マーケティングの教科書 #3 最大限に効果を発揮できるように展開する「マーケティン グ・ミックス」
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本記事のポイント
マーケティングの基本は、4P「商品・製品 (Product)」「価格(Price)」「販売促進(Promotion)」「流通経路(Place)」
近年では4Cも重要。「顧客価値(Customer Value)」「顧客が負担するコスト(Customer Cost)」、「顧客とのコミュニケーション(Communication)」、「顧客の利便性(Convenience)」
4C→4Pへ落とし込むことが顧客志向を掴む手掛かりとなります
マーケティングの構成要素
どんなに魅力的な製品を創造したとしても、その情報が消費者へ正しく伝わらなければ販売のチャンスはありません。また、その情報が正しく伝わったとしても、どこで手に入れたら良いかわからなければ、これもまた販売のチャンスを逸する結果になってしまいます。さらには、製品の情報に基づいて消費者が製品を目の前にしたとしても、その価格が消費者の期待するも のと大きく乖離しているものであったとすれば、その製品は消費者の手に渡らずに終わってしまいます。
このように、マーケティングは消費者が出発点であり終着点であるとします。マーケ ティング戦略を立案する際の大前提は、標的市場(ターゲット)を明確に設定することで、市場調査(マーケット・リサーチ)などによる消費者の欲求(ニーズ)を的確に把握す ることだと言えます。
その標的市場においてマーケティング目標を達成するため、コントロールできるさまざまな活動手段を組み合わせて最大限の効果が発揮できるように展開することを「マーケティン グ・ミックス」と言います。
マーケティング活動手段の要素についてアメリカのマーケティング学者E・J・マッカーシーの「マーケティングの4つのP」という分類が有名です。4つのPとは「商品・製品 (Product)」「価格(Price)」「販売促進(Promotion)」「流通経路(Place)」の4つ の活動要素であり、これらの活動要素の頭文字をとったものです。消費者が満足する製品を作り、消費者が納得する価格を設定し、商品について広告・宣伝により正しい情報を消費者へ提供し、消費者が買い求めやすい流通経路を通じて販売することがマーケティングの基本となる活動と定義しています。
また、4Pの概念は売り手の見方であるとして、ノースカロライナ大学で広告論を教えるロバート・ラウターボーンは、買い手視点の4Cを提唱しています。4つのCとは「顧客価値(Customer Value)」「顧客が負担するコスト(Customer Cost)」、「顧客とのコミュニケーション(Communication)」、「顧客の利便性(Convenience)」の4つの活動要素です。
マーケティング・ミックス
消費、流行、価格、市場、流通構造などが刻々と変化する状況の中で 自社の市場優位性を維持し向上させるためには、これらの活動をそれぞ れに行うのではなく、マーケティングの効果が最大になるような4つのPとCの活動を組み合わせ、組織的に実践することが重要です。このように、マーケティングの活動の相乗効果が最大となるように組み合わせることを「マーケティング・ミックス」と言います。
4P
商品(Product):提供する商品やサービス自体に関する要素です。商品の品質、特長、ブランドイメージ、包装、保証などが含まれます。消費者が求める価値を提供する商品を開発・提供することが重要です。
機能、デザイン、サービスなど価格(Price):商品やサービスの価格設定に関する要素です。価格は消費者の購買意欲に影響を与える重要な要素であり、市場の競争状況やコスト、需要と供給のバランスを考慮して適切な価格を設定します。
消費者が納得する価格(小売価格、中間業者価格、支払い条件)販売促進(Promotion):商品やサービスの販売を促進するための要素です。広告、セールスプロモーション、パブリックリレーションなどの手法を用いて消費者に商品の魅力を伝え、購買を促す役割を果たします。
効果的な広告、宣伝(CM、PR、パブリシティ、人的物販)流通(Place):商品やサービスの消費者への提供方法に関する要素です。商品をどのように消費者に届けるか、販売チャネルや流通経路の選定が含まれます。効率的な流通システムを確立し、消費者に便利に購入できる環境を整えることが重要です。
適切な販売経路選択(販売エリア、物流拠点、保管、取引相手など)
これらの要素は、マーケティング活動を計画する際に統合的に考慮されます。4つの要素をバランスよく調整し、ターゲット市場に対して最適なマーケティング戦略を構築することで、消費者のニーズに適切に応え、競争力を強化し、企業の成長と利益増大に寄与することが目指されます。
サブ・マーケティング・ミックス
4Pはそれぞれの要素ごとの活動についても、最大のマーケティング効果が発揮でき る手段の組み合わせを考えなければなりません。これを「サブ・マーケティング・ミックス」 と言います。
製品サービスミックス
製品やサービスの設計・品質・機能・ブランド・パッケージングなどの要素を扱うサブ・ミックスです。価格ミックス:
価格設定・割引・キャンペーン・支払い条件など価格に関連する要素を扱うサブ・ミックスです。販売チャネルミックス
流通チャネルの選定・小売店の配置・在庫管理などを扱うサブ・ミックスです。プロモーションミックス
広告・販売促進・パブリックリレーションなどの要素を扱うサブ・ミックスです。
