掌編小説 いっぽいっぽ 318文字
昔あるところに杖をついているおじいさんがいました。
おじいさんは歩くときにつえを使いますが、背筋がピンと伸びていました。
町をあるくと杖が カンカンカンと軽快な音をたてているのでおじいさんを振り返る町の人もいました。
おじいさんが一心不乱に歩くのにはある理由がありました。
数年前
天国へのぼったおばあさんとの約束でした。
「おじいさん、わたしがいなくなっても気落ちしないで足腰が弱らないよう毎日運動を続けてくださいね」
おばあさんが言い遺したことばを、おじいさんは大切に胸に抱えて一歩一歩日課として歩いていました。
ー天国まで、自分の足で歩いていくつもりさー
おじいさんはおばあさんにまた会えるその日まで、ちいさな町を一歩一歩踏みしめてあるきました。
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