マーケティングの教科書 #10 マーケティングの課題
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本記事のポイント
インターネット上の取引が加速度的に増加
「地理的な制約」がなくなることが多い
SNSなどの発信がパブリシティやクチコミと同等以上の大きな力を持ち始めている
eビジネスは一人勝ちしやすい
マーケティング情報化戦路
高性能のパソコンが低価格で販売され、一方ではインターネットの通信速度が格段に向上したことにより企業や家庭のIT化は急速に進展しました。パソコンや携帯電話を通じたeメールはかつての電話やFAXと同じ感覚で使われるようになりました。電話帳のイエローページに企業の電話番号や広告を載せるようにインターネット上に企業のホームページを開設するようにもなりました。インターネットを通じた情報の交換や商品の受発注と決済も国境を越えて普遍的に行われています。このようなインターネット電子商取引(EC:Blectronic Commerce)は国際的にもオープンで、低コストであることから、これからも加速度的に拡大して行くのは明らかです。特に企業間の電子商取引(B to B)の利用は急激に進むと予想されます。
企業間電子商取引(B to B)
インターネットによる情報交換システムが一般化する以前から、いくつかの企業間では電子データによる受発注 (EDI:Electronic Data Interchange)システムを採用しているところもみられましたが、システム間のコードやデータあるいはシステム構成などに互換性が乏しいことから、チャネル・キャプテンとなっている企業のコスト低減は図ることができたものの複数の企業グループに属する中小企業にとっては取引相手ごとに異なるシステムを導入し
なくてはならないなど、それ自体が重荷となっていたケースも多く見られた。
しかし、インターネットを用いる企業間電子取引では互換性を図ることが容易なため、低い導入コストでほとんどの企業と取引が可能となっている。言い換えれば、中小企業にとってはEDIのメリットを受ける時代を迎えたとも言えます。
eマーケティング
EC化により企業にはこれまでのマーケティング戦路の基盤となるパラダイムの見直しが迫られています。EC化の前後で大きく変容した点を次に掲げていきます。
① 距離の制約
インターネット上での取引ではこれまでの「距離」という概念が取り払われます。したがって、これまで「オフィス」や「店舗」あるいは「流通」など地理的な制約があるからこそ存在意義があった要素には特に大きな変革が求められています。
例えば、SOHO (Smal! Office Hone Office )による在宅動務や、自宅を会社事務所としたベンチャーも行いやすくなり、また、サイト上にパーチャル・ショップ(仮想店舗)を構えることもできます。このように、メーカーは中間の流通業者を経由しなくても直接消費者と取引できることからこれまでの流通システムの観念とはまったく異なる大幅な変革を求められると予測されます。
② 情報の受発信
これまで、パンフレットなど紙面を用い多額の費用を投じて情報発信しなければなりませでしたが、ホームページを開設することにより少額の投資でこれまで以上の量と鮮度で消費者へ情報を伝えることができるようになりました。また、消費者から発信される情報はこれまで販売時点でのお客様とのやりとりや、クレーム、アンケート調査、手紙などが中心でしたが、消費者自身がホームページを開設して意見を公表したり、メールマガジン、SNSなどで企業や製品の評論を容易に発信できるため、これらが企業へ与える影響はパブリシティやクチコミと同等もしくはそれ以上に大きな力を持ち始めています。
また、メーカーと消費者が直接双方向で情報を交換することができることからBTO(Build to Order:受注組立)など個人対応の顧客満足を追及した「One to Oneマーケティング」の実践が各企業への課題とされます。
③ 商品の比較検討
消費者も情報を瞬時にしかも大量に入手できるので、商品やサービスの比較検討も容易になり、優劣が明確に評価されます。評価されるのは商品の価格だけでなく品質やベネフィット、企業イメージなどありとあらゆる要素が対象となるので、企業としてもこれまで以上の高いレベルでの製品計画や商品管理あるいは経営管理が求められています。
eピジネスへの参入はたやすいものの、評価が一目瞭然なため、一人勝ちの傾向が強くなり生き続ける困難が待ち受けています。したがって企業にはより高付加価値で値打ち感のある良質な製品開発が求められます。一方で、これまでは一旦取引を開始したら企業間のしがらみから多少の問題があったとしても取引は継続をせざるを得ないという状況もありましたが、インターネット上での入札システムなどが一般的になると独自の技術力を持つ力のある企業が生き残れる条件となっていくでしょう。
以上、#10はここまでです。
今回もお読みくださりがとうございました。
次回もぜひお読みください。
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