眠れない夜、心音と秒針
夜は、心に優しくない。
暗い空に覆われた、嫌になるほど静かな世界に、もともとあった孤独感がもくもく膨らんで、不安がずんずん大きくなって消えたくなってしまう。
テレビから聞こえる賑やかで楽しげな声が今はやけに耳障りだ。
いつも聴いているお気に入りの音楽もなんだか今は受け付けられない。
自分の心音と秒針の音が孤独感と不安を増幅させる。
ぼーっとして上手く頭も回らない。
いつもだったらさほど気にならないような些細なことがやけに気になって引きずってしまう。
一度涙が溢れてしまうともう止められない。
起きたら誰一人私を知らない別の世界に飛ばされていないかな。
自分の存在が、自分に関する記憶ごと消えてしまわないかな。
そんな馬鹿みたいなことを回らない頭で真剣に考える。
考えたって現実は変わらないし、寝る時間が遅くなって結局自分の首を絞めることは百も承知なのに、ぐるぐるぐるぐる考える。
死にたいかと聞かれると正直分からない。
苦しいのも辛いのも嫌だ。
行動に起こすほどの気力も体力もない。
でもこの世界でこのまま生きていくのも苦しく辛い。
ただ、パッと、ふわっと、この場から、この世界から消えてしまいたい。今置かれている状況から逃げたい。何もかもを捨てたい。
そんな願いは叶いっこないのだけれど。
またこうやって私は一日を無駄にする。
どこで間違ってしまったんだろう。私はどうすればよかったんだろう。生まれた時から運命で決まっていたとしたら、なんて残酷なんだろう。
私には、この世界に生まれてよかったと、心から思える日は来るのだろうか。