保育実習の本来の目的を振り返る
保育実習はどんなことを学ぶべきか、イマイチわかってるようでわかってない学生も多くいるのではないでしょうか。毎日目標をどう立てるべきか、実は悩んでいる方も多いはずです。
受け入れる側の保育士も日々の業務に追われ、なんとなく生徒を受け入れてしまっている部分が少なからずあるはずです。
私は実習中、掃除ばかりをお願いされてなかなか子どもとの関わりをフィードバックしてもらえず実習への評価などもどのようにして行われていたのかという疑問がありました。
まずは保育実習の目的を明確にして、受ける側も受け入れる側も意義のある時間に出来ればと思います。
保育実習の目的
厚生労働省によって、下記のように規定されています。
保育実習は、その習得した教科全体の知識、技能を基礎とし、これらを総合的に実践する応用能力を養うため、児童に対する理解を通じて保育の理論と実践の関係について習熟させることを目的とする。
(引用:一般社団法人 全国保育士養成協議会「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について)
と明記されています。
さらに細かく解説します。
実習を受ける側の目的
1.教科全体の知識、技能
大まかに保育の知識というと以下の通りです。
保育の心理学
保育原理
子ども家庭福祉
社会福祉
教育原理
社会的養護
子どもの保健
子どもの食と栄養
保育実習理論
また、技能としては以下の通りです。
音楽に関するもの
造形に関するもの
言語に関するもの
2.総合的に実践する応用能力を養う
先程上げた知識と技能を総合的に実践へ生かす応用能力を養うということです。
子どもの発達や年齢に合わせた関わりを実際に行っても、子どもの個性に合わせないとなかなか教科書通りにはいきません。上手くいかないことも含めて、実習中は「感じること」に意義があります。
また、活動内容によって目的が必ずあります。クラスや個人には保育計画というものがあり、それに沿って活動内容が決められています。月ごとや週、その日の狙いがあるのでそれを事前に保育士へ聞いておくのも良いと思います。その狙いに沿って活動を深められるように実践を意識すると良いでしょう。
3.児童への理解を通じて保育の理論と実践の関係
座学通りに行かないなーと思うことも1つの学びです。対人ですので、オールマイティな関わり方というマニュアルはありません。人それぞれ、何をして喜ぶかは違います。どんな子にはうまくいって、どんな子にはうまく行かなかったか等、うまく行かなかったことも行ったことも前後の活動にもよりますし、実習生へ抱く気持ちがもともと違うかもしれません。1つの場面に対して、連続する人や事、時間を紡いで考えることで子どもへの理解が増すと思います。
また、保育士の仕事の対象は子どもだけではありません。保護者や他の福祉サービスの職員との連携も含まれます。どんな方とどんな話をしているのかも実習中に見られる唯一の場面です。子どもの姿だけでなく、子どもを取り巻く保育士の様子を観察することで得られる学びもあります。
実習を受け入れる側
1.教科全体の知識、技能
保育の知識は子どもに関わらず、大人になっても必要になってく生活への知識や意識を有するものです。何気なく行っている食事・排泄・睡眠・着脱・整理整頓・清潔のことがらに今一度意味づけを行い、実習生に対して何を意識しているのか教えます。
例を挙げると
食事をとる
← 栄養を補給すること
← よく咀嚼する
← 「よく噛んでね」と伝える
行動の意味を考え直し、それに付随する行動をさらに掘り下げていくことで表面化している言動にたどり着くわけです。
また、
食事をとるは"子どもの保健"の教科の範囲と考えられます。
栄養を補給するは"子どもの食と栄養"の教科の範囲と考えられます。
「よく噛んでね」と伝えるは"子ども家庭福祉"や"言語に関するもの"など座学で学んだ教科を技能をツールとして使います。
このような座学で学んだことと実体験の照らし合わせが学生の実習の実りとなります。
2.総合的に実践する応用能力を養う
私が実習中によく言われたことが「自由時間なので子どもと遊んでいてください」という指示です。実習生だった私は自由時間は待ち時間なのだと思っていました。今どんな時間を過ごしているのか、同じ場面をみても評価が実習生と保育士では違います。そこには狙いや目的に違いがあるからです。自由遊びの中にどんな目的があるのか伝えてあげると能動的な行動が増えると思います。
目的に応じてどう、対応するのかは評価対象に十分なります。子どもも見ながら実習生も見ながらという1日の並行した目的を遂行するためにも、目的が明確な方が良いでしょう。
3.児童への理解を通じて保育の理論と実践の関係
実習中は経験値を増やそうと、実習生に何かをさせる機会をたくさん与えていくことも大切ですが保育士の仕事を観察させることも非常に大切な時間です。”対子ども”だけではなく、保育士がどのように子どもと関わっているかの「質」を見せることが児童への理解につながることも多くあります。
モデリングができるように上記にあるように目的を知らせ、実際の関わりを見せ、そこから実践へという段階があることが実習生にとっても理想でしょう。
実習生が子どもに対して注意や指導をしないのをわかって、無理な関わりを求める子も出てきます。そんな時でも関わりの模倣対象があることでまずは実習生も真似してみようと思えるはずです。子どもとの関係性が薄いので、真似しても絶対にうまくいきませんが(笑)それも1つの学びです。
まとめ
厚生労働省が規定する目的を簡単にまとめたので、大枠となりましたがキーワードは
・実習中に何を感じたか
・活動内容の目的が何か
・目的に対して、どう動き、どう関わったか
です。
正直なところ、子どもが目の前にいながら保育の理論などを踏まえながら関わるのは経験だけでなく、アイディアやコミュニケーションセンスも必要です。
まずはこの3つをキーワードに実習を楽しんで下さい!