[2021]ヒラマサが読んだ120冊とよかった12冊
飛ばしてもいい前書き
激動と言っても嘘でないほど変化があった割に永遠を錯覚するほど長かったこの1年、僕は「他者の影響を受けず」「自分のコントロール可能な領域で」「定量的に測定できる」行為を積み重ねることで自己肯定感を維持する必要があったのだと思います。今年のKPIは読書冊数です。読みたい本もたくさん読めましたが、「読めそうな本」を選択して読了したことも告白しておきます。しかし、やはり何らかの理由で興味を持って自分が選んだ本は僕を救い、励ましてくれました。偶然でしかないのでしょうが、本が本を連れてきたと思うような、セレンディピティもたくさんありました。冊数で何かを測ることは馬鹿げていると思いますが、無理にでも冊数を増やすことは悪いことではなかったと思っています。
さて、今年は120冊の本を読みました。
(読書メータで記録できたもののみ。雑誌は含まず、漫画は完結で1冊カウント)
この中で特に読んでよかった12冊をまとめます。
ちなみに昨年は78冊を読んで14冊をピックアップしました。変遷が伺えて楽しいかもしれません。
目次:
・生活
・旅
・お金
・小説とエッセイ
・実用
・その他
生活
過去とも未来とも切り離され、一度覚めた夢の続きを考えるように取り留めのない1年でした。自分でいうのもなんですが、僕は割と器用になんでもできちゃうので、「やるべきこと」を「やりたいこと」であると錯覚したまま生きていけるものだと思っていました。自分だけでなく周囲も欺いていたことに気づくと、自分の気持ちがあてになりません。結構落ち込みましたが、変わらず接してくれる周囲の方のおかげで元気になった気がします。
とはいえ、元通りというわけにはいかず、新しい道を模索しなければなりません。背骨の抜けた心にカルシウムを注ぎ込むように読んだ本の中で、軟骨になりそうな本を紹介します。
・ボーダー
転機があるごとに読み返すバイブルになりました。この本のせいでどうでもよくなっちゃったり、線を引いて閉じこもっちゃったような気もしますが。。。
・年収90万円で東京ハッピーライフ
無理をしているわけではなく、自身の幸福を最大化を追求した結果帰着した隠居ライフの実態が綴ってあります。何だか複雑に考えがちですが、この豊かな国ではこういう生き方もできるはずです。凡庸な表現で恐縮ですが、視界が開けるような本でした。好きなことして生きていくなんてハードルが高すぎるから、嫌いなことをして死なない。また読みます。
・スピリチュアルズ
どうしても人間には特性のようなものがあって、無理なものは無理。あるものだけで勝負するしかないという本です。センサーの感度(バカの壁的に言うと係数a)が違うから、同じことをしても快・不快は違って、いくつかに分類することで自分や周囲を理解できる本です。親ガチャも環境ガチャもありますよ。自身を悲観したり他人について何かを感じるときに、誰のせいでもなく歴史の中にあるだけだと諦めがつきました。
旅
旅行けない日々に読む紀行文は自虐的です。しかし、ともすれば忘れがちな旅のときめきや出会いの奇跡と、旅に出る情熱を忘れないために、今こそ読まなければいけないと思います。今年も海外には行けませんでしたが、国内で様々な出会いや再会があり、一期一会を改めて意識するところになりました。
・ガンジス川でバタフライ
「心が旅人なればそれは旅人だ」というあとがきにある通り、自分を縛り付ける考えを捨てて、旅と旅の間の日常さえ慈しむのが旅人だと思います。この1年で感じていた日々の愛しさが見事に言語化されており、マジ付いていきますと思いました。国境が開くのを待ちながら、大切に生活していきます。心を開いて。
・表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
東京を離れ異国の価値観に触れることで彼が気づいたことー自分自身や、普段実は感じていた違和感などーが、逃げずにはっきりと言語化されている。旅をするのはずいぶん簡単になった。違和感を感じたり、違いを楽しむことも難しくない。でも、その時々で感情や思考を言語化するのは簡単ではなくて、きっと彼の頭の中では常に対話が行われているのだと思う。彼のような旅人になりたい。
お金
目標への道のりは希望と絶望を繰り返しながら続くものだとすれば、今年は絶望の1年でした。経済的な自由を得ることは想像を遥かに超えて難しい。今年は、一歩目を踏み出すという壁は超えました。より前に進むためには、これを超克するという誓いと超克できるという確信、そしてこの道しかないという狂信さえもが必要です。今年はまだ具体的な技術には手を出さず、観念的な本を読むに留めました。ポジティブな言葉を摂取し続ける必要があったからです。来年はもっと具体的に頑張ります。
これから挫けそうになった時に再読するランドマークとなった本を紹介します。
・マネーという名の犬
入門書を色々読みましたが、これが1番よさそうです。入門書に書いていることといえば大体金の卵を産むガチョウを育てること、自身の事業を持つこと、自分が本当に大切にしている価値を知ること、自己投資あたりです。この本もそうなんですが、この本のいいところは加えて「借金はゆっくり返そう」と言ってくれるところです。ロバートキヨサキをはじめ、この手の本は子供がお金に興味を持ち資産形成を始めるんですが、両親の借金にまでケアがいくという面倒見の良さが。
