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短編小説

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好い道

夜道を歩く。

田舎では考えられないような、夕方とは言わないまでも、「もう寝る時間だよ!」なんて怒られる時間とは考えられない。

果たして「もう寝る時間」とは一体全体何時なのだろうか。

個人差はあるが、勝手な雰囲気統計をとると大体10時であろう。そこからは大人の世界だ。決して生半可な気持ちでは立ち入ってはいけない、けれども潜り込んでいく大人たちには余裕や大人たる精神が垣間見える。それに憧れて僕た

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【おはなし】 色ハス   (1257字)

そうだ、“牛田”だ。

動物園のカメレオンの顔がどうにも引っかかっていて、
ピンと来たのは、こともあろうに忘れもしないはずの大学時代の親友の顔だった。

会わなくなって5年ほど経ったか。

大学の入学式の日、午後の説明会が隣の席だったことから牛田とは仲良くなった。
お互いに大学入学して最初の友達だった。

同じ学部でほとんど授業も一緒。
大学進学をきっかけに上京してきた僕には東京というものにまだ恐

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