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地球の公転がもたらす私たちの健康


はじめに

 人間は地球に生まれ、そこで生活しています。地球があるからこそ、人は生きていけるのです。
 地球の「自転」は人の体内時計と関係しており、人の健康に影響していることが分っています[1]。「公転」も人の健康に影響していると言われています[2]。
 地球の自転軸が公転面に対して23.5度傾いているため、公転によって日照時間が変わります。日光浴時間の長短によって人の体内に生成されるビタミンD3の濃度が変わると言われています。
 ビタミンDは免疫力を高めインフルエンザとがん予防に有効であるとの話を聞いたことがあります。これらの話の裏付けを調べてまとめてみました。

ビタミンD

インフルエンザ予防

 ビタミンDは腸でのカルシウム吸収に必要ですが、ビタミンD3※の濃度が、インフルエンザの罹患率に関係していると言われています。[3,4]によると、ビタミンD3を摂取した人は摂取しない人よりインフルエンザの罹患率が低かったという実験結果があります。インフルエンザの流行期はインフルエンザ予防のためにビタミンD3の摂取が必要そうです。

※ビタミンD3はカルシフェロールというビタミンDの一種で、腸管や血液中のカルシウムの吸収を促す栄養素です。不足すると低カルシウム血症や骨の軟らかさなどの疾患を引き起こすリスクがあります。一日の摂取量は18~69歳で8.5~100μgです。日本人は日射によって一日のビタミンDは採取されていると言います。ただ、日に当たらない人は、食物やサプリメントからビタミンDを摂取する必要があるかもしれません[3,4]。次の食物にビタミンDが含まれていると言われています。

しらす、サケ、マグロ、サバ
レバー、チーズ、卵黄
キノコ類

日光浴とビタミンD 

 日光に含まれる紫外線は、波長の長さによってUV-A、UV-B、UV-Cの3つに分けられます。UV-Cはオゾン層に吸収されるため、地表に届くのはUV-AとUV-Bです。UV-Aは波長が長く、窓やガラスも透過するため屋内にも届きます。ただUV-BはUV-Aに比べると波長が短く、屋内で浴びることはありませんが、屋外であびると日焼けの原因となります。
 ビタミンDの生成に関わるのはUV-Bで、皮膚がUV-Bを浴びると、皮膚に存在する7-デヒドロコレステロールという物質を材料にしてビタミンDが生成されます。UV-Bは屋内では浴びられないため、ビタミンDの生成のためには屋外での日光浴が必要です[5]。
 以上のことから、冬は紫外線量が少ないため、日射を浴びたほうがよいと思います。夏は野外で多くの日光を浴びないように注意する必要があります。まず、気象庁の紫外線量計測データを参考までに掲載します。UVインデックスは紫外線が体内に及ぼす影響を示す数値です。下の図を参考にしますと、UVインデックスが2以下であれば戸外で日光浴しても問題なし(つくばは、11月~2月)。2~5の場合は長袖、日焼け止め、帽子が推奨され(10月と3月)、6以上の場合は必ず、長袖、日焼け止め、帽子着用とのことです(4月~9月)。

気象庁の紫外線量計測データ(つくば、2021年)

 人が一日に必要なビタミンD量(最低5.5ug)を日光浴を通して生成する場合に必要な時間を[7]から抜粋します。両手・顔を晴天日の太陽光に露出したと仮定した場合、
紫外線の弱い冬の12月の正午
 那覇で8分、
 つくばで23分
 札幌で77分
紫外線の強い7月の正午
 那覇で3分、
 つくばで4分
 札幌で5分
必要とのことです

 このデータによると、3都市では沖縄の人がビタミンDを体内に多くもっている可能性が高いです。

日照時間とがん罹患率の関係

 まず各都道府県の年間日照時間を示します。日照時間は冬に雪の降らない太平洋側の県が長いことが分ります。

都道府県別日照時間(2018年)[9]
都道府県ごとの日照時間(2018年)[10]

 一方、各都道府県別のがん罹患率(2019年)は以下の表のとおりです[9]。

がん罹患率[8]

 各都道府県の日射時間とがん罹患率の表から関係を読み取ります。
秋田県、青森県、北海道、鳥取県、島根県は日射時間が短いため、がん罹患率が高いと読み取れます。山梨県、三重県は日照時間が長いため、がん罹患率は低くなっています。
 上記の都道府県別の日照時間とがん罹患率の値から散布図を作成してみました。

都道府県別日照時間とがん罹患率の相関(2018年)(著者作成)

 相関係数は-0.454となり、負の弱い(中の)相関を示しています。すなわち1年を通して日照時間が長い都道府県は、がん罹患率も低くなる傾向が分ります。大阪府は、日照時間は2,266時間と長い方なのですが、がん罹患率は409.7と大きいためこの相関から大きく離れています。
 日射時間の長さが、日光による人が持つビタミンDの量と関係があるとすれば、ビタミンDが、がん予防に有効であると言えそうです[6]。
 弱い相関関係のため日射時間はがん予防の主因子ではなく、ほかにも因子があると思われます。ビタミンDは食事から、サプリメントからも接取可能であり、さらに地域のがん検診の普及(またはがん検診率)もがん罹患率と関係しているかもしれません。ちなみに、大阪府のがん検診率は子宮がんを除き全国最低です[11]。

まとめ

 インフルエンザ予防にビタミンDが有効であること、さらにビタミンDは日光浴で体内に生成されることが分りました。また、がん予防に適度な日光浴が有効であることも認識できました[7]。ただし、夏の強い日光は皮膚がんの原因になるため、日光浴は避ける必要があります。

参考資料

[1]健康をささえる生体リズムhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/9/2/9_118/_pdf/-char/ja

[2]季節・一日ごとの体内変化1
満岡内科・循環器クリニック (mitsuoka-clinic.or.jp)

[3]ビタミンD3とは?働きや一日の摂取量、ビタミンD3を多く含む食品とレシピを紹介 - 健康情報コラム (suntory-kenko.com)

[4]インフルエンザ予防になる栄養素とは? | 内科・消化器内科|かわクリニック|神戸市垂水区舞子 (kawaclinic.com)

[5]ビタミンD生成に日光は重要?必要な時間や効果など解説│健達ねっと (mcsg.co.jp)

[6]厚生労働省にビタミンDについて解説した記事がありますので、ご参考まで。(米国文献を翻訳したもの)
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c03/10.html

[7]ビタミンDが必要な日光浴
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html

[8]都道府県別がん罹患率
https://news.allabout.co.jp/articles/o/44036/

[9]日照時間(年間)の都道府県ランキング【1975〜2022】 | 統計リアル (statja.com)

[10]日照時間の都道府県ランキング(平成30年) | 地域の入れ物 (region-case.com)

[11]大阪府|パートナー企業・団体の取り組み|パートナー企業・団体|がん対策推進企業アクション (mhlw.go.jp)

変更履歴

Rev.1 2024.5.11 初版

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