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『レインツリーの国』を読んだ感想(ネタバレあり)
レインツリーの国 有川浩
大好きな有川浩さんの物語。古本屋で購入。バイトの休憩時などにちょこちょこ読み進めて、数日かけて読み終えた。
有川さんの本の中でもかなりお気に入りの物語となった。
※以下ネタバレを含みます。
彼(伸行)は、ある本がきっかけで、ネット上で彼女(ひとみ)と知り合う。互いに惹かれあって実際に会ってみたが、どこか彼女と合わない部分があり、小さなトラブルも重なる。ネット上での彼女は理想像でしかなかったのか。
その最初のデートの別れ際に彼女が聴覚障害者ということを目の当たりにする。
その日、不自然に感じていたこと、イラついたこと、全てがその事実で辻褄があった。
最初は彼の視点から始まり、途中で彼女、彼という風に数回視点が交互していく。私はこういった視点が変わる物語が好きだ。毎度、視点が変わることによって、それまで共感しにくかった登場人物に一気に感情移入できるのが、なんとも作者の思い通りのようで情けなくもなるが、それも含め面白い。今回も同じようにお互いの思いに共感できることがあったのだが、圧倒的に自分は彼に感情移入しやすかった。自分の性格も関係していると思うが、やはり私も彼と同じ健聴者だからなのか。
多くの人は忘れたくても忘れられない過去があり、様々なコンプレックスや弱みを抱えている。辛さを共感したくても、どんな人でも自分自身の辛さしか理解できない。理解してあげたくても完全に理解することはできない。
私が、こうして物語を通して、彼と彼女の過去を知っても、その事実を情報として知ることしかできず、辛さや痛みをそのまま感じることはできない。
でも、大事なのはその痛みを完全に理解することではないと思う。こうして本を読んで彼らの過去や今の辛さを想像すること、現実でも大切に思う人の辛さを分かってあげようと必死になること、理解しようとする気持ちが何よりも大切だ。辛さを理解できないこと、理解されないことを嘆く必要はないと思う。
むしろ完全に同じ立場を体験して、その辛さを理解されるよりも想像上の方がいいのかもしれない、なんてことを思った。辛さの感じ方も人それぞれ違うのだから。分からないからこそより相手を思いやれるし、お互い理解し合おうと思えるのではないだろうか。
画像は本文とは関係ない以前描いたイラストです。