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#10 水の中を巡る旅 奄美大島・2023年夏①
「hさんかな…お久しぶりです。ちょうど1年ぶりですね」
蒸し暑い夕暮れ時、古民家を改装したゲストハウスの庭先に車をとめて、荷物を下ろしていると、植え込みの影から宿主のTさんが、人懐こい黒猫と一緒に現れました。
奄美大島の北端にある空港からレンタカーで島を縦断。主要道を走れば80キロ、約2時間〜2時間半のドライブ。今日は、毎年立ち寄るうなぎの老舗で昼ごはん(うな重上が、たった2500円!)の後、名瀬の市街地を少し散策し、遠回りして西海岸の大和村・宇検村を巡りながら南下。
海辺の小さな集落にあるカフェに立ち寄ったりしながら、17時前に瀬戸内町の阿木名集落へ到着しました。
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奄美南部の大島海峡へ潜りに来るのは、これで3年連続。隣接するガレージを改装した居酒屋も、懐かしい風景です。
▼ 水の中を巡る旅 これまでの記録はこちらです。
◆ 奄美の魅力に取り憑かれ‥
初めて奄美大島へ来たのは2007年9月。ダイビングのライセンス取得からずっとお世話になっている埼玉のDSのショップツアーで、奄美北部のダイビングを楽しみました。
このときは龍郷町にある宿泊施設を備えたショップでお世話になり、大昔に隕石が落下して形成されたという倉崎海岸でのナイトダイビング、大仏サンゴなど多様で豊かな珊瑚礁を楽しむボートダイブ、また夕暮れ時はニシキテグリを狙ってネチネチとマクロダイブなど、様々な海を楽しみました。
その後しばらく、北海道・東北や海外を転勤して歩く時期が続き、再び奄美大島へやってきたのは10年以上を経た2018年。夏まっ盛りの名瀬へ出張する機会が訪れました。
3日間の滞在中はほとんど名瀬で仕事しており、観光する間もなく東京へ戻ったのですが、その中で半日ほど、鹿児島で働いているメンバーと一緒に島の南部へ足をのばす用件がありました。
名瀬から山の中を走り、最初の訪問の時にマングローブ林をカヌーで巡った住用川の河口を通り過ぎます。さらに長いトンネルをいくつも抜けると、ようやく長い下り坂の先に大島海峡と加計呂麻島が見え、瀬戸内町の中心部である古仁屋に入りました。真夏の強い太陽のもと、海峡は華やかに煌めき、町は観光客で活気にあふれていたものです。
長い道のりの先に待っていてくれたこの風景と小さな港町を、わたしはすっかり気に入ってしまい、次は仕事抜きで来よう、と心に決めました。
しかし、当時はコロナ禍前で、水の中を巡る旅先はほぼ沖縄か海外。
また、奄美の中でも移動に時間がかかる南部で潜るには、三泊四日以上欲しいところですが、当時の職場では、これくらいの中途半端な連休というのが取りにくい状況にありました。
やっと念願叶い瀬戸内町へやって来たのは、新型コロナ第5波が収束しつつあり、また個人的には転職して京都へ移住して1年が過ぎた2021年秋のことでした。
初めての奄美ひとり旅。古仁屋に宿をとり、2日間6ダイブ。
奄美大島南部の海の特徴は、なんといっても多様かつ元気な珊瑚礁だと思います。豊かな森に包まれた陸上の豊かさが、そのまま水中につながっていると実感させられました。大物や魚群狙いのダイブサイトではありませんが、フォト派は何度潜っても楽しい海。
また、夕暮れ時に埠頭に腰掛けて眺める加計呂麻島の夕景も、晴れた朝に高知山の展望台から見渡した大島海峡の全景も、心に残るものでした。
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その魅力にひかれ、2022年も7月の三連休を利用してやって来ました。古仁屋にはAコープもファミマもマツキヨもあり、呑み歩きにも便利なのですが、その少し前に使い始めた旅のサブスク”HafH”で泊まれるゲストハウスが一山越えた静かな集落にあるのを見つけ、こちらに宿を取りました。古民家を改装した昔懐かしい雰囲気も、若い宿主Tさんの人柄も、甘えん坊の黒猫も、また昔のユースホステルのような旅人同士の触れ合いや、隣接の小さな居酒屋で過ごした時間も、またここへ戻って来たいと思わせてくれました。
◆ 初日の夜、黒糖焼酎と共に
さて、このダイビングエリアは、4月〜7月上旬にかけてアマミホシゾラフグが砂地に描く「ミステリーサークル」を目当てに多くのダイバーが集まります。ミステリーサークルができるのは、満月と新月の前後。ここにぶつかるとDSも宿も混み合います。混んでいる場所は嫌い、評判のラーメン屋でも行列は忌避したいわたしは、去年も今年も、敢えて満月と新月の中間の週末に来ております。
昨年は、7月の三連休がちょうどその中間にあたり、連休に有休を1日足して来ることができましたが、今年はそうまくはいかず、三連休前の週末に2日間の有給休暇をとり、合わせて4日間のスケジュールでやって来ました。通常、この時期は仕事もひと段落するので、まあ大丈夫だろう、と。
2日間休むので、念のため仕事用のパソコンも持参しましたが、初日は面倒な連絡もなく、散発的なメールのやり取りで事足りており、一安心。