これらは、マーケティング・ミックスの要素を詳細に分類して整理するための概念です。これらのサブ・ミックスは一般的に「マーケティング・ミックス」として広く認知される4P(Product、Price、Place、Promotion)を基本にしています。
4C
顧客価値(Customer Value): 「顧客価値」は、マーケティング活動の対象である消費者や顧客のニーズや要求を理解し、それに合わせた価値を提供することが重要です。
コスト(Cost): 「コスト」は、顧客にとっての購入や利用にかかる費用や手間を指します。顧客が購入や利用に対して合理的なコスト感を持てるように工夫する必要があります。
利便性(Convenience): 「利便性」は、顧客が製品やサービスを購入・利用する際の便利さや快適さを指します。顧客の立場に立った便益提供が求められます。
コミュニケーション(Communication): 「コミュニケーション」は、企業と顧客の間で意思疎通を図ることを指します。顧客のフィードバックを受け入れ、適切な情報を提供することが重要です。
4Cを起点に4Pに落とし込む
顧客価値(Customer Value)=製品(Product)
顧客にとっての経費(Cost)=価格(Price)
顧客利便性(Convenience)=流通(Place)
顧客とのコミュニケーション(Communication)=プロモーション(Promotion)
近年では4Cを起点に4Pに落とし込むことが主流です。4Cは顧客中心の視点でマーケティングを考えるための概念であり、4Pは企業中心の視点で商品やサービスをマーケティングするための要素です。顧客のニーズや要求を把握し、そのニーズに応えるための商品やサービスを提供することが重要であり、4Cを起点にして4Pに落とし込みます。
顧客価値 (Consumer value): 顧客のニーズや要求を理解し、顧客に提供する価値を重視します。これは、4Pの「商品 (Product)」に対応します。商品やサービスを開発・提供する際に、顧客のニーズや希望を重視し、その価値を高めるような商品の特徴や機能を設計します。顧客が求めるものを提供することで、顧客満足度を向上させることが狙いです。
価格 (Cost): 顧客にとって受け入れ可能な価格を設定します。これは、4Pの「価格 (Price)」に対応します。顧客が価格を受け入れやすいレベルに設定することで、商品やサービスの需要を喚起しやすくなります。競合他社の価格や市場の相場を考慮しつつ、適切な価格戦略を立てることが重要です。
利便性 (Convenience): 顧客が商品やサービスを購入する際の利便性を高めます。これは、4Pの「場所 (Place)」に対応します。顧客が容易に商品を入手できる場所や方法を提供することで、顧客の利便性を向上させます。例えば、オンラインストアを開設したり、販売店の立地を便利な場所に設定したりすることで、購入のハードルを下げることが考えられます。
コミュニケーション (Communication): 顧客とのコミュニケーションを重視し、情報を適切に伝えます。これは、4Pの「促進 (Promotion)」に対応します。広告、宣伝、セールスプロモーションなどの手法を用いて、顧客に商品やサービスの情報を効果的に伝えることが目的です。顧客の興味を引きつけ、購買意欲を喚起するための戦略が必要です。
このように、4Cは顧客中心の視点からマーケティングを展開する際の要素であり、それぞれの要素を考慮しながら4Pと対応付けることで、顧客のニーズに応える競争力のあるマーケティング戦略を実現します。
前回の記事でも開設したように、
https://editor.note.com/notes/n5f5e2eacd09b
これに乗っ取っていますね。4Pから始めてしまうと、生産者志向、販売指向となってしまい、製品ありきのマーケティングとなってしまいます。
消費者ありきのマーケティングを行うことが大切です。
マーケティング活動と管理サイクル
マーケティング活動を実践する際には、最初に「マーケティング目標」を定めることが大切です。次に、その目標に向かって進んでいくために、どんな方法でどれくらいのスピー ドで進んでいくかという「計画(Plan)」が立てられ、計画に沿って「実行(Do)」してい く。しかし、内外の環境の変化や見通しとの相違などによって計画通りに進まない場合も出 てくるので、計画通りに進んでいるかどうか、あるいは計画した成果があがっているかどう かを「検証(Check)」しなければなりません。さらに、検証した結果をもとに目標を修正すべ きか計画を変更すべきかなどの「対策(Action)」を立て、次なるステップにおける「計画」 に盛り込んで行く。そして、新たな計画に基づいた「実行」、「検証」、「対策」と継続的な改善を繰り返しながら目標の達成を目指します。
アメリカのデミング博士は、このように計画(Plan)・実行(Do)・検証(Check)・対策 (Action)のプロセスを継続して回転させることにより目標へ向けて前進し、レベルアップしていくことを説きました。このプロセスを「管理サイクル(PDCAサイクル)」と呼びます。こ の管理サイクルの考え方はマーケティング活動に限らずあらゆる活動に適用されています。
以上、#3はここまでです。
今回もお読みくださりがとうございました。
次回もぜひ読んでください。
次回 マーケティングの教科書 #4
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