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短編小説などをまとめています。
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2023年7月の記事一覧

desty2 長編小説 R15 BL 9431文字

desty2 長編小説 R15 BL 9431文字

destyー薄紅のきみIIー

海辺に近いと沖に向かうカモメが朝を知らせてくれる。

路田旅館の五階にある特等室、胡蝶蘭の窓はブラインドと厚手のカーテンを締め切ったままだ。

それでも何処からか初夏の朝日が隙間から入り込んで絨毯にボーダー柄を作る。

夏樹の肌とシーツは真昼の日差しを浴びるミルクで出来た真珠の様に俺の肌を一晩中溶かしこんでいた。

事後は口付けあっていつの間にか深く眠っていた様で、

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desty 長編小説 R15 BL 5290文字

desty 長編小説 R15 BL 5290文字

desty
ー薄紅のきみー

あらすじ

関東の温泉街のはずれにかつて九代に渡り栄えた老舗の温泉旅館があった。
しかし十代目当主に当たる若い男が先代を亡くし旅館を廃業させてしまった。
それから偶然の出会いを重ね見知らぬ男たち同士が集まり
起死回生を図り旅館を一流の男婦旅館として復活させるまでのストーリーをえがく。

登場人物紹介

路田佑磨 
路田旅館十代目当主。260年続いた旅館を自分の代で閉業

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短編小説 一歩一歩 1261文字

短編小説 一歩一歩 1261文字

ー自分で歩めなくなったらお前の所へ行く覚悟はできているからなー

そう慈夫は今朝も呪文のように自分に念押しして目覚める。
仏花の水を取り替え、仏壇に線香をあげる。数年前亡くなった妻のものだ。
それらが終わると、慈夫は身支度を始めた。

午前中、慈夫が到着したのは人通りの多い市道だった。
遠くに車通りの激しい通りもある。
慈夫の手元にあるのは安全性の基準を満たしたことを証明する緑のマーク。
それがつ

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掌編小説 いっぽいっぽ 318文字

掌編小説 いっぽいっぽ 318文字

 昔あるところに杖をついているおじいさんがいました。

おじいさんは歩くときにつえを使いますが、背筋がピンと伸びていました。

町をあるくと杖が カンカンカンと軽快な音をたてているのでおじいさんを振り返る町の人もいました。

おじいさんが一心不乱に歩くのにはある理由がありました。

数年前
天国へのぼったおばあさんとの約束でした。

「おじいさん、わたしがいなくなっても気落ちしないで足腰が弱らない

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短編小説ふれる 完全版完結8210文字

短編小説ふれる 完全版完結8210文字

ふれる

ふれられない。

駿二の手はとても良い手をしているが日々香は知っていた。
それは彼に触れられないから愛おしいのだということを。

アンティーク調のティーカップの細い持ち手に添えられた長い薬指。

上に綿棒でも乗りそうな一束ひと束が長いまつ毛。

少しマットなオークルベージュの脱色された髪。

日々香はそう思うとジンジャーティーをまた口に含み、目の前のブラック調のクッションシートに座る恋人

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