リアルライフはどこにあるのか?:SF「フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ"Real Life"」レビュー
最近見たドラマで面白かったのは、『フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ』の中にあるいくつかの話だ。これは、フィリップ・K・ディックの短編に基づいた一話完結型のSFドラマ・シリーズだ。まだ全話を見終わってはいないけれど、前半では"Real Life"と"Autofac"という話が私には面白かった。
今日は"Real Life"のレビューをしたいと思う。あらすじはこうだ。主人公は二つの世界を行き来している。
一つ目の世界は、私たちの目から見ると未来だ。主人公は女性警官であり、サラという名前を持っている。同僚をコリンズという男に殺された。そのことについて、ひどい罪悪感を抱いている。サラには女性の恋人がいる。サラの強いストレスを心配した恋人は、サラに仮想空間へ行って現実から離れ、療養するようにすすめる。
もう一つの世界は、サラが恋人から勧められて出かけた仮想空間だ。ここでは、主人公はサラではなく、会社経営者の男性、ジョージとして存在する。この世界は、私たちの目からみると未来ではなくほぼ現代である。
二つの世界を行き来するうちに、主人公はどちらが自分の本当の世界と姿で、どちらが仮想空間と仮想の姿なのかが分からなくなってくる。どちらの世界でも、ここがあなたの真の世界だと説明を受ける。仮想空間だと思っていた世界でも、コリンズという男がジョージの大切な人を殺害していた。SFの世界とサスペンスが融合し始め、見ている私たちもどちらの世界が主人公にとって本当の世界なのかが分からなくなる……。
この物語で一番好きなところ。それは、最後のオチだ。SF世界や、サスペンスも楽しかったけど、主人公は最後にどんな選択をするのか。そのオチ(選択)が、実に人間らしいのだ。
私たちは科学技術のものすごいスピードの進歩により、生活を支えられている。けれど、どんなに科学技術が進歩しても、何を選択するかを決めるのは人間だ。人間は、過去も未来もずっと変わらずに、人間だからこそ持つ悩みに苛まれるのかもしれない。このドラマのオチは、そんな人間の心の弱さを描いているように思えた。それが絶妙に、この物語の終わり方に対する納得感を引き出してくれているように思う。
"Real Life"はSFでありながらも、そのテーマはとても哲学的だった。あまりネタバレをしないように書くのは難しかったけれど、読まれた方が興味を持って下さると嬉しい。このドラマシリーズで私が楽しめた"Autofac"という話についても、後日またレビューを書きたいと思う。