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「名代富士そば」の頭文字はN。

チェーン店などがあまりない田舎に住んでいた私が、ファストフードに慣れ親しむようになったのは主に大学に入ってからだと思う。
マクドナルドやロッテリア、ケンタッキーなどは昔から目にしていたものの、高校時代はもっとローカル感のあるうどん屋さんやちょっと変わったカレー屋さんなど、なかなかニッチなお店をお気に入りとしていたため、朝マックを初めて経験したのも大学生になってからだった。


初めて朝マックを食べた時のことはよく覚えている。
大学生になり、私は「これがみんなが食べてる噂の(?)朝マック...!」なんてちょっとときめきのような気持ちを抱きながら挑んだのだが、朝はバンズがイングリッシュマフィンに変わるということもポテトがハッシュポテトとやらになることも知らなかったため「なんじゃこの粉々こなこなしたパンは...!」「いつもはあんなにいっぱいあるポテトが朝はたったこれ一枚...?」なんて驚きとともにちょっとしょんぼりしたことを覚えている。
「朝マック、たいしていいもんでもないな」なんて朝だろうと食欲旺盛だったその当時の私は思った。
今でこそハッシュポテトだけ食べたいな〜なんて思う時もあるのだが。
あれにはあれの美味しさがあるというのを後に知った。

そんな私が大学時代に出会ってから、今でもよくお世話になっているファストフードランキング第一位の店は富士そばだと思う。

富士そば。どこにでもあってすぐ出てきていつも美味しい。
安くても高くても蕎麦はいつだって大体美味しいと信じている私は出汁好きなこともあって、よくお蕎麦屋さんに足を運ぶ。


そんな馴染みのお店だと思っていた富士そばなのだが、私は先日今まで富士そばに関してとんでもない勘違いをしていたということに気づいてしまった。

みなさんは、お店の看板に書いてある「富士そば」の前の赤い文言を思い出せるだろうか。
「名代」である。

名代って、明確に意味をわかっていたわけではないがなんとなく「昔からの〜」とか「言わずとしれた」とか、名高い、"といえば"的存在、というような感じだよねとふわっとしたイメージで捉えていたのだが、問題はその読み方である。


それに気がついたのは、先日街を歩いていて偶然富士そばの前を通り過ぎた時だった。
何の気なしに入口ののれんを見た私は「ん?」と疑問に思う。そこにはアルファベットで富士そばのスペルが書いてあった。

…なんか今、Nって見えたな...。

そう思った私は振り返ってのれんに書かれていた文字をよく見た。

NADAI FUJISOBA


なだい、ふじそば...。
文字を読んで、私は再び何食わぬ顔をして道を歩き続けながら心の中で叫んでいた。


えぇぇ〜!!「名代」って「なだい」って読むんだ...!


私、今までずっと「めいだい」だと思ってた...。
これまでに口に出して言ったことはなかったかもしれないが、ずっと何も疑うことなく「めいだい」だと思い込んでいた私は、なんだかとても恥ずかしい気持ちになるとともに「なだいって...みんな知ってる言葉...?私だけずっと勘違いしてたの...?」と疑問に思った。


そこで私は同僚にこの「名代」の認知度を確認することにした。
サトウさん、はちょっと頼りにならないので(失礼)他の人に聞いてみる。

「あの富士そばの前に赤い文字で書いてある言葉、なんて読むか知ってます?」

「え?赤い文字なんてあった?なんて書いてあるっけ?」

(それを私が言っちゃうと意味ないのだが...)

「えーとえーと、これです」


なんとか私からの情報を入れずに己の感覚のみで読んでほしかった私は、富士そばの看板を画像検索をして同僚に見せる。

「あー、これね。え、なんだろう。"みょうだい"じゃないの?"めいだい"?」


だよね!
いや、新たな読み間違いも出てきちゃったけど、やっぱりそうだよね!
でも、どっちもブッブーです!

たった1人にしか聞いていないが私と同じ読み間違いをしていた同僚に、私は得意げにローマ字表記から正しい読み方を知ったことを教える。

「へ〜"なだい"なんだ〜。ずっと勘違いしてたわ〜」


「私もです」と言いながら富士そばの画像を眺める私たち。
今までサトウさんに密かにツッコミばっかり入れていたけど、私も勘違いや読み間違い、知らないことがまだまだいっぱいあるんだなぁ。
信じて疑ってすらいなかった間違いって、ちょっと恥ずかしい。けど、おもしろい。


そういえばこの「えー!そうだったのー!?」の感覚、久しぶりに味わったかもしれない。
小さい頃は月極駐車場も「げっきょくちゅうしゃじょう」だとばかり思っていたし(なんなら「つきぎめ」なら”め”が送り仮名で必要なんじゃない?なんて思ったり、月で決めてるんじゃないの?きわめちゃってるの?なんて思って納得していなかった)、東京に出てきてすぐの頃は常磐線も「ときわせん」だと思っていた。
だってこの漢字「常盤貴子」の文字列でしか見たことなかったんだもん...。下が石が皿かなんてわかんないよ…。


昔の読み方を知らなかったり、最近の言葉がわからなかったり、自分の勝手なイメージでなんとなくそうだと思い込んでいるものもまだまだ私の中にいっぱいあるんだろうなぁ。



そういえば蕎麦でいくと「更科そば」ももしかすると勘違いしている人も多いかもしれない。
一度「こうかそば」と読んでいる人を見たこともある。
「小諸そば」「十割そば」あたりもなかなか色々な読まれ方をされてそう。蕎麦界には罠(?)が多い。

教養がないなと思われてしまいそうなアホなお話ではあるが、楽しく学んだということで名代の正しい読み方を知ったことを書いてみた。
10年後くらいに読んだら「うわーアホ...」って思うかな。
それともいや、こないだも同じような勘違いあったわ...ってなるかな。おそらく後者だろうな。

まだまだ世の中には知らないことがいっぱい溢れている。


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日野笙 / Sou Hino
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