ミツカンからアドミラルまでの道
私は足が小さい。
身長も人としての器も他にも色々小さいが足は特に小さい。
女性の靴のサイズ展開はだいたい22〜26cmくらいの間だろうか。
S,M,Lで表記されているようなものであれば、その範囲は23〜25cmくらいなのではないかと思われる。
私の足はジュニアサイズの卒業を経てから、その大人サイズの範囲にギリギリ引っかからないくらいのところで、あろうことか成長が止まってしまった。ぴったりシューズ難民である。
百貨店や大きな専門店などに行けば、たまに小さいサイズや大きいサイズが置いてあるところもあるが、そんなに高級ではない私の足元は、大体その辺で買った大きめのスニーカーを無理やり履いていることが多い。
ファッションによっては履いてみたいなと思っても、高いヒールやパンプスなどはなかなか履けない。
ひときわ短い小指が履き口から飛び出してしまったり、歩くほどにかかとをパカパカと置いてきてしまうのだ。
そんな私にはお気に入りのブランドがある。
1つはDr.Martens。
そのキャンバス地のローカットスニーカーがとても足に合う。
数年前に、友人の結婚式でたまたま行った沖縄で、偶然出会った靴。
ブランドに全く詳しくない私でも知っている、黄色いステッチが特徴のマーチン。ロックなバンドマンが履く革靴やロングブーツしかないと勝手に思いこんでいたのだが、たまたまその時店頭に置かれていたその見慣れないキャンバス地の靴が気になり、私はなんとなく足を入れてみた。
今まで履いてきたどのスニーカーよりも、どこもかしこもぴったりフィットする感覚。オーバーサイズを無理やり履いて、どこか不格好だった今までの私の足がシュッとして見える。
おぉ...これがジャストフィットの靴を履いた感覚かと感動して、旅先にもかかわらず、私はそのスニーカーを購入した。
後継っぽいデザインのものはあるようだが、ステッチがぐるっと回っているこのタイプは今はなかなか買えなくなってしまった。
だがこれをきっかけに、私は自分の足にちゃんと合う靴の履き心地の良さを知ったのである。
そして、思い出した。
今よりももっとブランドに興味がない貧乏学生時代に、たまたまどこかの靴屋のワゴンセールで、偶然小さめの靴を見つけた時のことを。
ちょっと派手なピンクだったが、その当時の私にはちょっとした冒険心も相まってその靴がとてもいい感じに見えた。
そして何より、小さなサイズの靴がセールで売られていることはあまりない。滅多に巡って来ない"お得"のチャンスである。
私は試しにその靴を履いてみた。
元々甲の部分が低めなつくりなのか、横にちょっと伸びる素材が入っているからなのか、ぴったりフィットするのに全然きつくない。
履き心地とサイズ感に惹かれ、私はそのスニーカーを買った。
しばらく愛用し、結構な汚さになるまで履いて、ついに底に穴が開いてしまってさよならしたあのスニーカー。
今まで調べもしなかったが、あの靴は何というブランドだったのだろう。
なんだか特徴的なロゴマークのようなものが付いていた気もするのだが、思い出せない。
アルファベットのブランド名のようなものも書いてあった気がするが、やはり一向に思い出せない。
さすがに「ピンク スニーカー」なんて検索しても探し出せるわけもなく、半ばあきらめかけていたある日。
私はスーパーであるものを見て、再びそのことを思い出した。
ミツカンのお酢...。
なぜかこれを見ると、あのスニーカーを思い出す...。
私はもしやと思い「ミツカン 靴」と検索してみた。
いる。
同じことを思った人が、やっぱりいる。
そして、そのおかげで私はあの靴のブランドが「Admiral」という名前だということがわかったのだ。
ありがとう、ミツカン。
ありがとう、ネットの人々。
次に「Admiral ピンク スニーカー」と調べてみる。
下の方に出てきた「アドミラル ダサい」という文言が少々気になるが、そんなことは気にしてはいけない。
私はバスの床を家に敷いてかっこいい!と満足する女である。
人の感性と同じものをかっこいいと思うかなんて気にしてはいけない。
自分を信じろ!
そう唱えて私は自分の記憶の片隅にある、あの靴を探す。
あった。
私が昔、偶然出会ってお気に入りで履いていた靴はこれだった。
今見ると結構ショッキングなくらいのピンクでそわそわするが、間違いなくこれだ。まさにショッキングピンクとはこのこと(?)である。
なんだか、昔から知っている友人に再会したような気持ち。
これを履けば、あの頃の私に戻れるような気がする。
今を憂いて探していたわけでもなかったが。
でもせっかく出会えたし、なんだかこれからの季節にぴったりな、アクティブな気配を醸し出しているではないか。
思い出の靴との再会を果たした私は、テンションが上がったそのままの勢いで購入できるサイトを探し「カートに入れる」のボタンをお酢、いや押す。
私はなんだか達成感にも似た気持ちに包まれた。
この靴を履いて外を歩けば、きっとこのピンク色のように、軽やかでウキウキするような気持ちになれるかもしれない。
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