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問題なのはフードロスじゃなくて、いつまでも変わらない自分たちなのかもしれない。

食の学び舎「フードスコーレ」で、「Foodloss&Waste(FLW)」をテーマにしたプログラムをスタートさせようと思っています。(あー、ついに書いてしまった)

フードスコーレのプログラム = リアルやオンラインで行う授業のこと

仕事や学校でFLW について何かしたい、だけど何をしてよいのかわからない! という方。食に興味があって FLW についても一度ちゃんと探求してみたい方。そして僕と同じように、最近の FLW に対する世間の取り組みに「なんか本質的じゃないよね」とギモンを持っている方。そんな方たちには、とくにぴったりなプログラムにしたいなと計画中です。

プログラムでは、「FLW はなんで起きるのか?」を改めて見つめ直して「じゃあ、FLWとどう付き合っていく?」を考えていく。つまり、自分にとって「FLWってどうあるべきか」を考えることで、新しい暮らしの選択肢を見つけてみたいのです。

もともと僕は、2016年に「一般社団法人フードサルベージ」を立ち上げ、「サルベージ・パーティ(サルパ)」を通して「そもそもフードロスってなによ?!」と、イベントや講演、学校での授業やメディアでいろいろと発信してきました。

サルベージ・パーティとは
Foodloss&wasteをたのしく啓発するための体験型クッキングイベント。これまで多くの自治体、企業、団体にて開催され、のべ10,000人が参加。オンライン型クッキングイベントや、レシピ開発など関連コンテンツにも派生。

サルベージ・パーティWebサイトより

関連動画:

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コロナ禍に入ってサルパを自粛(残念)。一方で、食の学び舎「フードスコーレ」を仲間とスタート(ワクワク)。FLW 以外の環境課題や食そのものへの興味から、自分の中では FLW について探求したり発信していくことは「もういいかな」となっていたんです。

そうなった一番のワケは、FLW が「ファッション化」してしまったから(日本では「食品ロス」という言われ方で)。僕の肌感ですが、2017年から2019年までは「FLW」といえば、食環境の中では流行りのど真ん中でした。当時は講演や企業研修、プロジェクトの相談など依頼や問い合わせがめちゃくちゃ来ました。

(当時流行になっていたと書いたのは、いまは少しずつ注目が薄れてきているため。そんな今だからこそ、周りに流されずにじっくりとこの問題に向き合うベストタイミングだなと)

そうした流れがあったからなのか、じぶんが取り組み始めたころから比べると、「食品ロス」という言葉の認知度は上がってきているようです。

食品ロス問題を知っているか聞いたところ、「知っている」と回答した人が 80.9%(「よく知っている」23.1%+「ある程度知っている」57.8%)であった。一方で、「知らない」と回答した人が 19%(「あまり知らない」12%+「全く知らない」7%)であった。

調査対象:全国の満18歳以上の男女5,000人
調査時期:令和4年3月

令和3年度 消費者の意識に関する調査 結果報告書(令和4年4月)より

これはこれでいいことなんだろうけど、こうしたときに起こるのは言葉の独り歩き。食品ロスも例外ではなく、食べものを廃棄すること=悪いこと、やってはいけないこと。そんなイメージが世間に根付きましたよね。

いや、これ間違いではないんですよ。食べものを棄てることはできるだけ避けるべきだし、気持ちの良いものでもないです。だからといって、廃棄を無くすことがどんなことにも優先するようなことなのか? というと、そこはギモンが残ります。「わかって棄てる」というのも、僕はあると思います(ここはセンシティブなことで、新しいプログラムでは「棄てる」という人間の行為にも向き合いたいと思います)。

賞味期限が近づいた商品の割引セールとか、SNSをつかった特売の宣伝とか、近ごろは商売として「食品ロス削減のために」と商品の販売促進をしているのをよく見かけます。これって、本末転倒すぎやしないかい?

企業のこうした動きは全面的に悪いわけじゃない。実際、廃棄は減るワケですし。でもRecycling や Reuse だけじゃなくて、本質的には生産や流通を再デザインするようなReduce こそ大事です。

ほかにも FLW のことには、モヤることがたくさんあるんです。企業の取り組みだけじゃなく、僕ら人間の営みとしての問題。みなさんはどうですか?

・コンビニでよく見かける「食品ロス削減!」のPOP.
・スーパーに閉店になってもたくさん並んでいる野菜.
・SNSで流れてくる「廃棄になるから買って!」という宣伝.
・人間だから、そりゃ食欲や購買欲はやっぱりある.
・心理的な負担なく、簡単に食べものを棄てられるときもある.
・ゴミを「汚い」と思う. 食べものとゴミの差って?
・Reduce(つくりすぎ)のことは取り上げないメディアの姿勢.
・廃棄前の食材の安売りは、市場が縮小しない?
とか

認知するフェーズから、あり方を考えるフェーズへ

FLW のこと「もういいや」となってからは、一度傍観したくなったんです。そういう意味でも「フードスコーレ」という食の学校を始めたのは、とてもよいタイミングだったなと。大学教授、研究者、クリエイター、生産者、料理人とかいろいろなジャンルのプロフェッショナルと出会って、お話しして食を探求できているのは、本当に学びが多いんです。

フードスコーレをはじめて2年以上が経ったこのタイミングで思ったのは、 FLW に対して世の中が「次のフェーズ」にいよいよ入りそうだなと言うこと。

FLW への本質的な対応策は、いまの「つくりすぎ」を見直すこと。だけど、取引先や消費者のことを考えると、短期的利益を追う企業の中でインパクトを持って取り組むのはむずかしい。

