[2022]ヒラマサが読んだ75冊とよかった11冊

ご挨拶

 今年は毎月読書記録のnoteを書くつもりだったのですが、大学院生としての生活が忙しく、振り返る間もなく毎月毎月が過ぎていきました。今年は

  • TOEIC 845点取得のための集中的な勉強

  • ハイスピードな講義の消化

  • 修了要件であるフルタイム・インターンシップ

  • 就活に伴うインターンシップ参加

  • 脱腸による入院・手術

  • コロナ感染

など、盛りだくさんな日々を送っていました。心身ともにいっぱいいっぱいで、気がついたらいつの間にか年末です。いったん浮世を忘れて、何らかの温泉地でリフレッシュする必要があるのですが、落ち着ける日はいつになるのか。ともあれ、どれもこれも来年心配なく勉強・研究するための布石なので、来年はきっと研究も勉強も腰を据えてできるはずです。
 本をたくさん読むために大学院生になったはずなのですが、去年より冊数が減っていて悲しい。冊数で計るべきではないとも思うけど、もっとたくさん読んで考えて書きたいし、もっと読めるように考えられるように書けるようになりたい。あっという間に12月になり、大学院生活も残すは1年と少し。時限付きの日々だということを忘れずに、大学院生然としたいと思います。来年は岩波文庫を中心に、古典も恐れずに読んでいきたいと思っています。もちろん研究も!

さて、今年は75冊ほどの本を読んだようです(読書メータ―に登録できなかったものも数冊あるのですが)。2020年に読んだ78冊 や2021年に読んだ120冊 を踏まえて読んだ今年の本はこんな感じでした。

その都度必要性に迫られたり、なんとなく読み始めたり、色々あるのですが、この中で面白かった/読んでよかったn冊をピックアップしてジャンル別に紹介したいと思います。

目次:
生活
・お金
・小説とエッセイ
・社会
・実用
・その他

生活

痩せない豚は幻想を捨てろ

メソッドとしては当たり前のことしか書いていないんですが、その当たり前をやってないからお前はデブなんだろ。甘すぎ。お前の脳みそには角砂糖が詰まってんのか?という本。叱咤激励罵詈雑言に笑いながら読みました。こういう文章を書けるようになりたい。今年はダイエット本を何冊か読みましたが、結局これがお気に入りでした。

お金

最強のお金運用術

昨年は入門書をたくさん読んだので資産形成の大まかな理解はできたのですが、経済にも興味が出てきました。どうやらコア単元である金利周りの勉強をしたくてKindleUnlimitedで検索したところヒットしたので読了。
出版不況の煽りで「ハウツー/ビジネス書っぽいタイトル」にしてマスに売ろうという動きがありましたが、その典型的な良くないタイトルだと思います。本書は金利の解説本であって、運用術を解説したものではありません(もちろん金利の動向を見ながら運用することは重要ですが)。金利まわりは苦手意識があったのですが、初心者でも読みやすく、経済ニュースが見やすくなる良書です。読書メータでは登録できませんでしたが、この著者の別の本何冊か買って読んだもん。おすすめです。

小説とエッセイ

選んだ孤独はよい孤独

https://amzn.to/3Q20LYc

ツタヤ兼スタバで目が合い読了。
短編や詩。呪いもあるけど、タイトルのようにいたずらに孤独を煽ったり賛美するわけでなくどこか優しい。「選んだ孤独はよい孤独」。他に選択肢がない孤独でも、それを「選んだ」と後付けしてくれる言い訳っぽさも好きなのかもしれない。
気に入ったけど、正直まだまだ飲み込めてないので、誰かと感想会したい!!!また読む。

護られなかった者たちへ

https://amzn.to/3CaVvvw

昨年読んだ「この国の不寛容の果てに」とリンクしてこの国の「護られなかった者」に想いを馳せることになりました。僕自身も不寛容を助長する加害者であり、努力しない/できない人に対して、無意識であれ色眼鏡を通して見ているのだと思います。僕が偶然にも健康に働けたら、自分の税金が僕の意思と無関係に福祉を充実させ、そんな彼らに届くことを祈ります。福祉ってそうあるべきだと思います。
子ども食堂みたいに善意が介在しないと救われない人がいるのはおかしいです。特定の善意や、特定の価値観で誰かを切り捨てたり、要不要を判断することなく、誰もに救いの手が差し伸べられる社会を目指し続けるべきだと思います。そしてそれを目指す社会の中で生じるモラルハザードにも怒りを忘れないように。

