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今あった話、昔あった話や、今も昔もなかった話。

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1,100記事目

1,100記事目の節目に際して、1,099の記事を掘り返します。この間みんなのフォトギャラリーから画像をお借りした皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。 【執する記事】 【物する記事】 【興ずる記事】 【旅する記事】 【抄する記事】 【糊する記事】 【着する記事】 【1記事〜1,000記事】

    • 富良野での生活

      富良野での生活に耐えられず、東京へ帰る純クンに、清吉おじさんがいいます。「お前ら、負けて逃げるんじゃ。わしらを裏切って逃げ出して行くんじゃ」。 昔、「北の国から」の再放送を見ていた私は、「そりゃないよ」と思っていました。「大人の方が、よっぽど身勝手だ」と純クンに肩入れしていました。 そして今、清吉おじさんのセリフを思い出しています。ゴタゴタに疲れ、カイシャを出ていく準備をしている自分は、「負けて逃げ」るのか。 でも、と自分に言い訳します。「ここにとどまって現状に甘んじる

      • TVの中では

        TVの中では、今夜も9人のおじさんとおばさんが顔をそろえ、激論を交わしています。とはいえそれは、所詮は内輪の論争に過ぎません。 内輪の盛り上がりを、今夜もTVは、まるで一大事として扱います。総裁とは今のところ総理のことなので、それはそれで、一大事なのだけど。 けれど例えば、それこそ一大事の選挙では「政治的中立性」を盾におざなりに報道していたTVが、なぜか特定の政党の総裁選にこれほど時間を割いています。 半月という長期にわたって総裁選という名のイメージ・チェンジ・キャンペ

        • 数年前

          数年前、ザイサンの丘は、広大な草原の向こうにウランバートルの町を遠望する場所だった気がします。でも今は、足下にまでマンションが迫ります。 「前に来た時と、変わりましたか」。ガイドのEさんに聞かれました。「町が大きくなりましたね」と答えます。「まだまだ大きくなります」と彼がいいます。 遊牧民たちが草原からこの盆地に集まり定住し、国民に占める遊牧民の割合は、今や1割といいます。「国は、遊牧を保護しませんか?」「しませんね」。 Eさんが即答し、「遊牧の人たちも、子どもを学校に

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          今年の21本目

          今年の21本目、Serial Mam、観ました。 「善魔」とは、遠藤周作さんの造語です。自分以外の世界を認めない。他人を裁く。一方的な「善」を他人に押し付ける。これは、「善魔」の映画です。 主人公は、平凡な主婦です。でも、その内面では、自分自身の正義を絶対視し、自分の価値観に合わない人間に私刑を課し、その行為を「善」と信じています。 見渡せば、今のこのネットの世界にも、匿名性を隠れみのに、好き嫌いという感情を善悪にすり替えて他人を裁く「善魔」が氾濫しています。 悪魔は

          今年の21本目

          #0208091

          何を与えればいいのか。何を身に付けさせればいいのか。子育てにおいて、私たちは、その種の問題に頭を悩ます。 けれど、とある伝統芸能の家元によれば、教育の極意とは、間違った情報を入れないことという。 子どもに余計なものを与えず、余計なことを身に付けさせない。そんな引き算さえ守っていれば、子どもは、どうにか自分で育ってゆくものかもしれない。 我が子にとって生まれて初めての一さじのかゆを与えてやりながら、Yさんは、ふと思う。けれど、何事によらず、引き算は、足し算より難しい。

          #0208091

          4歳の子ども(2)

          4歳の子どもの置かれた環境を想像してみます。マシュマロを我慢できた子。彼・彼女は、忍耐強い子なのではなく、お腹が空いていない子かもしれません。 また、質の高い教育と食事を与えられ、喜びを先延ばしできる余裕があり、将来の成功を約束され得る環境で育てられた子かもしれません。 それに対してマシュマロを我慢できなかった子。彼・彼女は、15分後の将来が約束されず、又は、不誠実な大人たちに何度も裏切られてきた子かもしれない。 最近の検証では、2個目のマシュマロと長期的な成功は、原因

          4歳の子ども(2)

          アリス

          アリスは、赤の女王に手を引かれ、懸命に走り続けました。ところが、不思議なことに、周りの景色は、全く変わりません。 疲れと驚きでへたり込んでしまうアリスに、女王は、いいます。「よいか、ここではじゃな、同じ場所にいるだけでも、あらん限りの速さで走らねばならぬ。 どこかほかの場所に行きたければ、少なくともその2倍の速さで走らねばならぬ」。 時速50キロメートルで進む各駅停車の下り線に揺られながら、でも、その窓に映る私は、どこにも進んでいない気がします。これも1つの赤の女王仮説

