期待を超えると感動になる
こんにちは!プロダクトマネージャーのひまらつ(@himara2)です。
Webサービスの機能や体験を設計する際、ユーザーにもっとプロダクトを気に入ってもらうには何が必要かを考えます。プロダクトに興味を持って来てくれたユーザーはどうすれば定着してくれるのか?どういう体験が提供できればプロダクトのファンになってくれるのか?
このあたりをテーマに、整理しながらnoteを書いてみます。
期待を超えると感動になる
上のグラフはユーザーがプロダクトを使い始めてからの感情の移ろいを表しています。ユーザーはサービスを友人の紹介や広告で知り、自分の抱えている課題を解決してくれるかもしれないと期待を持って使いはじめます。期待通りの機能や体験が備わっていればテンションは上がり、逆にアピールされていたものと機能が異なっていたり使いづらかったりするとテンションは下がる。時系列で感情は上下します。
何かのサービスを使うとき、期待のラインがあります。このサービスはこういうことができるんだな、とあらかじめ予期した期待感です。プロダクトがこのラインを超えれると感動が生まれます。ラインを超えるためにはマニュアルを見ずに直感的に操作できるとか、期待以上に自分の仕事を助けてくれそうとか、自分の課題にドンピシャの解決策を提示してくれるなど、ユーザーの期待を上回る体験を提供することが必要です。このタイミングは「アハ体験」や「クイックウィン」などとも言われます。感動ポイントはできるだけグラフの左側、サービス利用開始から早いタイミングでユーザーに提供できると良いです。ユーザーは忙しく、自分の問題を解決してくれるか分からないサービスに費やせる時間はそれほどありません。早めに役に立てることを示す必要があります。
逆にテンションが下がる方向でラインを下回った場合、それはガッカリ体験になります。例えばドキュメント通りに操作したのに動かない、原因不明のエラーで詰まって進まない、アプリがクラッシュして落ちるなど。この許容ラインは人や環境によって違います。例えば特定のニッチな課題をドンピシャで解決してプロダクトであれば、唯一無二の側面が上回り多少の不具合は大目に見てもらえる可能性が高いでしょう。また、一般的にはtoCのサービスの方が優れた操作感を求められます。これはtoBに比べて競合が多く、切磋琢磨の結果優れた体験を持つものが多くなっているためかと思います。toCでも重要ですが、どちらかというとドメインの理解や自分の仕事をどれだけ効率化してくれるかが重視されるイメージです。
感動はできるだけ早いタイミングで
ユーザーは忙しく、私たちのプロダクトを試す以外にも仕事は山ほどあります。興味を持って使い始めてくれたユーザーに、できるだけ早いタイミングで価値を提供しましょう(PLGではクイックウィンと呼ばれます)。
クイックウィンを考える際はまず「ユーザーがどのタイミングで最初に価値を感じるか」を考えて定め、続いてその要素に向かう道を整備します。価値を感じるタイミングというのは「このサービスは自分の仕事を助けてくれる!」と思える瞬間です。新しいサービスの使い方を学ぶのは学習コストが必要で労力がかかります。そのコストを払うに足るサービスだと早い段階で思ってもらうことが重要です。
道の整備とはゴールまでの摩擦を徹底的になくすことで、初期に必要のない設定はスキップできるようにしたり、UIや文言を工夫してユーザーが理解に困らないようにしたり、オンボーディングがあと少しで終わることを示してモチベーションを維持させたりなどが挙げられます。
PLGのクイックウィンについては以前別のnoteに詳しく書いたので、よかったら読んでみてください↓
期待のレベルは上がる
感情のグラフの話に戻ると、ユーザーの中の期待のラインは年々高くなっています。昔は質素な機能で十分ありがたかったのが、今では洗練されたUI、画像や動画などリッチな表現、アカウント連携など様々な要素が普通に求められます。NotionやFigmaなどの浸透でリアルタイムコラボレーションも当たり前の世界になってきました。こういった機能を実装するのは骨が折れますね。特に既存のシステムに後から追加しようとするとある程度の工数が必要です。すべてトレンドに乗る必要があるとは思いませんが、追従せずにリリース初期の頃の基準のまま運用するとやがて「古い」という印象を持たれることになります。ユーザーの期待のレベルが徐々に引き上がることは意識して、必要な要素は時間をかけて実装していきましょう。
