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【風呂酒日和151-2】 わたるべ

【風呂酒日和(フロサケびより)】
どこかで銭湯を見つけると、つい寄り道したくなる。
銭湯から出ると、つい一杯飲みたくなる。
そんな私がふらりと立ち寄った、心と体とお腹を満たす、銭湯と居酒屋をまとめたマガジン。


銭湯を出てチェックしていたお店の方に歩いていく。
わ、なんかものすごく細い建物がある!こういう道の間とか三角地みたいなところに建ってる面白い形の建物、好きなんだよなぁ。ここが...めざしていた「わたるべ」だろうか。

と、思ったらどうやら看板を出していただけでここから右に曲がるらしい。細い建物を正面にして右に曲がると再び赤い看板が見えた。ここだ。

ドアを開けるとカランカランと音がする。
入口からは店内は見えず、奥に続く通路には釣り竿がずらり。おお、すごい...。これで釣ってきました的な…?

中に進んでいくと店員さんが現れ「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。

「1人です」

「じゃカウンターどうぞー」

店内はちょっと変わったつくり。
ドア開けてさっきの釣竿ゾーンを歩いていき右に曲がると席が現れる。カウンター席と段差のある小上がり、の上にテーブル席が並んでいる。昔座敷席だった場所を改装したという感じだろうか。


小上がりテーブルには夫婦っぽい男女が1組、カウンターにはおじさんが1人。おじさんの2つ隣のカウンターに着席する。

「飲み物、何にしますか?」

メニューをちらり。「瓶ビール...えーと赤星で!」

「はい」

「あとお水を一杯いただけますか?」

「はーい」

今日はアツアツサウナ入ったしね。ちゃんと水分もとっとこう。
すぐにお水と赤星が到着。「本日のおすすめは壁のボードを見てください」とのこと。金目鯛のお造り、天然生牡蠣、沖縄産コクハン?あら造り?(あとで調べたらコクハンアラという魚だったらしい)、真鯵に自家製あん肝、カツオ、サザエ、ホヤまである。1人で頼むにはなかなかいいお値段のものも。ふーむむ、どうしよっかなー。

「はいお通しね」

悩んでいると厨房のマスターからお通しが到着。なすの味噌和えだ、早速一口。こっくりうま〜。


なすをつまみながらビールを進めつつグランドメニューも眺めてみる。
こちらは焼き物、揚げ物、煮物などのラインナップだ。どれも魚介系推しで惹かれる。お、イカゲソ焼きいいなぁ。
たらこ焼きもにんにく焼きも好き好き、ホタテ漁師焼きも気になる。なんだか今日は焼き物が食べたい気分かも。
揚げ物欄には牛肉コロッケやメンチカツ、若鶏竜田揚げなどお肉類も豊富だ。煮物には里芋田舎煮、がんもの煮物などホッとしそうな文字が並んでいてこれも捨て難い。あーー悩むな...。
サラダも魅力的だし、汁物なんて味噌汁だけで4種類もあるのが素敵すぎる。赤だし、魚のあら汁、しじみ、豆腐。いや全部好き〜。つまり味噌汁ラブ。悩みながらもとりあえずイカゲソ焼きを注文。
たまにはあったかいものから始めてみましょう。

「お会計おねがーい」

「はい、ありがとうございます!」

テーブル席にいた男女からお会計が入った。常連さんのようでマスターと親しげに話している。

「いやぁ、新子うまかったよぉ、今はどっからとれるの?」

「やっぱり東京湾が主流ですねぇ」

「おいしかった〜つるつるしてて、最高だった!」

なるほど...どうやら新子は今が旬っぽい。(※8月に行きました)
ところで新子とは?と思って壁のボードを見る。
あった、これだ。小肌の稚魚らしい。メニューにあったのは新子の酢締め。にゃる...酢締めかぁ。
光り物、好きだけどサバや小肌(というよりはやっぱりお酢)がそんなにラブではないのでしばし考えることに。
お酢もレバーもなんだか無性に食べたい!って思う時もあるんだけど、今日はどうやらそのターンではないらしい。

「はい、イカゲソ焼きでーす」

次なる一手を悩んでいるうちにイカゲソ焼きが到着。
わわー鉄板焼き!パチパチ!(焼けてる音じゃなくて心の中の拍手音)
ハンバーグやステーキが乗ってくるような楕円形の木の台座(?)にこれまた楕円の黒い鉄板。長め太めの逞しいイカゲソが香ばしい匂いといい音を立ててやってきた。
うまそう。さっそくいただきます!ぱくー。
ふぁっ...うんまい!ぷりっといい歯応えのイカに醤油ベースのシンプルな味付けがよく絡まっていてこりゃあいいアテ。
醤油が焼けた匂いって神がかってるよね。匂いだけでご飯食べれそう。

イカのゲソとか耳とか末端のコリコリしているところが好きな私。姿焼きとかワタ焼きも好きだけど、もしかするとゲソ焼きが一番好きかも。耳焼きはさすがにないからね。耳だけで一皿分集めるのはなかなか難しい。
ちなみにイカには耳という器官は本当は存在せず、あの「耳」はパンの耳的な「耳」と同じで、耳ではない耳らしい。エンペラとも言う。
以前富山県のホタルイカミュージアムに行ったので、イカにちょっとだけ詳しくなりました。


イカゲソをもむもむ食べながら、再びメニューを眺める。
うーん、なにかもう一品...。あら、裏はお食事メニューが満載ではないか。
ごはんものだけで裏面一枚、しかも全部おいしそう。
お茶漬け7種、雑炊4種、おにぎり5種に漬け丼やばらちらしなどの丼もの、お刺身定食っぽいお膳系メニューもある。

