独身でも、結婚でもない暮らし方-「女ふたり、暮らしています。」を読んで
尊敬できて気の合う友人同士、一軒家を購入して猫4匹と共に暮らすキム・ハナとファン・ソヌ。
「女ふたり、暮らしています。」はそんな2人のエッセイ集である。
選んだきっかけ
韓国人作家の小説は近年話題になっているものも多く、私も何冊か読んだことがあるが、エッセイを読むのは初めてだった。
私は幼少期から韓国ドラマの英才教育を受け、韓国ドラマ大好きに育った上、高校生くらいから韓国アイドルを推している人生のため、韓国文化や韓国語、韓国人の暮らしにとても興味があるし、馴染みもある。
2度韓国旅行にも行ったことがある。
韓国の文化や生活に触れる中で感じたのが、日本と似ていて世の中の「当たり前」の価値観が強く、抑制されている部分が大きいのではないか、ということ。そして、日本よりももっと、恋人がいること=恋愛を重要視しているのではないか、ということ。
韓国は日本よりも年功序列の考え方が強く、年上には基本敬語で話さなくてはいけないし、学歴至上主義の考え方も強く大学受験が厳しいため、よく違法なやり方での受験などがニュースになっている。
恋愛面で言うと、韓国ドラマは基本的に恋愛が主軸になっているものが多いし、ソウルの街中では恋人同士らしき人が圧倒的に日本より多く感じた。
主観かもしれないけれど、友達と2人で入った夜カフェの店内が自分たち以外現地のカップルだったので、あながち間違っていないのではないかと思っている。
そんな韓国で恋人同士ではない女性2人が結婚でも独身でもなく2人で暮らしていくことを選んだと言うのだから、普通とか当たり前とかに焦らされがちな同じ女性として、その暮らしが気になってしまった。
読んでみて
まず最初に思ったのが、素直に「この暮らし羨まし〜!」だった。
一目惚れして購入しただけあってお家が素敵すぎる。
途中途中に写真が添えてあるので実際の様子がわかるのだけれど、西陽が差し込む部屋の中猫ちゃんたちが佇んでいるのがなんとも絵になるし、本好き、お酒好きのお二人の本棚には本とお酒の瓶がぎっしりでこれまた素敵。
家だけでなくお互いの関係性もなんともあたたかい。性格が正反対で喧嘩もあったそうだが、今では互いの凸凹を補い合って暮らしているし、気が合って趣味も似ている友人だから、1番の友人がいつも家にいてくれる状態。1番の飲み友達といつでも気が向いた時に晩酌できるなんて、こんな幸せなことはないだろう。
そして、この本を読んで何より良かったのが、どんな暮らし、どんな家族を選ぼうが幸せは人それぞれで、結婚することだけが幸せではないと言うことに心強い証人ができたということ。
特に印象的で爽快だったのが「結婚していないからわかるんですが」というエッセイ。好きな言葉を引用すると、
私は今のところ子供が好きで家庭を持ちたいと考えていて、結婚もしたいとは思っているけれど、「今恋人がいないのはヤバい」とか、「結婚適齢期に結婚しなければ」とか思ってしまうのって私も世間のおせっかいさんに焦らされているだけなのだろう。実際にまだ彼氏できないの?とか、結婚するなら早い方がいい、とかよく言われるし。
焦って妥協して誰かと付き合ったり暮らしたりしても、そんなの自分の人生が食い潰されるだけ。わかっているから本当は私だって焦りたくない。
作者の2人もそんな世間の目にさらされてきたけれど、2人で幸せに暮らしているし、現に「結婚しなくても別にどうってことはない」のだ。
それを証明してくれて、肯定してくれるから、このエッセイが好きだ。
作家のチョン・セランさんも帯で以下のように書いている。
そうなのだ。結婚や、暮らしというものにフォーカスしてはいるものの、このエッセイは「普通に生きるのが最高」って思っている人たちや社会に反発したい時に味方になってくれるエッセイなのだ。結婚ももちろん素敵なことだけれど、いざ結婚すること自体が自分にはあっていないのかもしれない、それでも人と暮らしていきたいと思うことがあれば、さまざまな家族の形があっていいのだと思う。
そして、こういう柔軟な考え方がもっと広まれば、人々はもっと幸せになれるんじゃないかと私も思っているから、この本を読んで、または私の感想を読んで、少しでも一人一人の生き方やさまざまな家族の形態が肯定される社会に近づくことを願っている。