生活者としても、「もったいない」という感情的な想いのみで FLW と向き合うのは楽なんだけど、そうすると「廃棄しちゃいけない」が何よりも優先しかねない。「もったいない」だけで思考を停止させるのではなく、その先に踏み込んでみたい。

廃棄や衰退にはマイナスなイメージがつきまとう。だけどゴミもリサイクルすれば資源に変わり、新たな価値を生む可能性もある。生命活動の循環に思いを馳せれば、廃棄が不可欠なプロセスであることも見えてくる。

ケヴィン・リンチ著『廃棄の文化誌』より

むずかしいことだけど、僕らはFLW について、今一度向き合うべきなんだと思います。

FLW はなぜ「ある」のか。

FLW を存在させているのは間違いなく人間です。廃棄物を生むのは、生き物のなかで人間だけ。

食べものを棄てることよりも優先したいことって、いろいろあるんだと思う。棄てるという行為の理由や気持ちについて考えておくと、先に挙げたようなモヤモヤが少しは晴れそうじゃないですか? 「人間ってこういうとき棄てるよね」って。

農水省や環境省が発表する毎年の食品ロス量の推計。この量は毎年減っていて、2020年の推計だと522万トン。この数字だけを見ていても、「誰かがやっているスマホゲームのスコア」のような話で、僕なんかは「ふーん」ってあまり興味が湧かない。

FLW が増えたとか減ったとか、正義か悪かとか、考えればいいのはそういうこと「だけ」じゃない(それを考えることは大事です)。食べものの廃棄はそこに確かに「ある」んです。それが事実なんです。

だから新しいプログラムでは、人の営みによる棄てる、使う、回すといった FLW の上位概念も考えたいなと思っています。

・棄てるってなに?
・もったいないってなに?
・有用性のない食べものでも、棄てるのはもったいない?
・棄てたことで「気持ちいい!」と思うこともあったりするよ。

新しいプログラムでは、そのことについてもみんなでじっくりと考えていきましょう。

(あ、一応書いておきますと、食べものを棄てることでの環境負荷はできるだけ減らすべきだと思っています。ただ人間は「棄てる」生き物なので、そのことに一度向き合った方が良さそうだよね、という話です)

テーマは、「FLWのあり方を考える」

このプログラムでは、「これからの FLW のあり方」をテーマに、みんなでリアルに集まって行う勉強会スタイルにしようと絶賛企画中。これを書いている11月末の時点で、企画もいよいよ大詰め。もうすぐみなさんにご案内できる予定なので、もう少しお待ちください。

テーマにおける「問い」を自分で立てて、文献を読んだり、ディスカッション、フィールドワーク、ゲスト講師から聴く話をもとに、プログラムの最後には探求したことを発表してもらおうかなと考えてます。

なので学びの主体はみなさん自身!(そうじゃないと学んでいてもおもしろくないでしょ?)いわゆる学校の授業のように、机に座って先生の言うことをノートに書き写す、というようなスタイルは考えてないです。

だからといって、これまで FLW についてゴリゴリに向き合ってきた人じゃないと「ついていけない!」というのも良くないと思っていて、はじめて学ぶ人もそれなりの負荷で(それなりのねw)学べる工夫は考えていますのでご安心ください。

「フードスコーレ」って?

最後にフードスコーレについて少しご紹介します。フードスコーレは、食にまつわることをテーマにした学びの場です(そのまんまだ)。

Food(食) + skole(学校)=フードスコーレ

2020年4月の開校以来、食にまつわる色々なテーマでプログラムをつくってきました。

たとえばこんなテーマがありました
・アイスクリームとトレーサビリティ
・味わうとは何か?
・食の編集者養成クラス
・愛知県碧南・岡崎の醸造フィールドワーク
・「食と環境」を考えるコース
・「食欲」について考えるコース
・食と農のプログラム in 茨城県小美玉市
・好きな調味料と出会うプログラム(醤油 / 味噌 / みりん / 調理酒)

など。このほかにもたくさんのテーマを取り上げてきました。これを読むだけだと内容がわかりづらいかもしれないけど、参加された方たちから、「そこ気づかなかった!」とか「そんなふうな見方あるんだ」と食に対して新しい発見があるのがおもしろいと言っていただけています。そのことは僕らもとてもうれしい感想です。

プログラムの内容に合わせて、オンラインまたはリアルで実施し、中には生産現場や市場を訪ねて、現場の人に話を聴いたり現地取材もやってきました。1日限りのプログラムもあれば、数か月に渡って行うプログラムもありましたね。

スコーレメイトの中で農作業に興味のある有志で立ち上げた「フードスコーレ農園部」では、野菜やお米を育てたりもしています。

それぞれのプログラムには、その道のプロフェッショナル、研究者をゲスト講師として招いて、色々なことを僕らに教えてくれたり、学びをサポートしてくれています。そうした方たちをフードスコーレでは「案内人」と呼んでいます。食を中心に広がる世界をみんなでたのしく探検する。その水先案内人のようなイメージですね。

さて、ここまで読んでいただきありがとうございます。すこし長くなっちゃいました。FLW には長く向き合ってきたもので、書きたいことが溢れちゃいました。プログラムの中では、僕からみなさんに提供できるものはどんどんお渡ししようと思っています。逆に僕はみなさんから色々なものを受け取るつもりでいます。みんなといっしょに、たのしく学べたらと思っています。

問題なのは FLW じゃなくて、いつまでも変わらない自分たち自身なのかもしれない。

詳細はフードスコーレのウェブサイト、SNSで12月中旬ごろにご案内します。SNSのフォローお願いします!

フードスコーレ
・ウェブサイト
https://foodskole.com/
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