#24 藤原基央に“学ぶ”
僕は2020年5月に祖父を亡くした。現在住んでいる場所に引っ越してきてから、地方に住む祖父母には年に3回ほどしか会えていなかった。
葬儀で会った祖父は、既にもぬけの殻だった。祖父の姿を見た瞬間、涙が止まらなくなってしまった。祖父の最後を見送っている時、僕の頭の中で藤原基央が語りかけてきた。
一緒に見た空を忘れても
一緒にいた事は忘れない
祖父との日々がありありと思い出される。ふたりで歩いたあの公園。ふたりで釣りにも行った。釣りあげた魚を触れない僕に、「なんで釣りにきたんなら!」と笑ってくれたりもした。祖父は大工をしていたこともあり、小学校の入学祝いに勉強机を作ってくれた。今でも使っている。
祖父を見送った後、車の中で藤原基央の言葉が頭の中を駆け回る。
簡単なことなのに どうして言えないんだろう
言えない事なのに どうして伝わるんだろう
………………………………………
生きる力を借りたから
生きている内に返さなきゃ
ありがとう。ごめんね。嬉しい!楽しい!……。
簡単なことなのに、どうして言えなかったんだろう。
言えない事なのにどうして伝わったんだろう。
僕は祖父に生きる力をたくさん借りた。生きている内に返さなきゃいけなかったのに、何も返すことができなかった。
果たして僕は、人生を楽しめているのだろうか。人を喜ばせてあげられているのだろうか。大切な人に、想いを伝えられているのだろうか。悲しんでいる人に、寄り添ってあげられているのだろうか。藤原基央は、こんな時でも僕に語りかけてくれる。
いくつのさよならと出会っても
初めましてとは別れないよ
あなたが変えようとしたあなたを
きっと覚えているから
未来の私が笑ってなくても
あなたとの今を覚えてて欲しい
………………………………………
未来の私を思い出せたら
あなたとの今を忘れなくていい
祖父が亡くなってもうすぐ1年が経つ。僕は20歳になった。未来の僕が笑ってなくても、祖父との今をありありと覚えている。未来の僕を思い出せなのなら、祖父との今を忘れなくていい。
4月からは大学2年生だ。後輩が入ってくる。新入生歓迎会でサークルの勧誘をしていた時、15人ほどの1回生を発見したので声をかけた。サークルの説明というよりも、履修登録の説明をしただけになってしまった。
1回生はみんな初々しくて元気だった。サークルに入ってくれる人もいた。4月から始まる新学期も、とても楽しみだ。
じいちゃん、俺は20歳になったよ。一緒にお酒飲みたかったなぁ。天国でもいいちこ飲んでるのかな。俺はまだこっちの世界で頑張るよ。いつかそっちに行ったら、一緒にいいちこ飲もうね。
ありがとう。あなたは光…。
BUMP OF CHICKEN 「花の名」「morning glow」「pinkie」「コロニー」から引用。