吉良川は風の町
吉良川は風の町だ、と遍路宿の主人が教えてくれました。海と陸の温度差によって、昼は海から陸へ、夜は陸から海へと風が吹き抜ける、と。
遍路宿の朝は早く、従って夜も早い。夕食を終えた客たちは、部屋に戻って明かりを豆球だけに落とし、釣ってもらった青い蚊帳の中へ潜り込みます。
「水に入るごとくに蚊帳をくぐりけり」。麻布1枚で雑多な外界から遮断されている、あるいは守られている安心感は、まことに水の中の感覚に似ています。
風の音を聞きながら、「あ、いつの間にか、風向きが変わった」なんてことを考えている間に、清涼な水底で眠りに落ちていました。
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