17時を過ぎたら、堂々と仕事を忘れます。明日からのダイビングに備えて器材をメッシバッグにまとめ、カメラとGoProの準備も整えてから、隣接する居酒屋へ。
最初は、見知らぬ奴が来た的な目で見られましたが、「おお、声聞いて思い出した!」と、Iターン5年目の大将。
カウンターの隅に腰を下ろします。先客は、介護のために東京と奄美を行き来しているという女性が一人。色々話していると、東京でも赤坂、青山、目黒など庶民には暮らせないところにばかり住んでおられます。お帰りになってから大将に聞くと、地域では名士の一族だそうで「いやあ、緊張しましたわ」とのこと。
この旅の少し前、奄美群島は梅雨末期の大雨に見舞われました。
大将はここから少し離れた集落に住んでいるそうですが、今年は川の氾濫などが発生したそう。さらにまた、その復旧ボランティアの受入を巡って、集落内でも旧くからの住民とIターン者とのいざこざもあって大変、だったようです。
やがて地元でガス工事店を営んでいるご夫婦が呑みに来て、ローカルなお話を色々と伺います。
奄美には毎年来ている、と島の人に話すと、けっこうな確率で「いったいどこが良くて来んの?」と訊かれます。暮らしていると良さが分からないというのが「島ん人あるある」なのだそう。でも、それはきっと島の人達の慎み深さ故だと感じます。
まだ加計呂麻島へ行ったことがない、というと、そのビーチの美しさ、人々の素朴な優しさを、色々と聞かされました。今回は最終日に少し時間があるので、フェリーに乗って、タッチくらいはしてきたいと思っているのです。
行くなら現地でレンタカーか原チャリのレンタルが必須、それも週末だったら金曜日中には予約した方がいいこと、また大島からフェリーでレンタカーを持ち込むのは却って高くつくし、帰路の欠航リスクなどが低くないのでレンタカー会社が嫌がること、などを教えて貰いました。
部屋へ戻り、フェリーの時刻を調べてみましたが、加計呂麻島での滞在時間を最小限にしても、それから空港への2時間半の道を考慮すると、予約している飛行機に間に合わないことが判明。
加計呂麻島は、そのためにきちんと1日とって行かないと難しそうです。
🔲ダイビング初日
明けて7月7日。
奄美地方は概ね晴れ、との天気予報でしたが、朝から厚い灰色の雲が流れていきます。
ダイビングボートが出航する桟橋まで、途中、古仁屋のコンビニで昼ご飯を買う時間も含め、約30分。海を眺めながらのドライブです。
ダイビングサービスも、もう3年続けてお願いしています。何度でも通いたい海には、還暦前に気心の知れたDSを増やしておきたいのです。
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今回は、2日6ダイブしました。うち、加計呂麻島の東端にあたる安脚場で2本。奄美南部を代表するポイント「嘉鉄オアシス」で2本です。
◆初日一本目 安脚場東/2日目一本目 安脚場中央
(初日)
平均水深 7.9m 最大水深 14.6m
潜水時間 50分 透明度 30m
水温 27℃ スーツ 2mmジャケット、5mmロングジョン+フードベスト
(2日目)
平均水深 8.5m 最大水深 12.8m
潜水時間 57分 透明度 30m
水温 26℃ スーツ 同上
奄美大島南部の魅力は、サンゴの豊かさ。深い森に覆われた陸の豊穣さが海中の環境と直結していることを実感します。中でも安脚場は種類の豊富さも群落の大きさも素晴らしく、何度来ても楽しめます。
そこに群がる魚たちも様々。
7月上旬は、スカシテンジクダイの幼魚がもっとも見ごたえのある時期(もう少し経つとカスミアジなど食べられて、減ってしまうのだそうです)。
まるで根にモヤがかかっているよう。
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絨毯のような枝サンゴの群落が広がります。
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さて、初日一本目、「いやあ、ここは何度潜ってもいいですね」と満足して浮上して、念のためメールチェックすると、上司と監査部門から、それぞれ別件で面倒な連絡が入っていました。幸せな気分が一挙に落ち込みます。
メールなんか、放っときゃよかった…
それはともかく、豊穣の海・奄美の旅は、まだまだつづきます。
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ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
次回は、大島海峡を代表するポイント・嘉鉄オアシスを潜り、何かと話題の嘉徳ビーチを訪ねます。宜しければ続きもご読み下さい。
私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは主に旅の記録を綴っており、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、また海外旅行のことなども書いていきます。宜しければ↓こちらもご笑覧下さい。