【オーダーメイド物語】誕生日の物語#12
庭園の片隅に設た小さな東屋で、読みかけの本を膝におき、蒼紫の花びらがさらさらと庭園を流れていくのを眺める。
思い出すのは、神から賜った刀を手に、悲劇の連鎖を断ち切らんと戦い続けるあの人の瞳。
悲しいくらいに透き通った、強い眼差しとその横顔。
そして、差し出された誓いの言葉。
ここは現世から隔離された、狭間の聖域だ。
剣士たちに『死なずの加護』を与え、戦場へと送り出すための、祈りの巫女を迎えて閉ざされる鳥籠にして、私を繋ぐ場所。
生まれ落ちたその瞬間から、定められていたその役目へ、疑問など一切持ちはしなかったのに。
なのに、あの日、この場所で、誰よりも高潔で、誰よりも純粋なあの人は、己の魂に紐付く分身たる刀を手に、いつかその枷を解いて見せると笑ってくれた。
世界の礎となる覚悟をした私の心をも揺らし、平定された世界を約束してくれた。
あらゆる望みを来世へ託し、今世はすべてを捧げるとした私への、それは確かな福音だったから。
私は今日も、平定される世を望みながら、ただひとりに向けた祈りを捧げる。
*誕生石・誕生日花*
モスアゲート:育む愛
ペリドット:平和・安心・和合
リンドウ:悲しんでいるあなたを愛する・正義・誠実
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あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
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