作家の晩年と人生哲学を探る:「死をポケットに入れて」ブコウスキー読書感想
作家、チャールズ・ブコウスキーの「死をポケットに入れて」を読んだ。
ブコウスキーが亡くなったのは1994年3月9日。この作品は、1991年8月28日から1993年2月27日までの間に書かれた33日分の彼の日記である。しかし、実際は日記というよりもエッセイのようだと訳者あとがきには書かれている。確かに読んでいると、書くことについてやこれまでの人生について振り返っていたり、短編小説を読んでいるような面白いエピソードもいくつか書かれている。
文庫本としては、薄い230ページほどの本だが、読むのに時間がかかってしまった。一気に読み進めるというよりは、じっくり一行一行の文章に向き合いたくなる内容だった。
ページを開いて早々に、言葉の組み合わせや表現、文体に魅せられた。私の語彙力がなくて大変申し訳ないのだけれど、とにかくその表現と彼の中にある軸がかっこよかった。本文中で彼はよく「くそったれ!」と言うけれど、それも下品には聞こえない。書くことについての熱い思いや世の中を外側から見ている感じが好きだ。そして、自分の衰えや死と向き合っている姿が描かれている。
などなど、名言も山盛りある。
また笑えるシーンもたくさんある。隣に住む90代のおじいちゃんが2回登場するが、そのシーンは2回とも好きだ。詩人をボロカスに割と多めの文字数でディスっているのも面白い。
印象的だったのは、ロックコンサートへ行った後の場面だった。パーティの翌日、自室でクラッシック音楽を聞いているシーン。華やかなロックコンサートやパーティとの対比が彼の晩年の衰えを強調しているように感じた。
言葉から、彼が自分に言い聞かせ、歳を取り縮んだ姿を思い浮かべる。私の胸がすこし痛んだ……。
ブコウスキーの「死をポケットに入れて」は、彼の晩年の考えや感じたことを生々しく描いたエッセイといえる。彼の日常の小さなエピソードから大きな哲学に至るまでの鋭い、そして独自の洞察を知ることができる。彼の言葉の中には、私たち自身の人生や考え方を見つめ直すヒントが詰まっていると思えた。難しい言い回しはなく読みやすい。多くの方におすすめしたい一冊だった。
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