          アリス

          満員の電車に揺られながら

          満員の電車に揺られながら、窓の外をぼんやり眺めています。オフィスに向かうサラリーマン、通学する学生。日常の風景が目に飛び込んできます。 行きたくて行く人人よりも仕方なく行く人人で、朝の電車は、混んでいます。その時、駅のホームの突端に、カメラを構えた2人の少年の姿を見ました。 ホームに入る下り電車。通勤時間のいつもの通勤電車。私には何らの興奮も、関心すらも覚えない対象に向かって、彼等は無心にシャッターを切っていました。 私は、意外に思い、同時に、日常の中に非日常を、あるい

          満員の電車に揺られながら

          町ぐるみで工事中

          町ぐるみで工事中のようだった数年前、私は、少しビクビクしながらこの町の夜の裏道を歩いていました。 けれど、数年振りのウランバートルは、あか抜けました。ビルが折り重なり、道には車が溢れ、人人はスマートフォンを片手に忙しく歩き回っています。 それを眺める旅人は、おいっ子・めいっ子に再会した親戚の気分です。「すっかり大きくなって」と目を細めつつ、一抹の寂しさを感じたりもしています。 身勝手な感傷です。そして、あか抜けたホテルの部屋で、昔のようなシーツのほつれや、電話機の故障や

          町ぐるみで工事中

          #1909236

          キャンプから帰ってきた我が子は、少し大人びて見えた。たった2晩、離れていただけなのに。2晩とはいえ、こうして離れて過ごした経験は、初めてだ。 「私がいてやらなきゃ」と気張ってやってきたが、何とかやっていけるもんだ。親も、そして多分、子どもも、そのことに気付けた。その意味は、大きい。 「親はなくとも子は育つ」と人は、いう。もちろん、障害のあるこの子の将来を楽観はできない。でも、けれど、普通に考えれば、親は先に逝く存在なのだ。 そう考えれば、親がなくても育つ子に育てていかな

          #1909236

          4歳の子ども(1)

          4歳の子どもにマシュマロを1つ与えます。「これを食べずに15分間待つことができれば、もう1個あげる」と約束し、子ども1人を残して部屋を出ます。 ある子は言い付けを守り、別の子は我慢し切れず食べてしまいました。そして15年後、前者は、後者より学力が高く社会的に成功している、と確認されました。 「幼少期の自制心が、将来の学力や社会的な成功を予測する重要な要素である」。これがスタンフォード大が行った「マシュマロ実験」の結論です。 けれど「幼児期に自制心を育てれば、子どもの将来

          4歳の子ども(1)

          姿勢が悪い

          姿勢が悪い。その自覚と負い目があり、姿勢矯正クッションを買いました。「これで正しい姿勢を手に入れて、慢性的な肩凝りも緩和される」と意気揚揚で。 でも、使い始めて間もなく腰が痛くなり、数日後には激痛のためにへっぴり腰になりました。そんな私にマッサージを施しながら、慰め顔のHさんがいいます。 「私たちは、「正しい」体にたどり着こうと焦ります。でも、あんまり急激にゆがみを矯正すれば、体のどこかに負荷が掛かるのも道理かもしれません。 「正しい」姿勢が無理のない姿勢とは限りません

          姿勢が悪い

          カイシャの飲み会で

          カイシャの飲み会で、Iさんは、いつも話題の中心にいます。彼女は、「カイシャの中で、1番イケてる女子って誰ですか?」という話題を好んで振ります。 男子たちは、「またか」と思いながら1人2人の名前を挙げます。「どこがいいんですか?」とIさんが掘り下げ、容姿や性格、仕事振りを細かく詮索します。 そして結局、「でもあの人は挨拶ができない」「空気が読めない」とイケてる女子を腐し、「聞かれたから答えたのに…」とシラっとした空気が流れます。 私たちの飲み会は、その謎の欠席ディスリスペ

          カイシャの飲み会で

          日曜日にもかかわらず

          日曜日にもかかわらず、祖谷の集落では仕事に精を出している人を多く見掛けました。里道(赤筋道)の草刈りや石垣の補修に協力して当たっていました。 おじさんたちの「お盆になるからね」という解説を、私たちは、「帰省やら何やらで、人通りが増える準備をしているんだろう」と勝手に理解しました。 「盆路つくり」という言葉は、その旅の後で知りました。古く、人人は、郷の近くの山や墓地から霊たちが家家に帰ってくる、と信じていました。 霊たちの帰り道を整える作業が、「盆路つくり」です。「おじさ

          日曜日にもかかわらず

          今年の20本目

          今年の20本目、映画 窓ぎわのトットちゃん、観ました。 トットちゃんは、今の分類でいえばLDやADHDの傾向がある子どもです。でも、トモエ学園では、そんなことは問題になりませんでした。 彼女のように落ち着きがない子や障害のある子等が自分のペースで学び成長していくトモエ学園は、理想的なインクルーシブ教育の場だった、といえます。 そんな理想の学校も、戦争という大きな暴力の前には無力でした。でも、そこで培われた友情や校長先生の教えは、決して無意味ではありませんでした。 暴力

          今年の20本目