え…いいかも。今日はゲソ焼きとナスでお酒を楽しみ、〆ごはんにする?ありあり。すごいあり。どうやら私、結構お腹減ってたみたいだ。
とはいえどのご飯ものに行くかも悩みどころ。第一候補はお刺身三点盛りとご飯、小鉢、味噌汁、おしんこ、ソフトドリンクまで付いてくるお造り膳。または真鯛の漬け丼。こちらもおしんこと味噌汁付き。
メニューにあるとついつい頼みたくなる焼きおにぎりも気になるし…何気に惹かれるのは雑炊。しかも五目、もずく、牡蠣、カニ、とぜーんぶ美味しそう。惹かれるってことは体があったか雑炊を欲しがってるのかもしれない。
どれだけ気温が暑くてもサウナにも行きたいし、どれだけ汗ビチャになっても顔はザリザリ乾燥気味になったりもする。表面の体感と体の中が欲しいものって案外違うのかも。
では本日は体の声を聞け!ということで、ビールでイカ焼き、牡蠣雑炊で〆にしましょう。一番最初に生牡蠣頼もうか悩んでいたし、一石二鳥かも。

壁のボードに牡蠣はあったものの、一応グランドメニューの牡蠣雑炊には(季節限定)と書いてあったので、マスターに聞いてみる。

「あの...牡蠣雑炊ってできますか?」

「はいできますよー」

やった!マスターがもう1人の店員さんに言ってなにやら水槽から「それじゃない」なんて言いながら牡蠣を取り出している模様。
これ、生で出すはずの牡蠣を雑炊に入れてもらえるんだとしたら贅沢すぎませんか...?いいのかしら。贅沢すぎてもはや罪深い。


店員さんとマスターはもしかすると、親子だろうか。師匠と弟子、みたいな感じ?いや...多分、親子な気がする。
息子さん、髪型とかメガネの感じがうちのお兄ちゃんにちょっと似てるなぁ。髪が固くて強めでいくら伸ばしても重力に逆らってタワシみたいになる超直毛タイプの髪質とか。(タワシとか言ってごめんなさい)
あの髪、踏むとめちゃくちゃ痛いんだよね。昔実家で兄の短髪がトゲのように足に刺さって悶絶したことがある。でも私ももれなく直毛なので、短髪にしたら同じ髪型になるんだろうな…。


「そろそろ雑炊あがるよー」

厨房からマスターのそんな声が聞こえてきた。
ふむふむ、ではテーブルを整備しましょう。雑炊ってことはちょっと小さめの土鍋か浅めのどんぶりっぽい感じでくる系かな...。
となると、こいつはよけといた方がよさそうだ。鉄板で来ていたイカゲソ焼き、残りの数本を小皿に移して鉄板を空ける。よし、雑炊スタンバイ、おっけーです!

「はい、おまたせしましたー」

...和だ。え〜素敵!想像とは違うなんともお淑やかな雑炊が出てきた。しかもめちゃくちゃ美味しそう...!
これはこれは...ようこそいらっしゃいました。(何)

お盆を真ん中に鎮座させて、まずはレンゲで汁を一口。
あっあーーーーーー!(昇天した) 出汁…うま…。
そうだ、雑炊ってこういうのだよね。そういえばここ最近、家で雑炊っぽいものを作る時は味噌汁もどきみたいななんちゃって雑炊しか作ってなかったかも。本来の雑炊を思い出すような姿勢を正したくなる味。

具材もたっぷりで嬉しい。大根、人参、卵に三つ葉。あ、しいたけも。茶碗蒸しの中を探るようなワクワク感。そして、さらに下に方に牡蠣と米が潜んでるんですよね?最高や…。

ここ多分、確実にお刺身が美味しいはずだ。今日はたまたまいただかなかったが、今度友達と来よう。大きな幸せは1人よりも誰かと味わって分かち合いたい。
汁を飲む度に感動しながら、ついに牡蠣に到達。ほふほふ、うんま。
うん、これやっぱ茶碗蒸し的な楽しさだ。はい、牡蠣どーん!じゃなくていっぱい具材がある中でさりげなく牡蠣も入ってる奥ゆかしさがよい。器は小ぶりに見えたけどご飯もたっぷり、食べ応えもあって最高だ。


ラストオーダーの時間が来た。雑炊の美味しさに感動してお店に貢献したくなってしまい、つい酎ハイを注文。(言い訳)
汗をかきながら雑炊を食べ、そこに酎ハイをごくごく。あぁ至福。体を燃やす雑炊〆ごはん、大正解すぎた。

店内はいつの間にか私だけになっていて閉め作業を進める様子を見て、味わいながらもわたわたと食べる。
そして店員さん2人の関係はやっぱり親子だろう。お客さんがいる間はマスターが厳しめというかちょっとピリっとした空気感で話していたので違うかなと思ったけど、人がいなくなってからふとマスターが話しかけた「明日は天気荒れてねーな」という言葉に、無視までいかないけど特に返すでもなく仕事に徹しているのを見て彼は息子さんだろうなと確信。
親子って会話が途切れたり片方が返さなくてもなんとなく成り立つ空気感があるよね。他人だとえっ...と思ってしまうような場面でもそんな感じが一切せず、むしろ店じまいでオフになり始めたアットホームさを感じる。

夫婦もそうだけど家族でお店をやるって大変だよなぁ。親子でしかも同性だと特にそうかもしれない。
なんて、すみません。考察してないで私も早くおいとましなければ。
お腹いっぱい、今日も幸せだ。ごちそうさまでした。

【わたるべ】
住所: 〒115-0043 東京都北区神谷1-30-1
電話: 03-3913-0148
アクセス: 東京メトロ南北線「王子神谷」駅下車、徒歩4分


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日野笙 / Sou Hino
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