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北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周【66】22日目 長万部〜森③ 2017年11月3日

週末や有休を利用して、50代のサラリーマンが、ロードバイクで北海道一周した記録。
2017年5回目の渡道では、初冬の渡島半島を走っています。長万部を出発して南下し、行手に渡島駒ヶ岳の姿が朧げに現れました。

▼「週末北海道一周」のここまでの記録はこちらです。よろしければご笑覧ください。

◆ 渡島駒ヶ岳

▲ 山頂は微妙に雲の中

今では多くの人にとって、北海道へは飛行機で行くものであり、往時の青函連絡船の旅のことなど語るのは時代錯誤かもしれません。しかし、私にとって北海道への道といえば、玄関口は函館であり、駒ヶ岳は北海道の象徴として私を出迎えてくれる存在でした。第一希望の大学に合格して北海道に渡った最初の夜も、大沼の畔のユースホステルで過ごし、翌朝、快晴の空を背景に優雅に裾を引く白銀の駒ヶ岳を仰ぎながら、札幌へ向かったものです。

大学を卒業してからというもの、久しくこのエリアを訪れることはありませんでしたが、1999年の夏休み、大間からフェリーで函館に渡り、函館からMTBで大沼へ走って来ました。大沼湖畔をしばし走ってふと顔を上げた時、昔と変わらぬ姿で、駒ケ岳がそこにありました。その瞬間の歓びは、数多い自転車旅の思い出の中でも、今も鮮明に記憶に残る格別のものでした。

▲ 1999年夏、大沼湖畔にて

しかし実際は、この山はとんでもない暴れ者だといいます。今の美しい双耳形の山容も、数回にわたる噴火による山体崩壊の結果です。1640年の噴火では、崩れ落ちた土砂が噴火湾に流れ落ちて津波を発生させ、また河川を堰き止めて、大沼の湖沼群を作り出しました。
そのような歴史といい、山の形といい、会津磐梯山によく似ているなあ、と思います。猪苗代や裏磐梯もまた、東北に赴任していた頃には幾度となく訪れた、大好きな土地です。

▼ 駒ヶ岳の災害史については、こちらを参考にさせて頂きました。

落部の先にも、海岸沿いに小さな集落と「石倉」という駅があったので、国道から逸れて寄り道してみました。改装工事中とおぼしき一般民家が一軒あり、そこだけに人が集まっていました。

道はすぐに行き止まりになってしまい、早々に国道へ戻りました。
その先、国道は高台を走ります。森まではもう10キロ足らずとなりました。

駒ヶ岳の姿が一段と大きくなってきました。海のうねりが太陽光線を浴びて美しい模様を描いています。

▲ 妖しげな初冬の噴火湾夕景

南に進むに従って、観光バスが増えてきました。通行量そのものもも多くなった気がします。相変わらずの曇り空ではあるけれど、雰囲気が明るく開けてきたような気もしました。

◆ 森町の一夜

今日唯一のトンネルを抜け、箱館戦争に際し榎本武揚が上陸した地点として知られる鷲ノ木はうっかり通過してしまい、午後4時過ぎに薄暮の森駅前に到着しました。
この季節の北海道ライドは、日没との競争。去年のこの時期に白糠~十勝の海岸線を走った時など、寒冷前線の通過と重なったこともあり、午後3時過ぎにはもう真っ暗になってしまったものです。

▲ 森駅前にゴール

予約してあった駅前のビジネスホテルで旅装を解いた後、軽いクールダウンということで、ライトをつけて街をひとまわり走ってみました。
森の市街地の北は海、南側は緩やかな斜面に住宅地や学校が立地しています。町の中心は駅の東側、港との間に広がっていました。商店街は道幅も広く、地場の大手スーパーも出店しています。飲食店もそこそこの軒数が見られました。

海沿いを少し走ってからホテルに戻り、ユニットバスに湯を張って体を温めました。思い起こすと「週末北海道一周」ライドで、大浴場のない宿に泊まるのは、実は今夜が初めて。

ホテルに居酒屋が併設されていました。店頭のメニューを見ると、なかなか魅力的な旬の肴の名が並んでいます。かなり心惹かれましたが、今日はむしろ気軽な寿司屋のカウンターで呑みたい気分でした。

もう一度、夜の帳が下りた静かな街に出ました。
森にはミシュラン一つ星の有名な寿司屋があります。おおいに興味は惹かれ、店の前まで行ってはみたけれど、本日の私の出立ちは、サイクルウェアの上からベストとウィンドブレーカー、下半身はロングタイツの上からクロップドパンツ、足元は携帯用の蛍光色のランニングシューズ。こんな格好で暖簾をくぐるのは、さすがに気が引けました。

そこで、携帯ショップ以外はどこもシャッターを下ろしたメインストリートへ戻ってしばらく歩き、最初に目に止まった寿司屋に入りました。

▲ 早くも寝静まった森の商店街

年配のご夫婦二人で切り盛りしている店に、先客は一人きり。地元の常連のようで、共通の知人の話に花を咲かせていました。

生ビールを一杯空け、冷酒を頼んだあたりで、大将が「お客さんはどこにお泊りですか?」と話を振ってくれ、私も会話に混ぜていただきました。

先客は土木業を経営しており、地元の商工会の要職も勤めているそう。今は息子さんに社長を任せ、ご自身は会長として、悠々自適なんだ、といいます。「息子も社長になってから、親父のこと見直してくれたようでさ。『オヤジ、こんなことがあるんだけど、どうしたらいい?』なんて相談してくるんだよ。まあ、ちょっと嬉しいよ」。適度に酔いが回った赤ら顔で、楽しそうに話されます。昼に八雲の中華料理店で隣合わせた親子の姿が脳裏をかすめました。

「どうして森に泊まってるの?」と問われ、自転車旅行をしていること、森は幾度も鉄道で通過しており、一度泊まってみたいと思っていたこと、駒ヶ岳が大好きであること、など話します。会長も大将も、地元への愛情は人一倍であるようで、大層喜んで下さいました。

「駒ヶ岳は俺たちの宝だよ。360度、どっからみても美人でさ」
目を細めて会長が話します。聞いている私も嬉しくなってきました。
2時間ほど楽しい時間を過ごし、「桟橋通りで変なのに引っかからないようにね。まあ、婆さんしかいないけどさ」と見送られて店を出ました。桟橋通りというのは、かつて噴火湾を横断して室蘭と結んでいた定期船の発着所の近くで、付近はキャバレーなどが集まっている一角だそう。
足を運んでみたが、お姐さんの姿どころか通行人の一人も姿はありませんでした。

▲ 森桟橋の歴史を語る看板

ー 第22日目 以上 ー
【今日の走行記録】
走行距離 71.3Km
走行時間 2時間55分
平均速度 24.3Km/h 最高50.4Km/h
獲得標高 464m
消費カロリー 1466kCal


◾️◾️◾️

22日目はここまで。最後までお読み頂き、ありがとうございました。翌日は道南の活火山・恵山を目指します。宜しければ続きもお読み頂ければ幸いです。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、そのほかの自転車旅や海外旅行の記録などを綴っています。宜しければこちらもご覧頂ければ幸いです。


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