社会

脱税の世界史/砂糖の世界史

https://amzn.to/3C58Vcb

https://amzn.to/3jBPl13

ある切り口から世界史を眺めると、教科書的な世界史と全然違う景色が見えるということで非常に楽しく読みました。
国家のベースとなる租税という巨大な利権が生み出す社会構造はある程度再現性があるらしく、同様のパターンで潰れた国がいくつもあるようです。日本でも防衛費関連の増税が話題になっていますが、やはり国家の土台には税があります。国と税の成り立ちと過去の過ちを振り返ることができる良書です。
一方で砂糖という世界商品の争奪戦からみると、国家内だけではないダイナミックな問題になってきます。イギリス史家により書かれた本書ですが、プランテーションや奴隷制といった現在の地域格差にも影響を及ぼした砂糖に着目することで、直感的に理解しやすい構造になっておりおすすめです。
面白かった指摘として、科学技術(政府に奨励されたビート)が重商主義(侵略と植民による砂糖きび)を駆逐するように思われたが、実はビートはコストが高く、モノカルチャーによって他の産業に乗り出せない旧植民地が活発に生産を続けたことにより、現在も砂糖の60%が砂糖きびで賄われているというものがありました。すなわち、温暖な気候と土地と労力を必要とする砂糖きびに対して、ビートは破壊的なイノベーションだといえますが、奴隷制のように不当に安く生産した経験があると、コストの関係からスムーズな移行ができないということです。労働者の権利を守らねばならない理由の1つに、これも挙げていいと思いました。
世界システム論(世界を一つとみなす考え方)と、歴史人類学(モノや慣習から人々の暮らしの実態を探る)の見方から書いたと後書きしています。不勉強でこういった見方を知らなかったので、この点も勉強になりました。まだまだ勉強しなければいけないことも。知的好奇心を刺激する良書です。

空気の研究

https://amzn.to/3Ie7oVd

「あの空気ではああせざるを得なかった」というように空気に支配されがちな私たちですが、その空気は何によって構成されているのだろうか。。。これを臨在感と状況倫理というキーワードのもと丁寧に論じた有名な一冊です。
僕の最終目標はあらゆる意味での"自由"なので、空気に縛られているとしたら空気の正体を知らねばならず、その目的は達せられたものと思います。僕も空気を読まずに済むようになりたいのですが、空気に抗う罪は大きいため、それに耐えられる実力がなければと思います。そこに「空気」があるとしても、それが非合理的であれば水を差す存在でありたい。乗る賢しさも、反る強さも。

ぴえんという病

歌舞伎町を社会学的に調査し、推し文化や承認の変遷を当事者目線で語る本。僕はお酒を飲まないのでこういった社会について疎いのですが、想像を遥かに超えて衝撃的な内容でした。人はその社会性に潰されて死んでしまったり殺してしまったりするんだということを改めて。そして、ネットを通じて「社会のまなざし」に晒されてルッキズムが加速したのも息苦しさを助長していますよね。本書内で紹介されていた「まなざしの地獄」と併せて読みました。 著者は年下の大学生ということにも驚きました。すごすぎ。えらすぎ。僕もこんな調査・研究と執筆ができるようになりたいと心底尊敬しました。

就職がこわい

https://amzn.to/3VvOigu

香山リカ本をはじめて読了。「自己を理解し自己実現のための就職」を当然視し、そういう指導がなされているが、そんな就職ができる人なんていうのは一握りof一握りで、しかしそうすべきだと指導された若者はどうすればよいのだろうかという問題を提起しています。うまく就職・就活にチューニングできない学生を多くみてきた著者の分析がシャープです。
同様の指導は僕にもあって、周囲は理解しながらも受け流して現実的な解を見つけていましたが、真に受けると残酷なメッセージだったと思います。去年ノミネートのお気に入り本:年収90万円で東京ハッピーライフの好きな言葉「好きなことして生きていくのは難しい。嫌いなことして死なない。」というのがぴったりだと思います。

無理ゲー社会

https://amzn.to/3IeBpEm

世界中で蔓延する生きづらさや、生きることすら難しい人が発生している(もっというとそれに起因する自殺:絶望死)の原因をリベラリズムに起因するメリトクラシーに求め、公正・平等を問い直す本だと思いました。残酷ではありますが、社会がそうなっている以上受け入れるしかない。僕が生きる社会は豊かではありますが、希望を持てないのも確かです。「自分らしく」とか「夢」という善意のハラスメントを退け、諦念を抱きしめて生き残ろうと思いました。「就職がこわい」若者もこういうことを感じているのではないでしょうか。
これに反応した自分のツイートが面白かったので貼っときます。

