電脳虚構#16 | 夏の日の少年
コージとユミコと僕。
自転車で学校の裏のドングリ山に行ったんだ。
そこでUFOがみれるんだって、ユミコの兄ちゃんの友達から聞いた。
この夏休み中に実行しようとこっそり作戦を立ててたこの「UFO計画」。
今夜がその決行の日だった。
みんな半分はジョークだった。
・・でも本当にUFOに遭遇するだなんて。
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彼は「ケンヂ」と名乗った。
自分の星へ帰る途中、充電が切れて急きょ僕らの星に不時着したらしい。
こっそり燃料をためて、帰るつもりだったそうだ。
僕らと姿・カタチはずいぶんと違ったけど、言葉は通じた。
なんとかっていう「ほんやく機」というモノのおかげらしい。
3人とも最初は身体が固まってしまった。
でも話してみると、歳もあまり変わらないみたいだった。
「ごめんね、ほんとはちがう星の人にバレちゃいけないんだ。
だからボクのことは内緒にしててね。」
ケンヂくんはそう言った。
燃料は太陽のひかりで充電できるけど、満タンまでは2週間はかかるらしい。2週間後は8/31。ちょうど夏休みの終わりだ。
「・・2週間しかないけど、トモダチになろう。」
誰からでもなく、そう言った。
ケンヂくんはきっと歳は同じくらいでも、僕らと見た目が大きく違う。
本当は街にでて、いろんなものを見せてあげたかった。
でもきっとすぐに「宇宙人」だってバレてしまう。
このドングリ山はめったに人なんか来ない。
UFOは茂みに隠して、僕らは毎日この山で遊んだ。
ある日、コージがアイスを買ってきた。”ゴリゴリくん”だ。
ケンヂくんは驚いていた。
「これ、ボクの星にも同じようなのがあるよ。
ほんとこの星は、ボクらの星と文明が似ているんだね。」
川で魚やザリガニ釣ったり、木のブランコを作って遊んだり
夜に抜けられるときは、花火をしたり、蛍を捕ったりした。
くだらない話でころげまわり、みんなで涙を流して笑った。
ケンヂくんは星の話もたくさんしてくれた。
聞けば聞くほど、この僕らの星とびっくりするくらい同じだった。
見た目はこんなに違うのに、もう誰も”宇宙人”とは思わなかった。
たった二週間だけど、僕らは本当の友達になったんだ。
でもそんな時間はあっという間に過ぎて、夏休みはもうすぐ終わり。
あと少しでケンヂくんともサヨラナしなくちゃいけない。
そんなある日。
一緒に川で秘密基地を作っていたら、ケンヂくんの時計が「ピピィー!」と鳴った。
「あ、UFOの充電が完了したみたいだ。
ここはボクの星より、太陽が近いんだね。
予定より早く充電、・・終わっちゃった。」
ケンヂくんは少しさみしそうにそうつぶやいた。
隠していたUFOを茂みから出すと「プシュー」と煙を出し、扉が開いた。
「ほんとはもっと一緒にいたかったけど
みんな心配しているだろうから・・・。
楽しかったよ、みんなも元気でね。
いつか、いつかボクらの星にも来てね。」
UFOは青い光に包まれ、少し浮いたと思ったらあっという間に空高くにいた。
8の字にグルグル旋回しながら、流れ星のように一筋の光になってすぐに遠くの空へ消えた。
「・・ケンヂくん、いいやつだったね。」
みんなで少し泣いた。
さみしい気持ちを強がるように、ユミコが言った。
「にしてもー!宇宙人ってほんとにいたんだね。
最初はびっくりしたわ。
コージなんてほら、腰ぬかしてあわあわ言ってたもの。」
「だって、あんなのみたら誰だって驚くだろ。
目が左右に2つもあるのに、足は俺らよりずっと少ない2本とかさ。
それに顔に口がついてて、そこからモノを食べるんだぜ?」
「・・僕も”胴体の上にアタマが乗ってる”のにはびびった!
あと触手が一本も生えてないのは、不便そうだったなぁ・・。
「俺らみたいに50本くらいあったらいいのにね。」
「また会いたいわね。
・・で、ケンヂくん、どこの星に帰るって言ってたっけ?」
「ん?たしか・・・チキュウって言ってたかな?」
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