ペット愛と社会問題が交差するミステリー:「ロスト・ドッグ」読書感想
ロスト・ドッグ(酒本歩 著)を読みました。
この物語は主人公、太一の愛犬、ポメラニアンのモコが僧帽弁閉鎖不全症だと判明し、延命するには手術が必要だと分かるところから始まります。手術代は200万円。太一のwebライターとしての収入だけでは、手術代をすぐに用意するのは困難です。愛犬を助けたい太一は、手術代をどうやって工面するのかと悩みます。
一方、太一はひょんなことから犬の「引き取り屋」という問題を取材することになりました。引き取り屋はペットショップで売れ残ったり、事情で飼えなくなった飼い主から犬を買い取ります。その犬たちをケージに入れ、飼うのではなく、ただ死ぬのを待つのです。この引き取り屋の取材を進めていくうちに、太一は人の遺体を発見してしまいます。ここから物語は、一気にサスペンス度合いが濃くなっていきます。
引き取り屋の参考記事:https://wanchan.jp/column/detail/3723
ペットが病気になったとき、助ける手段がなければあきらめるしかありません。けれど、もし手段があったとしたら。それが高額な医療費でも治療を受けさせるのか。ペットロスとどのように向き合うのかという問題。
なんらかの事情で飼えなくなったペットを買う、引き取り屋。この存在から見えてくる、動物愛護法の問題。
これらを基盤にして、ミステリーとサスペンスが展開されていく社会派小説でした。時々、医療や法律の説明があり難しい内容ですが、文章が読みやすいので、一気に2日で読めました。
また、作者の酒本先生は、twitterやnoteで情報発信をしておられます。小説プロットの作り方など、創作の裏側の貴重な情報も公開して下さっています。小説を書きたい方には、何か役に立つことを見つけることができるかもしれません。「ロスト・ドッグ」も作成時のプロットを一部公開されていました。
私は小説よりも先にnoteの記事を読んでいたので、「あ!あの記事にあった部分だ」なんて思い出しながら本文を読めました。見せ方や伏線のはり方も意識できました。
ロスト・ドッグはペットに関連した社会問題×ミステリーの小説でした。ペットを飼ったことがある方には、読んでいて胸が痛くなるような描写もあると思います。けれど、全体的には酒本先生のワンコへの愛情が溢れていました。私と同じく小説を書きたいと思っておられる方は、酒本先生の記事を合わせて読まれるとより多くの収穫があるかもしれません。
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