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【小説】ソレット

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人類史においてターニングポイントとなった二度の世界大戦。その凄惨さは充分に知られているが、その史実は全てではない。  非公的組織〈ソレット〉は、その凄惨な歴史の裏側で誕生し、1世…
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記事一覧

【第0章|十字架に掲げて】〔第0章:第1節|{疾走:シッソウ}〕

 蒼い空と暗い森。  さも誇らしげに嫌みたらしく、したり顔で輝く満月。  降り注がれた黄ば…

裏表日影
3か月前
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【第0章|十字架に掲げて】〔第0章:第2節|{任務会議:ミーティング}〕

 十字架を模った、左右対称の西洋剣。名をそのままに「十字剣」と呼ぶその剣は、芸術的で装飾…

裏表日影
3か月前
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【第1章|かつての針子たちの楽園】〔第1章:第1節|トンネルを抜けると〕

 ――二年ほど前。  売り文句であった「白銀の世界」は、あまりに鬱屈的であった。  降り…

裏表日影
3か月前
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【第1章|かつての針子たちの楽園】〔第1章:第2節|荒んだ観光集落〕

 暗く響くトンネルから出たワインレッドのSUVは、早い昼の淡い空の下、劣化の少ない舗装さ…

裏表日影
3か月前

【第1章|かつての針子たちの楽園】〔第1章:第3節|Associate Assemble〕

「やあ」  〈十字ソレット〉のヴァイサーは、二人制である。  統率や決断、命令を担う剣のヴ…

裏表日影
3か月前

【第1章|かつての針子たちの楽園】〔第1章:第4節|欠片〕

「――蜘蛛の巣、……鳥の羽、……毛? 埃? 樹の皮かな?」  落ちていた謎の糸玉状の塊を…

裏表日影
3か月前

【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第1節|地方創生観光地区調査〕

 二日目。  時計の針が太陽を差す頃。針子村の駐車場に、白いバンが停まった。  降りてきたのは三人。  全員が紺色のスーツを着用し、ネクタイを締め、名札を下げていた。足元だけはビジネスシューズではなく、ハイキングシューズだった。  アンテツとバンキは黒縁の眼鏡を掛けると、ドンソウと共に駐車場を出る。  駐車場から南のセンター通りとの間。  民家の前の古い簡素なベンチで、眠りこけるように座っていた老人に、アンテツは声をかける。 「こんにちは」 「…………」 「…………こんにち

【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第2節|Phenomenon〕

「ホントにこれ登ったの?」  『北の岩崖』を見上げるのは――クフリとガンケイ。  月明かり…

裏表日影
3か月前
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【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第3節|手に余りある枯れ尾花〕

「朗報。――帰って来た」  メイロの声に待機していた一行が、それぞれ立ち上がる。  駐車場…

裏表日影
3か月前

【第2章|{奇襲劇:The Accident}】〔第2章:第4節|憂いの乙女〕

 Once upon a time。  まあ昔とは言っても……ここ数年の話ですが。  と…

裏表日影
3か月前
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【第3章|闇の継承者】〔第3章:第1節|陽は傾き、夜は蠢く〕

 南奥展望台――駐車場の奥に停車した、白いバンとワインレッドのSUV。  傍らに、胸に金…

裏表日影
3か月前
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【第3章|闇の継承者】〔第3章:第2節|人の形をした「何か」〕

「……アア……ホンットに来やがった……」  女はその真っ暗な瞳で、四人を見返していた。 …

裏表日影
3か月前
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【第3章|闇の継承者】〔第3章:第3節|第七衛生管理備局〕

 ――『弾針』は突き刺さらなかった。  グリベラの肌に触れることなく――弾かれて、金属の…

裏表日影
3か月前
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【第3章|闇の継承者】〔第3章:第4節|咆哮〕

 ぶっちゃけ――囮班に取っては喜ばしい事象であった。  傷つけないよう殺さないよう気を遣っていた対象は、改造人間であったことが発覚――そのまま斬り刻んで良い――どころか逆に、絶対に世に出してはならない、危険極まりない滅殺対象になったのだ。  グレンはその通り――『殺して良い。寧ろ殺せ。絶対に村の外に出すな』と命じた。  十字剣が役に立つとき。  ――デメリットを言うなれば。 「割とこいつら、力強いじゃん!」  人間にしては――平均年齢が高めだった人体にしては、数値にせずとも大