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★誕生日の物語#14

くすくすと楽しげな妖精たちの囁き。
艶やかなるセイレーンの歌声。
遥か遠くまで届くのは、この世ならざる旋律に乗せた海の眷属たちの祝福の声だ。
花嫁衣装に身を包んだ私は、花びらを閉じ込めた金剛石の小舟に揺られながら、地の王の末姫として、あるいは一輪の花としてあの人の元へと嫁ぐ。

贄に選ばれたと憐れむ声はあった。
コレは葬送なのだと言うものもいた。
地の民の大半が、この婚姻を悲劇として捉えていた。

けれど私は知っている、識っていた。

星に焦がれ、大地の鼓動を愛し、風を読むことが好きなあの人が、私を見染めてくれたことを。
私もまた、雄大なる海に焦がれ、捧げられた愛の歌とともに彼に惹かれ、想いを傾けずにはいられなかったことを。
本来ならば交わるはずのなかった海と地の者が果たした秘密の逢瀬は、気が遠くなるほどに繰り返された星の巡りのほんの気まぐれがもたらした奇跡だったのだ。

今日この日をどれほど待ち侘びたのか、きっと地に棲まう誰にも理解はされないけれど。
災禍を祓うための犠牲ではなく、私は望み、望まれ、歓喜と愛を抱いてあの人の元へと向かう。

*誕生石・誕生日花*
ラウンドダイヤモンド:永遠の愛
ペリドット:平和・安心・和合
クレオメ:秘密のひととき
アザレア:恋の喜び

***

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あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
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