすれば良いのか理解さえしておらず、旅館業法も知らず、民泊新法もない頃ですから。ただ外国人に使ってもらえるのではというアイデアだけは頭の隅に残り、この考えはこの後1年ほど熟成されることとなります。

お片付けを実行し、海外ゲストまでお呼びするというイベントがあったおかげで、少なくとも両親の持ち物はかなりスリムになり、お部屋も大変きれいになり、それを維持することもできるようになりました。私も家族も一定の満足をしていました。

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認知症患う父は日によって機嫌が変わります。認知症患者のなかには不安から攻撃的になる方もいらっしゃるようです。私の父は常にポケットに小石を入れ悪い奴が来たらこれで撃退するんだと言って自己防衛をしていました。そして家の周りをパトロールします。また、家の上を飛行機が飛ぶと異様な程警戒しました。何故かなと不思議に思っていましたがどうやら子供の頃に体験した戦争の空爆のトラウマからであることもわかってきました。閉口したのは父の呼び寄せ癖です。冗談ではなく1分毎に父は私の母の居場所を確認しようとしました。近くにいないと「みつちゃーーーん」と大声で呼びます。この声が村中に響く大声でしたので村の人も今日も探しとるなと笑っていたくらいです。

父のルーティーンは1分に1度母はどこだと尋ね、3分に1度すでに亡くなった父の母(私の祖母)はどこかと、尋ね、5分に1度徳島に住んでいる父の兄(私の叔父)の所在を聞くというものでした。それがワンサイクルで1日ほぼずっとそれが続きます。これには参りました。母がいると安心するようですが母にも祖母と叔父の居場所は頻繁に聞いていました。

何故のこのように父は大事な人を探すのかを考えてみたら思いつくことがありました。先程の飛行機です。飛行機が飛ぶと必ず母、祖母、叔父をワンセットで探すのです。どうやら父は危険が迫ったと感じると彼らを守ろうとして彼らの居場所を探そうとしているのだろうと気がつきました。認知症を患ってでさえも家族を守ろうとするのかと気がつき父の家長としての責任と愛を認識しました。僕ら子供は探さんのかい!とツッコミを入れたくなりましたが、多分父の中ではまだ子供は生まれてなかったのだと思います笑。とはいえ呼び寄せ癖は日常生活においては大変面倒で幼児と生活しているかのようで私も母もこれには大変苦労しました。

また日によっては大変機嫌が悪くぶつぶつ言って小石を投げたりします。ドライブが大好きなので車に乗せてあちこち父を連れて行くのもほぼ日課で私もよく車で連れ出し母に自由時間を過ごしてもらおうと努力しました。ドライブが始まると大変機嫌よくニコニコの父ですがしばらくすると帰りたいと言い始めとても機嫌が悪くなりまた母の所在を聞くと言うサイクルに入りました。認知症は介護する側に大きな負担を与えます。私の母は父に対してとても寛容に介護をしていました。しかしその限界は近いと思われました。私自身父の介護をしていて本当に辛いと感じることも多くありました。認知症は回復が見込めないため父の介護は当然のことながら母の負担を減らすことを心がけていました。認知症を発症している本人ではなく家族が潰れてしまうことがままあるそうです。日本に戻ってきて半年、私は父の介護と古民家の片付けをする毎日を過ごしました。実父の介護の現場を見て、献身的にサポートして疲弊していく母を見るにつけ、これはいつまでも介護を続けられないだろうという気持ちを持ちました。母の人生と健康を助けなければならないタイミングが近づいていました。

そのように感じていたある日、以前勤めていた会社の顧客であった秋田県の医師から久しぶりに連絡を受けました。秋田に遊びにこないかというお誘いでした。経営相談にも乗っていたりしたので軽い気持ちで秋田に遊びに行ったのですが、私はその秋田でニンジャのベースとなる体験をすることになります。

続く

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