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オフィスひめの通信 27号
執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2012年11月
-病気はなぜ起こる? Ⅱ型糖尿病を治そう! 1-
ホルモンが関係する最もポピュラーな病気の一つが糖尿病です。Ⅰ型糖尿病ではインスリン分泌細胞が減ってしまうためインスリンそのものが不足していますが、Ⅱ型糖尿病の多く方はインスリン分泌細胞が残っておりインスリンの分泌能力もあります。
そこで今回はⅡ型糖尿病を治してしまおう!というお話です。
なぜインスリンが分泌出来るのに血糖値が高いのか。理由は主に二つ!
血糖が上昇してからインスリンが分泌されるまでが遅い
インスリンの効き目が悪い
今回は①のインスリンの分泌機構について取り上げ、次回はインスリンの効き目について説明してみようと思います。
下図のようにⅡ型糖尿病ではしばしば血糖値が上昇してからインスリンが分泌されるまでに遅れがあります。インスリン分泌が遅れるために血糖値が最初に大きく上昇します。遅れて分泌されたインスリンで血糖値が下がりきってもインスリンが引っ込むのが遅いために今度は血糖値が下がりすぎます。薬を使ってなくても「糖尿病だけど低血糖もある」という状態は珍しくはありません。
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血糖値が下がりすぎるとかなり強い空腹感が起こり炭水化物や糖質が食べたくなります。そこでまた血糖値が上昇下降を繰り返し内臓脂肪も増えるという悪循環になってしまいます。ご飯をやめて肉や魚など血糖値を安定させる食べものに変えたら前よりも空腹感がなくなったという方もたくさんいらっしゃいます。
インスリンがタイミングよく出るためには分泌に関わる栄養素の補充が大切です。膵臓のβ細胞では血糖値が上昇すると次のような順番でインスリンが分泌されます。
糖輸送体(GLUT2)が摂りこむぶどう糖の量が増える
糖が代謝されエネルギー(ATP)産生が増える
ATPの増加によってカリウムチャネルが開く
細胞内の電位が変わってカルシウムチャネルが開く
細胞内のカルシウム濃度の変化によってインスリンを含む顆粒が放出される
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ビタミンB群の欠乏はステップ2を、カルシウムやマグネシウムの欠乏はステップ5での反応を鈍くします。また亜鉛欠乏はインスリン分泌に支障を起こします。そこでたっぷりのビタミンB群、カルシウム、マグネシウム、亜鉛を摂ると体の本来の調節機構を取り戻せる可能性があるのです。
次回はインスリンの効き目の改善方法について考えてみましょう。
暮らしに役立つ栄養療法-食物繊維と腸内細菌-
腸管全体で100兆個もの腸内細菌が常に生息しているそうです。人間の体の細胞の数は60兆個と考えられていますから大変な数の細菌と共生していることになります。口の中にも同じようにたくさんの細菌が共存しています。
人間の都合で腸内細菌を悪玉菌(害を及ぼす菌)・善玉菌(良い作用を持つ菌)・日和見菌(普段は害も益もないが状況によって悪さをする菌)に分けていますが、悪玉菌や日和見菌が完全になければよいというものではなくて、ある理想的なバランスで存在していることが大切なようです。それぞれの菌種は混じり合わずにお花畑のように集落を 形成しています。
最近にわかに腸内細菌が注目されてきた背景には、腸の状態と全身の病気の関連が次々と証明されているという事実があります。関連がほぼ確立した病気には次のようなものがあります。
過敏性腸症候群・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)
自己免疫疾患(慢性関節リウマチなど)
アレルギー(アトピー性皮膚炎など)
うつや自閉症などの脳・神経性疾患
糖尿病
慢性イースト菌感染症・カンジダ症候群
そこで、善い菌の割合が増えるように努力したいと考えるのは自然なことですね。食物繊維の摂取量を増やすことや定着可能な腸内細菌を定期的に摂ることはとても大切です。カンジダは糖分が大好きなので糖分の摂取を減らしてカンジダが増えないようにしましょう。パンなどに含まれる酵母(イースト)、コーヒーや紅茶に含まれるカフェイン、人工甘味料なども少なめにしましょう。同じものを繰り返し食べないようにする工夫も必要です。
腸の環境や栄養状態が悪いと腸粘膜がもろくなったりバリア機構が破綻して食物アレルギーも起きやすくなります。IgG抗体によって引き起こされる遅延型食物アレルギーは1日から数日後に症状が現れるため、症状と原因食物の関係に気づかないことがあります。
次回は遅延型食物アレルギーについてもう少し詳しく説明することにしましょう。
サプリメント小話-プロバイオティクスとプレバイオティクス-
腸内細菌を整える食品やサプリメントは大きくプロバイオティクスとプレバイオティクスに分類されます。
プロバイオティクスとは、人にとって有用な菌(を含む食品)のことで腸内細菌のバランスを整え、腸の働きを改善することによって病気を改善・予防することを目指します。
プレバイオティクスとは、有用な菌が定着し増えるのを助ける物質のことです。オリゴ糖や食物繊維などが代表的です。プロバイオティクスに含まれる菌が定着して増えるようにプレバイオティクスを併用することが多いので両方を含んだ食品や製剤も開発されシンバイオティクスと呼ばれています。
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善玉菌には種類がたくさんあり、菌の種類によって特性や改善できる病気も少しずつ違っているようです。腸内細菌によって病気を改善したり予防したりするためには、菌の特性と病気がある程度合致している必要があります。
そこで一人一人にテーラーメイドのプログラム―4つのRによる様々な試行錯誤が行われています。
4つのRとは、
Remove(除去)・・・有害物質やアレルギー源、病原性菌を除く
Replace(補てん)・・・低下した消化酵素を補う
Reinoculate(植菌)・・・病態・個体差に応じた菌種を補給(プロバイオティクス)
Regenerate(再生)・・・消化管粘膜を再生してバリア機構を維持(プレバイオティクス・グルタミン・ビタミンAなど)
のことです。テーラーメイド治療はお仕着せのオーダーメイド治療と違って一人一人に合わせて治療法を変えるため患者さんの主体的な参加が不可欠です。医療の未来像は「自分主体の治療」です。皆さまの積極的な参加を期待しています。
※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。
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