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大切な人を亡くした後のスケジュール(~3か月まで)

 大切な人を亡くした後、残された家族には膨大な量の「相続手続き」が待っており、悲しみに暮れる暇もなく、膨大な手続きに追われます。しかも通常は「相続手続き」なんて不慣れな手続きで「何をすればいいかわからない」不安な状態。この中、追い打ちをかけるように「相続税」が課される場合もあり、しかもこれらの手続には期限があります

 私は今までnoteを中心に、相続税を含む税金関連を中心に投稿してきました。その「延長」で今回は将来への不安な状態を少しでも解消すべく「相続税の入口部分」を交通整理しました。
 具体的には当noteの説明対象を、大切な人を亡くした後「3か月まで」とし「税金以外の分野」を説明。そして続編『4か月~10か月まで』は「相続税を中心とした税金分野」を説明していきます。


 当noteでは税金の「ぜ」の字も出てきませんが、相続手続き全体の中の「相続税」が把握できるように編集しましたので、当noteの続編『4か月~10か月まで』(近日公開予定)と併せて読んでいただけると嬉しいです。

1.葬儀の流れ(死亡直後)

 医師もしくは警察による死亡確認後(臨終)、訃報の連絡、葬儀社の準備に入ります。葬儀は、通夜、葬儀式、告別式、火葬までを包括する言葉として使われます。
 では、下図①の葬儀の流れを個別に見ていきましょう。

図①:死亡確認後(臨終)、訃報の連絡、葬儀社の準備に入ります。

1-1.臨終

 医師もしくは警察による死亡確認です。病院で亡くなった場合は、医師が死亡確認を行い、霊安室に運ばれます。自宅などの病院以外の場所で亡くなった場合は、かかりつけ医に来てもらうか、救急車を呼び、突然死や事故の場合は警察にも通報する必要があります。

1-2.訃報の連絡

 電話で行うのが最も迅速で確実です。伝える内容は、自分が誰であるか(個人との関係)、いつ亡くなったか、葬儀の日時・場所・形式、喪主の名前と間柄、連絡先などです。

1-3.葬儀社との打ち合わせ

 斎場は、葬儀や火葬を行う場所で、公営(低価格で、なかなか予約がとりにくい)と民営(高価格で、設備等が優れている)があります。まず葬儀社と連絡を取り、打ち合わせの中で斎場を選びます。

1-4.通夜

 夜通し灯りを消さずに遺体を見守る儀式で、現在では「半通夜」が多くなっています。

1-5.葬儀式・告別式

 同日に行うことが多いです。葬儀式では読経(お経を読むこと)を主として、告別式では弔辞(亡くなった方を弔うスピーチ)や焼香が主とされています。

 ちなみに多くの斎場では「友引」を休業日としています。日本の暦において、その日の運勢を示したもので、大安・友引・先勝・先負・赤口・仏滅がありますが、友引に葬儀を行うのは「友を冥土に引く」という理由から不吉とされています。

2.死亡届の提出(7日以内)

 死亡届は、役所の窓口やホームページからも入手可能ですが、一般的には、死亡した病院の医師や警察委託の医師から入手することになります。提出先は、故人の本籍地、届出人となる人の住所地、もしくは死亡した地のいずれかの役所になります。

図②:死亡届の提出は亡くなったことを知った日から「7日以内」です。

 死亡届とは、死亡の事実を市町村の役所に届け出る手続きです。死亡届はA3サイズで、左半分が死亡届、右半分が死亡診断書(死体検案書)となっています。
 亡くなったことを知った日から7日以内に提出する必要があり、期限以内に提出していない場合、5万円以下の過料が科されます。

図③:死亡届のサンプルです。

3.保険手続き(5日以内と14日以内)

 保険手続きは、健康保険に加入していた会社員が亡くなった場合と、国民健康保険に加入していた自営業者等場亡くなった場合で、手続き先が異なってきます。

図④:会社員と自営業者等で保険手続は異なってきます。

3-1.会社員が亡くなった場合の健康保険の手続き等

 会社員が亡くなったときの保険手続ですが、勤務先は亡くなった日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」を提出する必要があるため、速やかに勤務先に連絡することになります。
 また亡くなった翌日より、故人の保険証は使用できなくなります。故人に扶養されていた家族は、別の家族の不要に入らない限り、国民健康保険への切り替え(加入)手続きを行う必要があります。
 他にも年金。遺族厚生年金等の受給が可能になる場合もありますので、チェックしましょう。

3-2.自営業者が亡くなった場合の国民健康保険の手続き等

 自営業者等が亡くなった場合は、亡くなった日から14日以内に「国民健康保険資格提出届(国民健康保険被保険者異動届)」を故人の住んでいた市区町村役場に提出しなければいけません。
 また保険証の世帯主欄を変更するためには、世帯主の変更届を行います。世帯主を変更すると、新しい世帯主宛に郵送で、新しい保健証が送られてきます。

3-3.葬儀費用の負担を軽減するための給付金もあります

 故人に生計を維持されており、埋葬を行う方に、埋葬料として一律5万円が支給されます。故人が健康保険の被保険者の場合には「埋葬料」、国民健康保険(または後期高齢者医療保険)の被保険者の場合には「葬祭費」という名称になり、給付を受けるためには申請が必要になります。
 申請は、亡くなった日(親族でない方が申請するときは埋葬をした日)の翌日から2年で時効となりますので、忘れずに手続きをしましょう。

4.各種届出書提出(10日以内と14日以内)

 故人が年金を受給していた場合、国民年金の場合は14日以内、厚生年金の場合は10日以内に、受給停止の手続きをしなければなりません。

「亡くなったはずの両親の年金を何年間も不正受給していた」

・・・というニュースが流れることがありますが、死亡届を提出していないと、本来もらえないはずの年金が支給され続け、後々問題になることがあります。
 また世帯主が亡くなった場合には、「世帯主の変更届」が必要です。期限は14日以内とタイトです。なお世帯を代表して行政的な手続きを行う人のことを世帯主といいます。

図⑤:年金受給停止の手続きを忘れずに!!

