【まいぶっく18】春を待つ~ふゆめ がっしょうだん
満開の桜の中、卒業式や入学式に向かう・・・・というシチュエーション、一度体験したかった。
中学の入学式の時は猛吹雪だった。よんだタクシーは、吹雪がひどくて我が家まで来られなかった。母と雪だるまになりながら2km歩いて、タクシーが待っているところまで行った ということが忘れられない。
私の周りで桜が咲くのは、早くて4月末。ゴールデンウィーク前後というのが通例だ。
周りに生えていなかったからか、単に興味がなかったからなのか、「桜の花」というのを意識したのは、進学して札幌に住んだ時が初めて。(札幌は、街の中でもけっこう植物が多い)
その桜には「花芽」と「葉芽」があるというのを知ったのも、かなりあとになってからだった。
冬の枯れた姿の木というのは、花も葉も無くなってしまったのではなく、「芽」という形で次の準備をしていたのだ。
そしてこの本に出会う。
「ふゆめ がっしょうだん」かがくのとも1986年1月号
おにぐるみ、おおかめのき、はりえんじゅ・・・様々な木の「冬芽」のアップが、目にとびこんでくる。
太陽の塔、ピエロの鼻、コアラ、はにわ、つのを持った悪魔・・・
いろいろな「顔」に見える。
今にもしゃべり出しそう。
顔にみえるところは、実は、落葉した葉の柄がついていた跡です。
(中略)
この顔の上にある、円形や円錐をした部分、これが冬芽で、これから葉や花になるものが中に小さくたたまれていて、春をまっています。(解説より)
「花」には、多くの人が目をとめるだろう。
でも、冬の寒い中、何もないように思える枝に近づき、その「芽」を見ようとする人は、それほど多くはないだろうと思う。
多くの人が、気にも とめないようなこの「命」に カメラをむけた方たちのすごさに拍手したくなる。
この「ふゆめ がっしょうだん」の文を書いたのは、長新太さん。
ページごとの短い言葉は、これがまた写真にぴったり。
声に出して読んだときのリズムが心地よい。
ところで、我が家の桜の木の「冬芽」は、現在どんな風になっているだろうか・・・・
うっ
ううっ
雪が多すぎて近づけない。
早く春よこい
ふゆめ がっしょうだん
(かがくのとも傑作集)
富成忠夫、茂木 透 写真
長新太 文
福音館書店 1990年
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読んでいただき ありがとうございました。