求められる当たり前品質が高まることは悪いことではまったくありません。ひとりのユーザーとして考えると洗練されたUI/UIのプロダクトが増えるのは嬉しいことです。技術やフレームワークも進化していて、良い体験を短い時間で実現しやすくもなっています。世の中全体のプロダクトのレベルがあがることは歓迎すべきことだと思うので、個人やチームとしては世の中の優れたサービスをたくさん触って、スタンダードがどのあたりにあるのかの基準を更新し続けることかなと思っています。
感動ゲージが溜まるとクチコミになる
期待を超えたときに生まれる感動は、高頻度で複数回あればベストです。感動の回数が増えるとユーザーはプロダクトのファンになり、ファンになると知人に紹介してくれます。クチコミはサービスにとって重要な成長エンジンで、特に初期の頃は超強力です。ユーザーは何かしらのコミュニティに属していることが多く、そこにはそのユーザーと似た悩みを持つ人たちがいます。その人たちに熱量高く自社のプロダクトを紹介してもらうことは、サービスが最初に目指すところだといえます。PLGではクイックウィン、つまり最初の価値提供にフォーカスされて語られることが多いですが、クイックウィン達成後もいろいろなシーンでアハ体験を積み重ねていくように設計できると良いと思います。
感動を生むためには何をしたらよいでしょうか?ユーザーがプロダクトに何を求めているか、理解しておく必要があります。どういう課題を解決したくてサービスを使っているのか、利用前はどういう情報に触れているのか、競合にはどのような機能があるのか、サービスを使ってる人は現場のスタッフなのかマネージャーなのか。ユーザーの抱える文脈によって最適な体験は異なるでしょう。これらの理解にはユーザーインタビューやアンケート、データ分析などが役立ちます。
また、全員向けに作られたサービスは誰にも刺さらないという原則も意識しておきましょう。感動は「これは私のために作られたサービスだ!」という体験なので、ある程度何かの課題に尖らせる必要があります。どういう人に何を届けたいのか?明文化してチームで共有しておけると一貫性のある体験を提供できます。
ユーザー体験を時系列でプロットする
サービスをずっと改善し続けているチームメンバーは、ユーザーに比べてプロダクトを知りすぎてしまいます。どこに何のボタンがあるのか、ある機能を使うためには何をすれば良いのか、すぐに分かってしまいます。たまにユーザー目線に立ち戻り、初見のユーザーがプロダクトを見たらどう思うか?をプロットしてみる機会を設けましょう。
最初はスマートに設計されていたオンボーディングが、後から追加された機能によりゴチャついて分かりにくくなることがあります。サービスの成長に伴いターゲットユーザー層が拡大して、言葉のチョイスがフィットしなくなることがあります。定期的に初心に戻り、いろんなユーザーに憑依しながらプロダクトを試してみると発見があります。特にオンボーディングは重要です。オンボーディングの間はまだユーザーとプロダクトの間に信頼関係ができていないので、期待通りに動かなかったり導線が滑らかでなかったりするとユーザーの心情に大きくネガティブな影響を及ぼします。人間同士では第一印象が悪かった場合、リカバリーするのに半年以上かかるそうです。ユーザーが何を望んでプロダクトを使い始めたのか、どういう言葉遣いだと安心するのか。ホテルマンのサービスのように心地よくナビゲートしたいものです。
おわりに
ユーザーの気持ちを時系列でプロットし、感動を増やしてガッカリ体験を減らすことでサービスを改善する。これは元々10年ほど前の上司が言っていたやり方です。あれから色々とクールなサービスに触れて来ましたが、まさにこういう設計ができているなと感じます。
自分の課題を見事に解いてくれるサービスに出会った時、感動が生まれます。メッセージや動画で感動を誘うのではなく、ユーザーに寄り添う形で「まさにこれが欲しかった」という感動が提供できればそれ以上のことはありません。
プロダクトマネージャーをやりながら学んだことを「PdM日記」と名付けて書いてます。よければ読んでみてください:)
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