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人生の新しい扉~2022年10月に読んだ本から

読んだ本を忘れないため、毎月、読んだ本の中から 印象に残った本を 記事にしている。10月は 3冊。

1 喜嶋きしま先生の静かな世界 森 博嗣ひろし 

 文字を読むのは不得意、勉強大嫌い。そんな僕は、小4の時、図書館で一冊の本に出会う。その一冊を読むことで得られた経験・・意味のわからないものを、わかるものに変えていくプロセス・・が、楽しかった。それが、たぶん僕の人生を決めたと思う。
そして、大学4年での喜嶋研究室の人々との出会いから、研究に没頭していく人生が始まる。

最初から、たんたんと静かに続いていくお話。
それなのに、数ページ読んだだけで、「おもしろい」「最後まで読みたい」と感じた。
それがなぜなのか、わからなかったが、途中で、
「そうか、これは『研究者』の話なんだ。」
と、わかったとたん に落ちた。

三浦しをんさんの「愛なき世界」や、前野ウルド浩太郎さんの「バッタを倒しにアフリカへ」を読んだときも感じたのだが、私の中のどこかに、「研究者・・何かを深く調べていく人たち」に憧れがあるようなのだ。

研究対象を、深く深く考えていく状態の描写で、

呼吸を整えて、もう一度 挑もうとするときには、あと少しで わかりそうだった、もう少しで 辿り着けそうだった、という感覚だけが 痺れるように 全身を駆け巡る。そして、納得のいくものを つかんだときには、体温がふっと上がったみたいな余韻が残るのだ。

物事を深く研究した経験のない私だが、たとえば、難しい数学の問題のヒントを もう少しでつかめそうな感覚の、もっともっと深いものかなあと想像してみる。


ところどころにちりばめられている 喜嶋先生の言葉も味わい深い。 

「そうやって調べることで、何を研究すれば良いのか ということが、わかるだけだ。本や資料に書かれていることは、誰かが考えたことで、それを知ることで、人間の知恵が及んだ限界点が見える。そこが、つまり研究のスタートラインだ。文献を調べ尽くすことで、やっとスタートラインに立てる。問題は、そこから自分の力で、どこへ進むかだ。」

「調べ尽くすことは スタートライン。問題はその後」
研究するということは、何と奥深いことか。

森博嗣さんの作品は初めて読んだ。Amazonの内容紹介に「自伝的小説」との一語があったので、あわてて著者紹介を見た。「工学博士で、某国立大学の工学部助教授」とあった。
おおお!このお話は、きっと、ご自身の体験が元になっているのね。


2 とわの庭  小川糸

「とわはお母さんにとって えいえんの愛 だから、とわって名前にしたのよ。」と言っていた母さん。
よく本を読んで聞かせてくれた母さん。
沈丁花、金木犀、季節の巡りがわかるようにと 庭に香りのする木を植えてくれた母さん。

でも突然、母さんはいなくなった。盲目の「とわ」を一人残して。

物語前半。
母ひとり子ひとりの暮らし。母親が、目の見えない娘「とわ」を溺愛している話・・・かと思ったら・・。

表紙の絵、色合いは、とてもふんわりとした印象。
文章も、あたたかで、落ち着いた雰囲気。だから、読み進めることができたが、冷静に考えれば(冷静じゃなくても)、ものすごく悲惨な状況。

外界や母以外の人間と、ふれあってこなかった盲目の「とわ」。突然 母親がいなくなり、ひとり家に取り残される。およそ5年もの間、たった一人で暮らす。食べ物は?お風呂は?着る物は?

よく、よく、生き延びることができたよ、とわちゃん。


後半は、そこから助け出されて、多くの人の支援を得て、自立していく様子が描かれている。一人の「人」としての暮らしを、一歩ずつ一歩ずつ、学び、思い出していく。

何年か後、盲導犬と一緒に、元の家に一人で住むことまでできるようになった とわ。

「まだまだやりたいことがたくさんある。」
「人生の新しい扉は、開かれたばかりだ。」

希望、力強さ、そして、温かさに充たされて、ページを閉じることができた一冊だった。


3 科学絵本の世界100

5つの章に分かれて 100冊ブラスα の 絵本が 紹介されている。

「科学絵本」は、日常の「不思議」から出発して 自分で考える力を引き出す 大切な存在なのです。

調べれば すぐわかることでも、まずは 考えてみよう。正解に至る道のりこそが おもしろいのだから。

こういう ブックガイド的な本が 大好きな私。
特に、別冊太陽のシリーズは、大判で写真も多く、見応え、読み応えがある。

「みんなうんち」 「はははのはなし」など、とても有名で、私も何度も読んだ本も含まれている。大好きな 「ふゆめがっしょうだん」も 載っていて、思わず「そうよ、そうよ、この本は傑作よ」と つぶやく私。

「おばあちゃんの小さかったとき」。私も持っている本だが、「あれ?こんな題名だったっけ?」と、思ったら、もともとは、「母さんの小さかったとき」という本を あらためて作り直したとのこと。
そうよね、もうこの本で描かれている時代は、今の子どもたちから見ると、おばあちゃんもしくは、その上の世代のことよね。題名を変えるなんて、柔軟な発想だなあ。

新しい本、初めて名前を知る作家さんの本も たくさんあって、あっという間に  付箋ふせんだらけとなる。

そばにあれば、何度も読み返したくなり、そのたびに新しい発見をし、読みたい本が増えていく一冊である。


11月8日、夜。何気なくつけていたTV「マツコの知らない世界」に、突然、飯間浩明さん(辞書作りの世界)が登場されてびっくり!

飯間浩明さんと言えば、「ことばハンター 国語辞典はこうつくる」の著者。辞書つくりの大変さを とてもわかりやすく、楽しく書いた本で、お気に入りの一冊。読書会でも取りあげた

その後、「日本語をつかまえろ!」 「日本語をもっとつかまえろ!」も読んだ。(いろいろな言葉をとりあげて、解説している内容。本文もイラストも楽しい。)

番組は、「ことばハンター」に書かれていた内容も けっこう取りあげられていたという印象。
出版されているそれぞれの辞書の特徴を「伝統重視」か「現代語重視」&「実例重視」か「理想重視」という視点で分類していたのも興味深かったし、同じ言葉の辞書による説明の違いも おもしろかった。


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くば
読んでいただき ありがとうございました。