学生時代に獲得した賞や事業派遣やその他色々では、「不公平を目ざとく見つけて得をしている」感があって後ろめたさがあったのですが、それはそもそも、そういった不公平(歪み)を見つけたり、そのチャンスをモノにする能力が不公平だというところにあったのだと思い直しました。自分で言うのもなんですが、高2あたりからその違和感を感じていたのだから筋が良い。もっと早くたくさん勉強していればよかったのにね。優秀な同級生に対して口八丁だけの自分に引け目を感じているのだとしても、メリットを競う以上平等にはならない世界の中で自分のカードを活かせたことに引け目を感じる必要はないんだと、やっと腹落ちした気がします。
そんな自分が嫌で、認められなくて、彼らのようになりたくて、土岐大に進学したんだと思います。自由意志で決めたつもりでも、縛られてたんですね。退学してから100冊本を読み、世界や自分を多少理解し、過去も解釈できそうです。こういう時間をもつべきだとずっと分かっていましたが、高専在学中は常に劣り、焦っていて無理でした。綺麗事にするつもりはありませんが、この一年の立ち止まりは無駄ではなかったと思います。
もともと言いたかったのは、不公平、言い換えて不平等や不正義に対して自分が加害者然として振る舞っている息苦しさについて、徹底して加害者にならないことは不可能であり、メリットを行使しないと不利益を被ります。そのことを割り切ったらその先にあったのは諦めで、正しい道を降りた気分でした。諦めた僕は、幸運にもメリトクラシーの中で生き残る素養があると自己評価しており、外から見えるメリットを見栄えの良い順に強化するつもりです。自分のこういう小賢しさは本当に好きになれませんが、それでも僕が勝負できる一番強いカードはこれだと思います。
メリトクラシーという不平等の中で自分が勝てるとしたら、それは加害であり、自分はこれまでもこれからも加害者として生きていきますが、それは僕だけでないと思います。僕が加害者然として振る舞ったり、後ろめたさを感じる必要はないのでしょうか。
均衡が取れたある状態が必ずしも正義/不正義であるとは限りませんが、僕はその均衡点を揺らすことなく、自身の効用を最大化する行為をとっていました。合理的ではあるかもしれませんが、それでいいのでしょうか?
自分はそういう小さい人間だという認識も「諦め」の中に入っています。不平等に憤りながらも、自身はその不平等の上で得をしていることに気づいた青年は、受け入れ落ち込みました。このあとはどうなるのでしょう。
「社会と自分がどう対峙するのか」を明確にするために、また勉強します。まだまだ何も分かってないから、手探りしてるわけで。

実用

オオカミ特許革命

https://amzn.to/3vnC1Qr

これはすごい!知財関係者は必読と言ってもいいと思います。日本の知財のなにがまずいのか?とか知財を活用したビジネスモデルの解説書は多くありますが、本書ではその構造的な問題を指摘し、その対策も具体的に記述されています。
権利行使できる特許とそうでない特許があるのは常識で、それに前者を「オオカミ特許」、後者を「ヒツジ特許」とキャッチーに名付けて事歴を提示するだけではありません。なによりインパクトがあったのは、各ステークホルダーが「権利を狭くする圧力」をかけているという構造的な問題を指摘するところから始まることです。知財法の趣旨に反する、模倣に有利な運用になってしまっているという主張は衝撃的でした。もちろん事例も紹介しますが、明細書や検索書(本書を読むまで存在を知らなかった!)を参照しながら、詳細に吟味しています。そして、「書き方」のテクニックも具体的です。知財実務に就く方には必読と言っていいほどのクオリティだと思います。
知財検定3級程度の知識があればスラスラ読めると思います。分割出願ってこう使うのか!と衝撃的だと思います。 

その他

忘れる読書

https://amzn.to/3Q2gw0X

ベストセラーですね。彼の著作はマッチョなので、読むとやる気がでてきます。岩波読むぞ読むぞという気持ちになったのでノミネート。
本の内容を覚えているうちは著者の主張をリピートしているだけなので、読みまくってミックスしないと自分の思考は出てこないといってます。僕もそう思います。読むぞ読むぞ。

文化人類学入門

https://amzn.to/3Cc9Esq

文化人類学の歴史から、その成り立ちと思想が周辺分野も交え体系的にまとまっています。古い本ではありますが、入門書として適していると思いました。


他にも読んでよかったものがたくさんあるのですが、今年はこの11冊をノミネート。M-1の決勝でもレジェンドが落ちたりするじゃないですか。そんな感じです。

来年は300冊読みます。


この記事が参加している募集

サポートありがとうございます! プレミアム会員になりたいな!