・普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門
日本の税制や社会保障を前提に、クールに道のりが説明されています。グラント・サヴァティエもいいですが、どうしても日本とは事情が異なります。「事業を持て」の前に収入上げる努力したほうがいいよっていう提案も現実的です。
小説とエッセイ
・こうふく みどりの/あかの
今年は西加奈子さんを数冊読みました。どれも良かったですが、はじめに読んだ2冊をピックアップ。評論はできませんが、とってもおもしろかったです。「この小説は僕の本だ」と思いました。出版順に、みどりのから読むのがおすすめです。
・並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし
渡辺優さんのエッセイ集。語り口もモノの見え方も考え方も全部好きな作家です。大笑いしながら読みました。冗談ではなく、渡辺優さんが書き続けている限りは生きていこうと思っています。
実用
・こうして知財は炎上する
知財紛争の事例集です。内容もですが、事例選択も含めた著者の視点や語り口もユニークで、これは読み物としておもしろいです。知財の知識が無くても読めるようになっているので、誰でも読めます。これから知財を勉強するという人に1冊目におススメするならこの本です。
・スマホ脳
ベストセラーだけあって面白かったです。スピリチュアルズもそうですが、進化論がベースにあり、人間の原始的な欲求に何がどう作用しているのか?を考えることでヒトやモノとの関わり方を考えており、納得がいくものです。僕は普段からスクリーンタイムが5時間/日を超えるスマチュウですが、脱却すべく最近ツイッターをはじめとしたSNSを読み書きするのを控えてみています。これはこれで楽ですが、今年は特にSNSに救われ、ここでしかない人間関係やセレンディピティの楽しさを知っているので、SNSとの付き合い方も考えていきたいです。
その他
・この国の不寛容の果てに
読了後のツイートを転載します。
事件の凄惨さ、表面化した不寛容、希望の兆しがない未来、そして自分の不勉強・無力感も相まって読むのがしんどかったです。社会を理解し、語るための言葉を持つために勉強しなければと思いました。読むのが苦しかったのは、自身の内に優生思想的なものがあるからだとも思います。頭が良い方がいいし見た目が良い方がいいと思ってしまいます。しかし、それは誰もが持っていても口や言葉にすることは憚られていた気がします。
この国には「生産性」のない者を生かしておく余裕がない、そもそも「自己責任」だから助ける必要がないという国や社会が発し続けてきたメッセージと相まって、「命の選別」が正当化される雰囲気がたしかに今の日本にはあると思います。
もちろん彼の行動は絶対的に誤りであり、全く同情できません。しかし、上述した背景から自分がいつあちら側になるかわからないという恐怖と、そう思う自分への嫌悪感に苦しみました。
もちろん、障がい者や老人への差別的な思想や罵詈雑言の実例、こんなに酷いことを思う/言う、言える人がいるということも苦しみましたし、誰かに刃を向けなければやっていけなくなっている人がたくさんいることには悲しくなりました。
以上が感想のようなものですが、しかし考えがまとまらない。というよりも考えるための知識や言葉やフレームワークがあまりにもない。勉強しないと。自分の言葉で語りたいし、社会をついでに生きるのではなく、対峙したい。
・読まなくてもいいあとがき
ピックアップした以外にも読んでよかった本はたくさんありました。
誤解を恐れずに言うならば、まだまだ僕の読む本は稚拙だと思います。繰り返しますが、今年のKPIは冊数です。でも、難しい本を読めば偉いというものでもなく、僕は僕なりに楽しみ、学び、救われました。それでいいのだと思います。
読書なんて絶対的なものであるべきというのは理想論ですが、量にしても質にしても、読書を測ろうとするのが誤っていると思います。年の区切りなんて意味はないと思っていますが、竹には節があるから強いように、何らかの区切りをつけて振り返ることは悪いことでなく、変化の起点にも継続のマイルストーンにもなります。去年まとめたので、経過観察的に今年もまとめてみましたが、今年の僕がそうだったように来年も今年読んだ本を懐かしむのでしょう。読んだ本を振り返ることでまだ読めていない積読を想います。
久しぶりのアウトプットなので、ついでに色々なことを書きたくなってしまいます。最近の旅のこと、美味しかったもの、感動したこと、新しい出会い、心境の変化など。
ご心配おかけしていますが、僕は元気です。心にはたぶん可塑性があって、元通りというわけにはいきません。より悲観的に見えたり、ひねくれてみたりしてしまうのでしょう。今年は、本は鏡だという言葉を実感しました。来年も、色々な本に自分を映して、変化する心境とともに日々を楽しみたいと思います。世界と対話し、自分を知るスリリングな旅は楽しいです。僕は楽しく生きています。
皆様もよいお年をお迎えください。あとがきまで読んでくださって、ありがとう。