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棒アイドル #毎週ショートショートnote

男はヒットメーカーだった。
手掛けた歌手やグループはたちまち人気になり、
次々と時代を彩る国民的スターやアイドルが生まれた。


しかし彼は今、辺境の地を転々としひっそり暮らしている。
周りはもちろんそれを黙っていない。
皆、彼の才能が欲しくて目撃情報があればすぐさま後を追った。

「先生、探しましたよ!で…これは一体何を?」

「また来たのか。懲りないねぇ。俺はもう時代に搾取されるのはやめたんだ。
見ての通り、その辺に落ちてた棒を削ってるだけだよ」

「またまた!何か構想されてるんですよね?アイデアをお聞かせ下さい!」

「先生の手掛ける次世代アイドルを待っているんです!」


「いい加減にしてくれ。あんた達、その眼鏡を外して世界を見てみろ。世の中にはもっと素晴らしいものがある。
まぁ、この棒もいわば"アイドルの卵"か。
アイドルってのは偶像だ。偶像はもともと木や土で作ったただの像だからな。
そう考えれば、こいつは今の俺にとって一番輝いている"アイドル"の原型かもな」

男はそう言って笑いながら再び木を削り始めた。



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