マーケティングの教科書 #2 「顧客志向」「社会志向」マーケティング理念
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本記事のポイント
マーケティング活動とは「販売」・「商品化計画」・「販売促進」の全てを含む活動のことを言います。
現在は、消費者のニーズに合わせた「顧客志向」や社会全体の利益を優先させる「社会志向」がマーケティング理念の中心です。
企業におけるマーケティング活動
企業が存続し発展できるかどうかは、消費者に支持されるかどうかにかかっています。そのために企業としては消費者が何を望んでいるかを正確に把握し、サービスや商品を提供、購入してもらい、利用して満足してもらわなければなりません。この仕組みを作ることがマーケティング活動であり企業活動を方向付ける重要な機能と言えます。
①販売(Selling)
企業が取り扱っている(顕在供給)商品を、日常的に企業を利用してくれる得意先からの注文(顕在需要)に対して、要求される品質を確保し適正な価格で納期どおりに収 めるための販売行為を言います。この中には、生産計画や仕入計画、流通を含む販売計画も含まれ、商品計画とも言われます。
②商品化計画(Merchandising)
消費者の需要動向の変化に対応した商品を提供できるように、市場調査、 新技術の研究、製品開発、仕入先の開拓などを行い、商品化(潜在供給)を実現するための計画のことを言います。
③販売促進(Sales Promotion)
企業が販売している(顕在供給)商品の良さを消費者に知ってもらい、購買意欲を喚起する(潜在需要)ための活動を指します。現在取引のある得意先に対する場合には取引を拡大することや、新たな市場を拡大することにより売上を増加させるための活動も含みます。
このように、マーケティング活動とは「販売」・「商品化計画」・「販売促進」の全てを含む活動で、企業が現在、取り扱っている商品の市場占有率と市場成長率を高め、新規商品の投入や市場開拓をすることにより、企業が発展し維持されていくための総括的な活動です。
マーケティング理念の変遷
マーケティング活動の原点は前述したように顧客の創造と維持であり。このような考え方 を「消費者志向」あるいは「顧客志向」と呼んでいます。国内においても、このようなマー ケティング・パラダイムに至るまで、時代を背景にさまざまな理念が登場しては淘汰されていきました。
①生産者志向の時代
戦後の日本における国民生活は、衣食住などのすべてにおいて物資不足の時代でした。生産者についても生産設備が整わず、消費者の需要量に対して供給量が追い付かない状況が続いておりました。作れば売れていくので、企業の努力は生産力の向上に重点が置かれ、いかに量産体制をシステム化するかということが課題でした。このような生産者優先の理念を「生産者志向」と言います。
②販売志向の時代
朝鮮戦争がきっかけとなった特需景気は国内経済を飛躍的に上向かせました。多くのメー カーの生産設備も回復して生産力が向上し、多量に生産された商品が市場に溢れるよう になり、各メーカーとも次から次へと生産される商品や大量に抱えた在庫を売りさばく ことに主眼がおかれ、他社との熾烈なシェア争いを展開していました。
このような考え方を「販売志向」と呼んでいますが、この時代のマーケティング志向は 自社の商品をできるだけ多く売って、いかに現金を手に入れるかという販売者側の都合しか見えてきません。
③消費者志向の時代
高度経済成長に支えられ、日本国内の生活は物資も充足され、心理的にも豊かになりました。この ような市場の状態を「成熟した市場」と呼びます。この時代に入ると消費者が商品を吟味するようになり、企業の盛衰は消費者が指示してくれるかどうかにかかってきました。
企業は商品の品質・価格・納期などについてアンケート調査・嗜好調査・モニターな どあらゆる手段を駆使して市場調査を行い、消費者のニーズや動向を分析して消費者に 満足してもらえる商品を提供することが最重要課題となった。このような消費者優先の理念を「消費者志向」あるいは「顧客志向」と言います。
また、生産者志向や販売志向がメーカー優先の考え方であることから「プロダクト・ アウト」と呼ばれるのに対し、消費者優先の考え方を「マーケット・イン」と呼んでいます。
④社会志向の時代
顧客の満足だけにとどまらず、社会福祉の向上や自然環境の保護などについて長期的な視点に立って社会全体の利益を優先させるマーケティング理念を「社会志向」あるいは 「ソーシャル・マーケティング」と言います。
これからは、製品の資材調達や生産・流通の過程だけでなく、使用中・使用後の廃棄に至るすべての段階で地球環境に負荷をかけるものの排除や、地域住民や消費者に危害 や不利益をもたらすものを排除することが企業責任として強く求められています。それは 経営理念や企業活動内容、財務体質などを積極的に消費者に公開することです。
以上、#2はここまでです。
お読みくださりがとうございました。
次回もぜひ読んでください。
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