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オフィスひめの通信 46号

執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2015年2月

ーその疲れ…副腎疲労ではありませんか?ー

 職場の人間関係がうまくいかない、思いがけない不幸があった、人生では様々なストレスに遭遇します。大きなプロジェクトを成功させ達成感を感じていたがその後で全くやる気が出なくなった・・・ストレスは辛く悲しいことばかりでなく楽しいことや張りきった場合にも生じます。 
 原因不明の疲労感に遭遇したら、副腎疲労を疑いましょう。

□ 朝目が覚めても起きられない
□ 鉛のように体が重く、すぐに横たわりたい
□ 何をしても楽しく感じられない、興味がわかない
□ こんな風に生きていて意味があるのだろうか
□ 風邪がいつまでも治らない
□ 休んでも疲れがとれない

 これらは、副腎疲労によく見られる症状です。気持ちの落ち込みも強いことからうつ病と誤診されていることも少なくありません。更年期障害や男性更年期も背景に副腎疲労が隠れていることがあります。
 副腎疲労の改善は副腎疲労であると気づくことから始まります。この世の中スーパーマンばかりではありません。ストレス耐性はかなり個人差があるのです。ささいなこと、ちょっとしたことで副腎疲労を発症することもあります。「怠け病」と自分を責めたり、出来ないことを悲しんだりすると副腎疲労はますます悪化します。気楽に楽天的に出来ることを積み上げていくことが大切です。
 副腎疲労は一朝一夕では治りません。でも治すために出来ることはあります。疲れがとれないと感じたら、ぜひ早めにご相談ください。


ー腸とストレス 腸脳相関ー

 19世紀の中ごろには、腸内細菌と腸、脳は双方向に影響を及ぼしていることが認識されていました。一時研究の発表が途絶えましたが2003年頃から再び注目されるようになり2012年にはNatureにレビュー(それまでの論文や研究を総括したもの)が掲載されるまでになりました。
 例えば感情やストレスは迷走神経と腸壁神経系の経路を介して消化管の蠕動運動や消化吸収、食欲などに影響を与えます。叱られたり失敗したりすると胃が痛くなったり、緊張するとお腹が痛くなったり下痢になったり、ストレスが長期化すると食欲がなくなって体重が減るといった経験があるでしょう。腸の炎症ではこの経路が活性化され消化管からの信号が脳に送られます。
 視床下部↔下垂体↔副腎の経路(HPA軸)も大切です。視床下部は飲食や睡眠、性行動などの本能に関わる行動、怒りや不安などの情動をつかさどる中枢であり、自律神経とホルモンの調節機構の司令塔でもあります。最近の  いくつかの研究でHPA軸の働きが腸内細菌叢に影響を及ぼすことが確かめられました。ストレス刺激により乳酸菌やバクテロイデス属が減少しクロストリジウム菌種が増加したそうです。またその際に血液中の炎症物質(サイトカインなど)の増加も認められています。
 腸と中枢神経系は双方向に情報交換していること、腸内細菌叢は中枢神経系の影響を受け、腸内細菌叢が中枢神経系と免疫、内分泌、自律神経に影響を及ぼしていることを考えると腸内細菌の改善なしにはストレスからの回復はあり得ません。ストレスからの回復時にはまず腸の改善から始めましょう。


ーIgGアレルギー検査ー

 食物アレルギーには、すぐに反応するIgE型のアレルギー反応と、少し時間が経ってから症状が出るIgG型のアレルギー反応があります。IgG型のアレルギー反応では発症時間も症状も多彩なため原因食物がはっきりしないことが多く、そもそも食物によるアレルギー反応と気付かないことが多いです。
 IgG型食物アレルギー検査(海外製)はそのようなIgG型の食物アレルギーの検出を可能にしました。約90種類の食品に対するIgG抗体を検出します。
 血液中にIgG抗体が存在することは、二つのことを意味しています。

◆ 腸の壁をすり抜けて大きな物質が血液中に入る
◆ IgG抗体を介した免疫・炎症反応が起きている

 特定の1つか2つの食品に関して抗体が強く出た場合には、その食品を食べないようにすると余分な炎症反応がなくなり体への負担が減ります。卵黄・卵白、乳製品、小麦グルテンなどはIgG型食物アレルギーを起こしやすい食品です。
 卵黄・卵白、乳製品だけでなく野菜や大豆、魚介類、穀物のほとんどや調味料などに幅広くIgG抗体が検出された場合は、IgG抗体反応が出たすべての 食品を除去することは現実的ではありません。そこで必要となるのは腸粘膜へのアプローチです。
 そもそもIgG抗体が出来る時には、未消化の大きな物質が、腸粘膜細胞の隙間をすり抜けて体内に入っています。腸粘膜細胞の隙間の最も大きな原因はカンジダなどの有害な腸内細菌が増えすぎたことと、粘膜を維持する栄養素の欠乏です。栄養素の欠乏時には消化能力も低下しているため未消化物質が腸管内に増えることも見逃せません。
 このように腸粘膜の脆弱化や腸内細菌バランスの乱れにより腸のバリアが崩壊した状態をリーキーガット症候群と呼びます。次回は「リーキーガット症候群」についてさらに詳しく解説したいと思います。


※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。


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