 ちなみに日本年金機構にマイナンバーが収録されている方は、役所に死亡届を提出することによって、その情報が年金事務所にも共有されているため手続きは不要です。
 マイナンバーが収録されていなかった場合には、下図⑥の「受給傾斜死亡届(報告書)」に必要事項を記入し、故人の年金証書と死亡診断書のコピー等を添えて、年金事務所または年金相談センター等に提出します。

図⑥:受給傾斜死亡届(報告書)の記入用紙。

 逆に「もらう側」の手続きとしまして「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」があり、残された方の家族構成や収入状況に応じて支給の有無が決まりますが、詳細説明は割愛致します。

5.四十九日法要と香典返し(49日後2週間)

 仏教では、人は死後四十九日後に仏様のもとへ旅立つと考えられています。法律上、納骨の時期はいつでも良いこととされていますが、一般的には四十九日法要と一緒に行うことが多いです。
 そして香典返しは、四十九日法要後、2週間以内に行うのが一般的です。

図⑦:香典返しは、四十九日法要後、2週間以内に行うのが一般的です。

 なお葬儀後に行う主な法要は次の通りです。
・初七日・・・死後7日後(亡くなった日を含めて計算する)
四十九日・・・死後49日後(亡くなった日を含めて計算する)
・一周忌・・・死後満1年目
・三周忌・・・死後満2年目
・七周忌・・・死後満6年目
・十三周忌・・・死後満12年目
・三十三周忌・・・死後満32年目

 なお納骨のお話が出てきましたので、散骨のお話も。個人ゆかりの海や山に遺骨をまく散骨は、法律上は禁止されていません。が、観光地や私有地など、散骨が禁止されている場所等、特に注意が必要です。遺骨をそのままの形で私有地などに散骨して、刑事事件にもなれば洒落にもなりませんよね。

6.相続財産・債務の調査と相続放棄(3か月以内)

 いよいよ今回の最後「相続放棄」のスケジュールです。この時期になると故人の遺産の問題も出てきます。相続放棄は、相続人1人で行うことができ、手続きもそれほど複雑ではありません。しかし相続放棄ができる期限は、相続の開始があったことを知った日から3か月以内とされており、非常にタイトなスケジュールとなります。

図⑧:相続放棄ができる期限は非常にタイトなスケジュールとなります。

 以下、上図⑧の①~⑤の手続きの流れに沿って説明していきます。

6-1.相続財産の調査

 通常、相続放棄は故人がプラスの遺産よりも、マイナスの遺産を多く残したときに行います。そのため、相続放棄の手続きをする際は、まず遺産の状況を正確に調査することから始めなければなりません。

6-2.相続放棄申述書の郵送

 遺産の状況を調査した結果、マイナスの遺産のほうがプラスの遺産より多いことが分かった場合、相続放棄を検討します。相続放棄をするには、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述(申し立て)しなければなりません。

6-3.届いた照会書への回答

 相続人が相続放棄の申述を行うと、手続き先の家庭裁判所から照会書が送られてきます。照会書とは「故人の遺産の内容をどのくらい把握しているのか」「なぜ相続放棄をするのか」等、家庭裁判所側が、相続放棄の要件を満たしているか確認するために行います。
照会書の質問事項に回答したら家庭裁判所へ返送します。

6-4.相続放棄の要件の判断

 照会書を返送した後、家庭裁判所で相続放棄の要件を満たしているか否かの判断を行います。

6-5.相続放棄申述受理通知書の受け取り

 家庭裁判所で相続放棄の要件を満たしているか否かの判断を行い、問題なければ相続手続きが受理され、相続人のもとに相続放棄申述受理通知書が届きます。

 ちなみに、故人の遺産を少しでも自分のために使ってしまうと、その相続人は相続放棄をすることができなくなります。故人の遺産の管理には細心の注意が必要ですよね。

 以上、いかがだったでしょうか。将来必ず発生する相続の手続き。「何をすればいいかわからない」不安な状態に対して当noteが少しでも不安解消の材料になれば幸いです。
 次回は続編『4か月~10か月まで』は「相続税を中心とした税金分野」を説明します。

図⑨:次回予告ですが、「ガッツリ」税金に入っていきます。

【参考書籍】
・福田真弓『自分でできる相続税申告』自由国民社、2023年6月26日。
・橘慶太『ぶっちゃけ相続』ダイヤモンド社、2023年5月16日。
・橘慶太『ぶっちゃけ相続・手続大全』ダイヤモンド社、2021年12月7日。
・北本高男『基礎から身につく財産評価』大蔵財務協会、2023年8月4日。
・北本高男『基礎から身につく相続税・贈与税』大蔵財務協会、2023年6月20日。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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