二人の奇妙な関係にドキドキ!怖くて優しい物語―『暗いところで待ち合わせ』
乙一氏は多彩な覆面作家である。温かく優しい作品の”白乙一”に、グロテスクでダークな作品の”黒乙一”、他にも青春や恋愛小説の多い「中田永一」、「山白朝子」や「越前魔太郎」といった別名義も多く持つ。さらには「安達寛高」として、映像作品も多く手掛けている。
これだけ多くの作品を多様な作風で書き分ける、その才能を素晴らしいと思う。私は『箱庭図書館』と『失はれる物語』という短編小説から乙一氏を好きになり、その後で中田永一氏が同一人物であることを知った。始めはその事実に驚いたが、引き込